「利回り10%」という数字を見たとき、それが表面なのか実質なのか、さらに手元に残るキャッシュはいくらなのかを反射的に疑えるかどうかが、物件選びの精度を分けます。今回は、その数字の構造を順番に分解します。

「表面」と「実質」のあいだに、何が落ちているのか

表面利回りは「年間賃料収入÷物件価格×100」で計算されます。シンプルですが、コストがまったく入っていない数字です。ここから実質利回りを出すには、管理費・固定資産税・火災保険・修繕積立・空室損失などを差し引く必要があります。

これらのコストは満室賃料の20〜30%程度とされることが多く、表面10%の物件であれば実質利回りは7〜8%台に落ちるケースがよくあります。ただし、築年数・立地・管理形態によって幅があるため、あくまで概算としてご参照ください。

よくある失敗として、表面利回りだけで複数物件を比較し、コスト構造が異なる物件を同列に並べてしまうケースがあります。管理形態(自主管理か委託か)や修繕履歴が異なると、同じ「表面10%」でも実質の手残りは大きく変わります。

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実質7%でも、手元に残るキャッシュは別の話

融資を使っている場合、実質利回りからさらにローン返済が引かれます。試算で確認してみます。

モデルケース(架空の設定・試算)

前提:物件価格5,000万円・表面利回り10%(年間賃料500万円)・融資4,000万円・金利1.8%・返済期間25年・元利均等返済。管理費等を賃料の25%(125万円)、空室損失を5%(25万円)と仮定。

年間賃料収入:500万円
管理費・税・保険・修繕等:▲125万円
空室損失(5%):▲25万円
実質収入:350万円(実質利回り約7.0%)
ローン年間返済額:約198万円(月々約16.5万円)
税引前キャッシュフロー:約152万円(月々約12.7万円)

ここから所得税・住民税が課税されます。給与収入800万円の会社員が不動産所得を加算すると、課税所得によって税率33〜43%程度になるケースがあります。合算税率を40%と仮定すると、税後の手取りキャッシュは年間約91万円(月々約7.6万円)という試算になります。表面10%が、手元では月8万円を切る水準になる点は、購入前に把握しておきたい数字です。実際の数字は物件・融資条件・個人の税務状況によって大きく異なります。

「減価償却」が手元を変える、もう一つの回路

不動産の収支では、キャッシュフローとは別に減価償却費が動いています。建物部分の減価償却費を計上すると、帳簿上の不動産所得を圧縮でき、給与所得との損益通算が生じる場合があります。ただしこの効果は、耐用年数の残存期間・建物割合・築年数に大きく依存します。

木造アパートの法定耐用年数は22年です。中古物件で耐用年数が短いほど短期間に大きな償却が取れますが、償却終了後は税負担が増すため、出口戦略とセットで考えることが欠かせません。償却期間だけを見て購入を決め、その後のキャッシュフロー悪化を見落とすのは、よくある計算ミスの一つです。

出口で数字が確定する——売却時に初めて「正解」がわかる

不動産投資のトータルリターンは、保有中のキャッシュフローと売却差損益の合計です。10年後に同水準の利回りで売れるかどうかは、立地・需要・建物状態に依存します。人口減少エリアや築古物件は、賃料収入は取れても売却時に想定を下回るケースがあります。買付の段階で、10年後の想定売却価格とCAPレートをある程度シミュレーションしておくことが、後悔しにくい判断につながる場合があります。

数字の「読みやすさ」という観点で別アセットを比較する

アパート経営の数字が複雑になる一因は、管理・修繕・空室・融資・税務が絡み合うことにあります。この複雑さをどう整理するかが、別アセットを検討する際の判断軸の一つになることがあります。

参考までに、当編集部が扱うPACO STAYは、木造2×4工法のトレーラーハウス(車両運搬具)を客室1棟単位で購入し、旅館業の許可・予約・清掃・メンテナンスまで運営を当社グループに委託する形式です。1棟1,453万円〜(プロジェクトにより異なる)、想定利回り7.7〜14.6%(前提:稼働率35%・1泊32,000円の試算。保証なし)。車両運搬具として法定耐用年数4年・定率法の減価償却が適用されるため、課税所得が高い方には税の観点で参照されることがあります。ただし、これは情報提供であり投資勧誘ではありません。数字の前提と自身の状況を照らし合わせ、ご自身でご判断ください。

次の一手を選ぶ前に、今の数字を棚卸しする

規模拡大か分散かという問いに答える前に、既存物件のキャッシュフロー・減価償却残・ローン残債・想定出口を表にまとめることが、遠回りのようで判断精度を上げる近道です。次の物件の検討は、そこから始めると筋が通りやすくなります。

よくある質問

表面利回りと実質利回り、どちらを優先して見るべきですか?

どちらか一方というよりは、表面利回りは物件の比較スクリーニングに、実質利回りは購入判断の精査に使うという使い分けが一般的です。さらに、融資コストと税負担を加味した「手元キャッシュフロー」まで試算すると、より実態に近い数字が見えてきます。前提条件を変えながら複数パターン試算することを検討してみてください。

アパート経営の利回りは、何%あれば十分と言えますか?

「十分かどうか」は、融資条件・税率・出口戦略・他の収入との組み合わせによって変わるため、一概に言える数字はありません。ただし、融資利用時は実質利回りとローン金利の差(イールドギャップ)が2〜3%以上あると、キャッシュフローが出やすい傾向があります。あくまで目安の一つとしてご参照ください。

PACO STAYとアパート経営は、どこが一番違いますか?

大きな違いの一つは、アパートが「建物(不動産)」として固定資産税・登記・不動産取得税の対象になる一方、PACO STAYの客室(PACO-TRAILER)は車両運搬具として動産扱いになる点です。もう一つは、アパートは空室管理・修繕・リーシングを自分でコントロールできる反面、手間とリスクも直接負う形になる点です。PACO STAYは運営を委託する設計のため関与度は低くなりますが、稼働率は当社グループの運営力に依存します。どちらが合うかは、関与度・税務環境・保有資産全体のバランスによって異なります。