区分マンション2戸とアパート1棟を手がけてきた投資家なら、次の一手を考えるとき「利回り」という数字をかなり厳しく見ているはずです。ただ、土地活用における利回りの読み方は、建物投資とは少し勝手が違います。筆者自身、この違いを軽く見て痛い目を見た経験があるので、その話から始めさせてください。
「表面利回り15%」を信じた筆者が、2年目に気づかされたこと
40歳を前に、地方の国道沿いの土地でコンテナ倉庫の転貸事業を試みたことがあります。当時の試算では表面利回り15%超。数字だけ見れば悪くなかった。ところが2年目に入った頃、近隣に大型の収納施設が開業し、空室率が一気に跳ね上がりました。
撤退しようとして初めて気づいたのですが、コンテナを撤去する費用と土地の原状回復コストを、最初の試算に一切入れていなかった。このケースでは撤去・原状回復だけで初期投資の約15%相当が追加で飛びました(モデルケース。実際の金額は規模・契約条件によって異なります)。表面利回りの計算に出口コストが含まれていないことは当たり前の話なのに、数字に引っ張られて見逃していました。
この経験から「土地活用の利回りは、撤退コストと競合リスクを含めて初めて意味を持つ」という感覚が体に染みつきました。
アパートと同じ尺度で測ると数字がずれる、その構造的な理由
アパート経営では表面利回りと実質利回りの差(管理費・修繕費・空室損失など)がある程度パターン化されています。ところが土地活用は業態によって費用構造がまったく異なります。駐車場・太陽光・コンテナ倉庫・グランピング・トレーラーハウスでは、初期投資の内訳も運営コストも出口の選択肢もすべて違う。
数字に厳しい方ほど、アパートで培ったモデルをそのまま当てはめて「この利回りなら行ける」と判断しがちです。筆者もそうでした。業態固有の費用構造とリスクシナリオを別途チェックする手間を惜しまないことが、土地活用では特に重要になります。
撤退コストが読みやすい業態かどうか、どこで見分けるか
失敗から学んで注目するようになった基準のひとつが「撤去のしやすさ」です。建物を建ててしまうと、仮に業態が合わなくても簡単には動かせません。一方、構造によっては移設・転用が比較的柔軟な業態もあります。
たとえば木造2×4構造のトレーラーハウスを活用した土地活用では、建物としての固定資産税評価が生じないケースがある一方、移設や配置変更に一定のコストと制約が伴う点も事前に確認が必要です。初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって異なり、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(あくまでモデルケースで、個別の仕様や立地によって変動します)、出口コストの見通しが立てやすいかどうかを含めて評価することをおすすめします。
「なぜそこで稼げるのか」を自分の言葉で説明できるか
土地活用で利回りを高く見せやすいのは地方立地ですが、「高利回り=安全」ではありません。競合が少ないから利回りが高いのか、需要が薄いから利回りを高く設定しないと事業が成立しないのか、この違いは現地の需要構造を調べないと判断できません。
立地を評価する際に確認したいのは、半径5km圏内の宿泊施設の稼働状況、近隣の観光・商業施設への距離、そして季節変動の振れ幅です。Airbnb等の稼働データを参照できる地域であれば、想定稼働率の根拠を数字で確認しておくことをすすめます。PACO Stayの運用実績でAirbnb評価4.8台が出ているケースがあるとはいえ、それが同じ土地で再現できるかは立地次第です。
次の一手を選ぶ前に、自分に問うべきこと
アパートと区分マンションを手がけてきた投資家が土地活用に踏み出すとき、最初に確認したいのは「この業態の費用構造を、他のアセットと同じ精度で説明できるか」という問いだと思っています。利回りの数字は出口コスト・競合変化・季節変動をすべて反映して初めて比較可能になります。
規模拡大か分散かという選択は、その前提を揃えてからでないと正しく判断できません。まず自分の評価基準を業態ごとにアップデートする作業から始めることが、結果的に速い近道になるケースが多いです。
よくある質問
土地活用の利回り計算で、アパートと一番違う点はどこですか?
アパートは費用構造がある程度パターン化されていますが、土地活用は業態によって初期投資の内訳・運営コスト・撤退コストが大きく異なります。特に出口コストが表面利回りの計算に含まれないケースが多いため、実質利回りを自分で組み直す作業が欠かせません。業態ごとに費用構造を個別に確認することをおすすめします。
トレーラーハウスを使った土地活用は、既存の不動産投資との分散効果がありますか?
アセットクラスとしての性格はアパートや区分マンションとは異なります。固定資産税評価の扱い、融資条件、稼働率の変動パターンなどが異なるため、ポートフォリオ上の分散効果が期待されるケースはあります。ただし「分散=リスク低減」と単純に捉えず、業態固有のリスクを別途評価した上で判断することが重要です。
地方立地の土地活用で、需要を事前に確認する現実的な方法はありますか?
Airbnb・じゃらん・楽天トラベルなどのプラットフォームで近隣物件の稼働状況やレビュー数を確認する方法が現実的です。口コミの更新頻度から稼働ペースをある程度推測できます。観光協会や地方自治体が公表している宿泊者数データも参考になります。いずれも確定的な需要予測にはならないため、複数のデータソースを組み合わせて判断することをおすすめします。