法人税対策と資産分散を同時に進めたいとき、不動産投資が候補の筆頭に上がるのは自然なことです。なかでもアパート経営は「利回り8〜10%」という数字が並び、一見すると魅力的に映ります。ただ、複数の物件を調べていくなかで気づくことがあります——その「高利回り」という言葉、むしろ逆に警戒のサインである場合があります。
高い利回りは「お得」ではなく、市場が値付けしたリスクの反映である
不動産に限らず、リターンとリスクは表裏一体です。経営者であれば直感的に理解されているはずです。では、なぜアパートの世界では「高利回り=お得な物件」として語られることが多いのでしょうか。
表面利回りは「年間家賃収入÷購入価格×100」で計算されます。購入価格が安ければ分母が小さくなり、利回りは高く見えます。つまり「利回り12%のアパート」とは、しばしば「市場が買い手をつけにくいと判断して値下げされた物件」を意味します。築古・地方・管理難航——そういった条件が積み重なった結果として高い数字が生まれるケースは少なくありません。高利回りの物件が長期間売れ残っているとすれば、それ自体がひとつの答えです。
実質利回りに換算すると、8%の物件はどこまで落ちるか
現実的な収益計算には、表面利回りから諸コストを差し引く必要があります。管理委託費(家賃の5〜8%)、固定資産税・都市計画税、修繕積立、空室損(地方物件では稼働率80%を前提に置くと現実的なケースもあります)、ローン金利——これらをすべて乗せると、表面8%の物件が実質4〜5%前後に着地することは珍しくありません。
モデルケース(架空の設定)として試算してみます。築25年・地方都市・表面利回り8%・融資期間25年・金利2.2%という前提では、月次キャッシュフローが数万円程度に留まることがあります。個別条件によって数字は大きく変わりますが、重要なのは「高い表面利回りが手残りにそのまま直結しない」という構造を先に理解することです。
経営者が本当に確認すべき3つの数字とは
年収1,800万円前後の方が不動産投資に期待する効果は、①キャッシュフロー、②含み資産の形成、③減価償却を活用した所得圧縮——の3つに整理されることが多いです。このうち③については、新築・準新築のほうが減価償却期間が長く、毎期の圧縮額が読みやすいという特性があります。
一方、築古の高利回り物件は減価償却の残存年数が短く、節税効果が薄れるペースが速い傾向があります。加えて大規模修繕のタイミングが近づいているケースも多く、手元キャッシュを想定外に削られるリスクがあります。「税対策と資産分散を同時に」という目的であれば、表面利回りの高さより、耐用年数と修繕リスクの見通しを先に確認する順序が合理的ではないかと考えられます。
アパート以外の選択肢が視野に入ってくるのはなぜか
こうした試算を重ねるなかで、選択肢のひとつとして浮かび上がるのがトレーラーハウスです。PACO INVESTが扱う木造2×4構造のユニットは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース。物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、アパート一棟よりも小さいロットから始めることが想定されます。
構造上、建物を移設できるという点も見逃せません。アパートは建ててしまったら立地を変えられませんが、トレーラーハウスは「立地が合わなければ移設する」という撤退オプションが残ります。この柔軟性の差は、投資判断において意外と大きく効いてきます。Airbnb運用を組み合わせると、利回り構造はアパートとかなり異なってきます。ただし想定利回りはケースによって異なる点はご留意ください。
物件を探す前に「自分の目的の解像度」を上げておく
「アパート経営を検討している」という入口で調べ始めると、どうしても利回りの数字比較に引き込まれます。ただ、経営者として資産を動かすなら、まず何を最優先するのか——節税効果の期間設計なのか、純粋なキャッシュフローなのか、相続対策なのか——を言語化してから物件タイプを選ぶ順序が有効です。
「その高い利回りは、誰がどんな理由で作り出したのか」を問い直すことが、不動産投資を検討し始めた方の最初のステップになると考えられます。株式投資で派手な数字の裏を読む習慣を持っている方なら、同じ目線は不動産でも通用します。
よくある質問
アパートの「実質利回り」を計算するとき、何を差し引けばよいですか?
主に①管理委託費(家賃の5〜8%程度)、②固定資産税・都市計画税、③火災保険料、④修繕費(築年数に応じた積立額を想定)、⑤空室損(稼働率の想定を保守的に設定)、⑥ローン返済の金利部分——これらを年間家賃収入から引いた上で購入価格で割ると、実態に近い数字が見えてきます。あくまで概算であり、物件の個別条件によって大きく変わりますので、詳細は税理士や専門家への確認をお勧めします。
節税目的で不動産を買う場合、新築と中古どちらが有利ですか?
一概には言えませんが、減価償却を活用した所得圧縮という観点では、新築・準新築のほうが耐用年数が長く、毎年の償却額を長期にわたって計上できる傾向があります。築古物件は短期間に集中して償却できる反面、その後の節税効果が急減するケースもあります。収益ピークの年齢や出口戦略と組み合わせて設計することが重要で、必ず税理士と連携して試算することをお勧めします。
アパート以外の不動産投資と比較したいのですが、どう整理すればよいですか?
比較軸は「初期投資額」「流動性(売りやすさ・移設のしやすさ)」「減価償却の設計」「運用の手間」「出口の選択肢」あたりになります。アパートは投資規模が大きく立地変更ができない反面、土地資産として残る側面もあります。トレーラーハウスのような可動型の選択肢は、出口の柔軟性が異なります。目的の優先順位を先に整理してから各選択肢を当てはめると、比較の軸がぶれにくくなります。