相続で受け継いだ郊外の土地が、固定資産税だけを毎年消費し続けている——そんな状況を打開しようと「アパート経営」を検討する方は少なくありません。ただ、表面利回りの数字だけで動くと、実際のキャッシュフローが想定と大きくずれるケースがあります。今回は前提を揃えた試算を通じて、その実態を確認します。

「表面8%」の内側に、2〜4ポイント分の見えないコストがある

不動産情報サイトでよく見かける「利回り8%」は、ほとんどの場合「表面利回り」です。計算式はシンプルで、年間の満室想定家賃収入を物件価格で割ったものです。ところが実際の運営では、この数字から差し引かれるものが複数あります。

空室損、管理委託費、修繕積立、固定資産税・都市計画税、火災保険料、借入がある場合はローン返済——これらを織り込んだ実質利回り(ネット利回り)は、表面利回りより2〜4ポイント程度低くなることが珍しくありません。表面8%が実質4〜5%台に落ちる、というのはよく見られる構図です。よくある失敗は「表面利回りで収支計画を立て、ローン返済後に手残りがほぼゼロだった」というケースです。

郊外の遊休地にアパートを新築した場合、数字はどう動くか

以下はモデルケース(架空の設定)です。実際の数字は土地の形状・建築費・賃料相場・金融機関の条件によって大きく変わります。

前提条件

土地:郊外の約200坪(自己所有・取得費用ゼロと仮定)。木造アパート8室新築、建築費5,000万円、全額借入(金利2%・30年返済)。想定月額賃料:1室5万5,000円(満室時年間528万円)。管理委託費:家賃収入の5%。空室率:年間平均15%(稼働85%)と仮定。

年間の収支試算(モデルケース)

実収入(稼働85%)は約449万円。ここから管理委託費(約22万円)、修繕積立・保険(年間約30万円)、固定資産税・都市計画税(建物分・約15万円)を引くと、NOI(純収益)は約382万円。ローン返済額は年間約221万円(元利均等)ですから、年間キャッシュフローは約161万円——月換算で約13万円という試算になります。

建築費5,000万円に対するキャッシュオン利回りは約3.2%。空室率が20%に悪化すれば、年間キャッシュフローは約100万円を割り込む計算になります。郊外では賃貸需要の変動が大きいため、この「空室率の振れ幅」を保守的に見積もることが重要です。

固定資産税が6分の1になっても、手残りが増えるとは限らない理由

住宅用地の特例により、アパートを建てると土地の固定資産税が最大6分の1に軽減されます。ただし、建物にかかる固定資産税が新たに発生し、建物の経年劣化・修繕費・空室リスクも同時に引き受けることになります。

先のモデルケースで土地の固定資産税が仮に年60万円かかっていたとすると、軽減後は約10万円。差額50万円の節税は生じます。ただし建物の固定資産税(約15万円)や修繕積立(約30万円)を合算すると、実質的な負担軽減は限定的になるケースもあります。「固定資産税が減った」という一点だけで全体の収支を判断すると、見誤ることがあります。

不動産ではなく動産で収益化する、という考え方もある

土地に建物を建てる以外の選択肢として、動産を活用した収益化があります。PACO STAYは、木造2×4工法のトレーラーハウス(車両運搬具として登録)を客室1棟単位で購入し、旅館業許可の取得・予約・清掃・メンテナンスまで運営を委託する仕組みです。

価格は1棟1,453万円〜(プロジェクトにより異なります)。モデルケース(架空の試算)として、稼働率35%・1泊32,000円の場合、月額送金額は176,800円という想定があります(保証ではありません。審査あり、分割払いで自己資金0円からの取り組みも可能なケースがあります)。また、車両運搬具として法定耐用年数4年・定率法で減価償却できるため、課税所得の高い方には節税効果が生じるケースもあります。アパートとは構造が根本的に異なる選択肢として、比較検討の材料になることがあります。

「複数の選択肢を同じ物差しで並べる」ことが最初の一歩

アパート経営の利回りは、前提を揃えて実質利回りまで計算してはじめて意味を持ちます。郊外の遊休地を動かすとき、まず手をつけるべきは「複数の選択肢を同じ条件で試算し、比較できる状態を作ること」です。表面の数字に引っ張られず、空室リスク・修繕費・税負担を含めた実質キャッシュフローで判断する——それが判断を誤らないための基本的な進め方です。

よくある質問

アパートの表面利回りと実質利回りは、どのくらい差が出るものですか?

立地・築年数・管理状況によって異なりますが、空室損・管理費・修繕費・税金などを差し引くと、表面利回りより2〜4ポイント程度低くなることがあります。特に地方郊外では空室リスクが高まりやすく、実質利回りが想定を下回るケースもあります。個別の物件ごとに精査することが重要です。

遊休地にアパートを建てると固定資産税は必ず安くなりますか?

住宅用地の特例で土地の固定資産税は最大6分の1になりますが、建物に対する固定資産税が新たに発生します。修繕費や管理費も含めた全体収支で判断することが大切で、土地の税額だけを見て収支が改善したと判断するのは注意が必要です。

PACO STAYはアパートとどう違うのですか?

最大の違いは「動産(車両運搬具)」であることと、「客室1棟単位で購入し、運営は全委託」という点です。アパートは不動産として土地に定着するのに対し、PACO-TRAILERは木造2×4工法のトレーラーハウスであり、法定耐用年数4年・定率法での減価償却が可能な場合があります。収益の仕組みも宿泊料金ベースになるため、対象エリアの宿泊需要を事前に確認することが重要です。