「老後2,000万円問題、iDeCoとNISAだけで本当に足りるのか」——そう感じ始めた会社員が次に目を向けがちなのがアパート経営です。広告に「利回り8%」という数字が並ぶ一方、実際に手元に残るお金の内訳を確認したことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。今回は、その数字を順番に分解してみます。
「表面利回り8%」の物件から、何がどれだけ引かれていくのか
アパート経営の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。表面利回りは「年間満室家賃収入 ÷ 物件価格 × 100」で計算されるシンプルな数字です。しかし実際の運営では、ここから複数のコストが差し引かれます。
主なコストは、固定資産税・都市計画税、管理委託料(家賃収入の5〜10%程度)、共用部の電気代・修繕費、火災保険料、そして空室期間中の収入ゼロです。ローンで購入していれば毎月の返済も重なります。これらを差し引いた後に残る割合が「実質利回り」であり、表面利回りとは別物と考えておく必要があります。
よくある失敗として、広告に掲載された表面利回りをそのまま「手に入る利益」と読み違えてしまうケースがあります。表面利回りと実質利回りの差が3〜4ポイント開くことも珍しくなく、この差を事前に把握しているかどうかで収支の見通しは大きく変わります。
モデルケースで数字を分解すると、何が見えてくるか
以下は架空の設定によるモデルケースです(実際の数字は物件・立地・ローン条件により大きく異なります。構造を把握するための試算としてご参照ください)。
前提条件
物件価格:2,500万円(木造、築10年、1K×4室)/満室想定家賃:月6万円×4室=月24万円(年288万円)/融資:2,500万円・金利2.0%・35年返済/空室率:10%と仮定
表面利回りと実質利回りの差
表面利回りは「288万円 ÷ 2,500万円 × 100 = 11.5%」と計算されます。一方、空室率10%を加味した実際の年間家賃収入は約259万円。ここから管理委託料(約26万円)、固定資産税(年12万円と仮定)、修繕積立・保険料(年6万円と仮定)を引くと、純収益は約215万円となります。
215万円を物件価格2,500万円で割ると、実質利回りは約8.6%です。ただしこれはローン返済前の数字。年間の元利返済額(2.0%・35年)は約83万円前後となり、手元に残るキャッシュフローは年間130万円前後、月換算で約10万円台というイメージになります。ローン金利や修繕の発生タイミング次第では、この数字はさらに変動します。
見落とされやすい「大規模修繕」の費用はどう積み立てるか
木造アパートの場合、築15〜20年前後で外壁塗装・屋根・設備の大規模修繕が発生することがあります。1棟あたり数百万円規模になるケースもあり、月次で積み立てておかないと単年度のキャッシュフローが急激に悪化する場合があります。実質利回りの試算に修繕費を含めるかどうかで、手元感覚はかなり変わります。毎月の収支が黒字に見えていても、修繕費を月割り換算すると実態はほぼトントン——というケースは一般的に起こりやすい落とし穴のひとつです。
利回り以外に、購入前に確かめておきたいこと
利回りと並んで確認しておきたいのが「出口(売却)時の流動性」です。地方の高利回り物件は表面数字が高めに出やすい一方、築年数が上がると融資が付きにくくなり、買い手が限られてくることがあります。売りたいタイミングで売れるかどうかは、利回りの数字には直接現れない変数です。
節税目的でアパート経営を検討する場合、減価償却の計上方法・ローン利息の扱い・青色申告の有無など、税制の前提が変わると手取り計算が変わります。年収550万円帯では所得税・住民税あわせた実効税率が30%前後になるケースが多いですが、経費計上による効果の大きさは個人の状況に依存するため、税理士など専門家との確認が先決です。
アパートとは仕組みが異なる選択肢も存在する
不動産を使った資産形成の選択肢は、木造アパートだけではありません。たとえば編集部が手がけるPACO STAYは、グランピング施設の客室1棟を購入し、旅館業の許可取得・予約・清掃・メンテナンスまで運営をすべて委託する仕組みです。木造2×4工法のトレーラーハウス(車両運搬具)を客室として使うため動産扱いになる点が、アパートとは構造的に異なります。
1棟1,453万円〜(プロジェクトにより異なる)で、稼働率35%・1泊32,000円を前提とした試算では想定利回り7.7〜14.6%、月額送金額176,800円という数字が示されています(いずれも試算であり、運用結果を約束するものではありません)。アパート経営と単純に比較するというよりも、仕組みの違いを把握した上で検討の参考にしていただければと思います。
次の小さな一歩として
「利回り8%」という広告数字の裏にある構造が、少し具体的に見えてきたでしょうか。アパート経営を検討する際は、表面利回りだけでなく実質利回り、ローン返済後のキャッシュフロー、修繕コスト、出口の流動性まで含めて試算することが、判断の精度を上げる一歩になります。
いきなり物件を探し始めるのではなく、まずは信頼できる税理士やファイナンシャルプランナーに自分の税率・控除の状況を確認してみることが、現実的な出発点になるケースが多いようです。
よくある質問
表面利回りと実質利回り、どちらを基準に見ればよいですか?
物件比較の参考指標としては実質利回りのほうが実態に近い数字になりますが、「実質利回り」の計算に何を含めるかは不動産会社によって異なります。管理費・固定資産税・修繕積立・空室損失をすべて含めた数字かどうかを確認した上で比較することが重要です。また、ローン返済を考慮したキャッシュフロー(手元に残るお金)は利回りとは別に試算する必要があります。
年収550万円でアパート経営をした場合、節税効果はどのくらい見込めますか?
年収550万円の場合、所得税・住民税あわせた実効税率は概ね20〜30%前後になるケースが多いですが、給与以外の控除状況や家族構成によって異なります。アパート経営で経費(減価償却費・ローン利息・修繕費など)を計上することで課税所得を圧縮できるケースがありますが、効果の大きさは個別の税務状況に依存します。具体的な試算は必ず税理士に確認されることをお勧めします。
自己資金がほとんどない状態で始める方法はありますか?
アパート経営では一般的に物件価格の1〜2割程度の頭金が必要になるケースが多く、諸費用も含めると相応の自己資金が必要になります。一方、PACO STAYでは提携の信販会社を通じた分割払い(最長10年120回・審査あり)を利用することで、自己資金0円から始められるケースがあります。ただし分割払い審査の通過が前提であり、月々の支払いが月額送金額を上回る期間が発生するため、差額の持ち出しが生じる点はご留意ください。詳細な試算については個別にお問い合わせください。