iDeCoもNISAも始めた。でも、もう一段踏み込みたい——そう感じている30代の会社員は少なくないでしょう。そのときに名前が挙がりやすいのがアパート経営です。「副収入と節税の両方に効く」と聞いて興味を持つのは自然なことですが、実際に調べると「本当にそうなのか?」という疑問も出てきます。今回は、モデルケース(架空の設定)を交えながら、その疑問を一つずつ整理してみます。
「節税になる」と聞いて動いたBさんが、まず直面した数字の落差
モデルケース(架空)として、32歳・年収550万円の会社員Bさんを想定します。Bさんは知人から「アパート経営は減価償却で節税できる」と聞き、不動産会社の無料セミナーに参加しました。提案されたのは地方都市の木造アパート1棟・価格3,500万円、表面利回り8%の物件でした。
表面利回り8%は、満室時の年間家賃収入÷物件価格で計算されます。年間280万円の家賃収入を想定しても、管理費・修繕積立・固定資産税・ローン金利・空室損失を差し引くと手取りは大きく変わります。Bさんが試算を依頼したところ、空室率10%・諸費用込みで実質利回りは4〜5%台になるというケースも出てきました。表面利回りと実質利回りの差が3ポイント前後に広がることは、業界では珍しくありません。「利回り8%」という数字だけで判断を進めてしまうのが、よくある失敗の入口です。
減価償却の「終わり」を、最初に確認しましたか
アパート経営の節税効果の核心は減価償却です。木造建物の法定耐用年数は22年。3,500万円の物件のうち建物部分を2,000万円とすれば、年間約90万円を経費として計上できます。年収550万円のBさんの税率は所得税・住民税合わせておよそ30%程度と想定されるため、節税効果は年間27万円前後の計算になります(上記条件での試算)。
ただし、この効果は耐用年数が残っている期間だけです。中古物件では耐用年数がすでに短く、償却が数年で終わるケースもあります。その後は同じ家賃収入に対してフルで税がかかります。「節税できる」というのは時間軸のある話であり、出口(売却・乗り換え)まで考えておかないと、途中から想定外の税負担が生じることがあります。
融資を引けることと、返済し続けられることは別の話です
Bさんのケースでは、年収550万円で3,500万円の融資審査を通過できるかどうかも確認が必要でした。一般的に区分マンションより1棟アパートは融資額が大きく、金融機関の審査基準も厳しくなります。また、住宅ローンをまだ組んでいない場合、アパートローンを先に引くと将来の住宅購入に影響が出るケースがあります。Bさんはこの点を見落としていたため、ライフプランの整理から考え直すことになりました。
月々のローン返済が家賃収入を上回る場合、持ち出しが発生します。節税額がその差額を補う設計になっているかどうかを、月次のキャッシュフローで確認することが、計画を実行可能なものにするうえで欠かせないステップです。
「1棟アパートより小さい単位」という選択肢も、数字で比べてみる価値はあります
Bさんが調べる中で、アパート1棟ではなく「1棟単位で購入できる宿泊施設の客室」という仕組みがあることを知りました。PACO STAYは、グランピング施設の客室1棟(木造2×4工法・車両運搬具として動産扱い)をオーナーが購入し、旅館業許可の取得から予約・清掃・メンテナンスまで運営を委託する形式です。
車両運搬具は法定耐用年数4年・定率法で減価償却できます。アパートの木造22年と比べて償却期間が短いため、課税所得の高い方には税の圧縮効果が短期間に集中して現れることがあります。1棟の価格は1,453万円〜(プロジェクトにより異なる)。想定利回り7.7〜14.6%という試算があります(前提:稼働率35%・1泊32,000円・いずれも試算であり保証するものではありません)。
分割払い(最長10年120回・提携信販・審査あり)を利用すれば自己資金0円から始められるケースもありますが、月々の支払いが月額送金額を上回るため、差額は持ち出しになります。節税効果でその差が埋まるかどうかは個人の課税所得に依存するため、試算は個別に確認することが必要です。アパートと並べて検討する際の参考として、こうした仕組みも存在することをお伝えするにとどめます。
次の小さな一歩は、「選択肢を並べる」ことから
Bさんのモデルケースから整理できることがあるとすれば、アパート経営の検討は「表面利回り」と「節税」だけでなく、実質キャッシュフロー・償却期間の終わり・融資がライフプランに与える影響まで含めて考える必要があるという点です。
何かを「選ぶ」より先に、選択肢を並べて比べる作業が判断の質を上げます。アパート・区分マンション・トレーラーハウス型の施設客室など、仕組みが異なるものを並べたとき、自分の年収・税率・ライフプランに合うかどうかが見えてきます。焦らず、まず数字を揃えることから始めてみてください。
よくある質問
年収550万円でアパートローンは組めますか?
金融機関によって審査基準は異なります。年収・勤務先・自己資金・物件の収益性などを総合的に判断されます。1棟アパートは融資額が大きいため、区分マンションより審査が厳しくなるケースがあります。また、将来の住宅ローンへの影響も含めて、事前にファイナンシャルプランナーや金融機関に相談することが実態把握の近道です。
アパート経営の減価償却はいつまで使えますか?
木造建物の法定耐用年数は22年です。新築なら22年間、中古の場合は残存耐用年数(または簡便法で計算した年数)の期間だけ償却費を計上できます。償却が終わると建物部分の経費計上がなくなるため、それ以降は家賃収入に対してフルで課税されます。出口戦略(売却・乗り換えのタイミング)を事前に想定しておくことが、収支計画の見直しに役立つことがあります。
PACO STAYとアパート経営は、どちらが自分に合いますか?
どちらが合うかは、課税所得の水準・自己資金の有無・ローンの使い方・ライフプランによって異なります。編集部として特定の選択を推奨する立場にはありません。ただ、仕組みが根本的に異なる(動産か不動産か・自分で管理するか委託するか)ため、どちらか一方だけを検討するより両方の数字を並べてみることで、判断の根拠が明確になることがあります。