「株も投信もある。でも、もう少し税金対策になるものが欲しい」——そう話す45歳前後の経営者の方が、最近よく民泊投資の試算を見に来られます。利回りという言葉は知っていても、「自分の状況に当てはめると実際いくらになるのか」が見えていない。今回はその部分を、前提を明示しながら読み解いてみます。

余談ですが、筆者自身も最初に試算を見たとき「表面利回り」と「実質利回り」を混同して、思ったより手残りが少ないと慌てた経験があります。その失敗を踏まえて、今回は順を追って整理します。

「利回り」は何を割って何を割るかで、別物になる

民泊投資の文脈で語られる利回りには、大きく2種類あります。表面利回り(年間収入÷初期投資額)と、実質利回り(年間収入から運営コストを差し引いた手残り÷初期投資額)です。この2つは、場合によっては5〜10ポイント以上乖離します。

経営者として損益を読み慣れている方なら、「売上高より営業利益」を見る習慣がついているはずです。民泊も同じで、実質利回りが判断軸になります。表面利回りだけで比べるのは、売上だけで会社を評価するようなものです。

前提を揃えて試算すると、数字はこう動く

以下はあくまでモデルケースです。個人の状況・立地・運営体制によって結果は大きく異なります。前提条件を確認しながら読んでください。

前提条件:木造2×4トレーラーハウス1棟、地方観光エリア隣接地の場合

・初期投資額:1,200万円(設備・付帯工事込み。物件仕様・立地・付帯工事により概ね990万〜1,500万円のレンジで変動します)
・客室単価:15,000円/泊
・稼働率:60%(年間219泊)
・年間売上:約328万円

コストの内訳

・清掃・リネン:約60万円(1回2,700円×219泊)
・プラットフォーム手数料(Airbnb等):約49万円(売上の15%)
・光熱費・消耗品:約24万円
・管理費(運営委託の場合):約33万円(売上の10%)
・固定資産税・保険等:約12万円
・合計コスト:約178万円

結果として、年間手残りは約150万円。初期投資1,200万円に対する実質利回りは約12.5%(モデルケース)となります。ただし、これは稼働率60%が維持できた場合の数字です。稼働率が40%に落ちると手残りは半分以下になるケースが想定されるため、稼働率の読みが収益の核心です。

節税を「目的」にする人より「副産物」にする人が長続きする理由

年収1,800万円の方が新たに1,200万円の資産を持つ場合、減価償却の計上が所得圧縮に寄与するケースがあります。木造建築物の法定耐用年数や構造の扱いは税理士との確認が必須ですが、減価償却を活用した所得圧縮効果は、経営者が不動産系投資を検討する理由のひとつになっています。

ただし「節税のために投資する」という発想には注意が必要です。節税効果はキャッシュアウトを伴うため、手残りキャッシュフローが成立しない投資では本末転倒になります。節税は副産物として位置づけ、実質利回りが成立しているかを先に確認する——この順番が経営者の感覚と合っています。

「撤退できる構造か」という問いが、40代の投資判断で意外に効く

トレーラーハウスを使った民泊投資の特徴のひとつに、建築基準法上の扱いと移設可能性があります(設置形態・自治体によって異なり、専門家への確認が必要です)。「立地が合わなければ動かせる」という選択肢の存在は、不動産未経験の経営者にとって心理的な敷居を下げることがあります。アパートや戸建てでは基本的に持てない選択肢です。

PACOが手がける木造2×4構造のトレーラーハウスには、Airbnb上での評価4.8という運用実績を持つ物件もあります(全物件が同水準を保証するものではありません)。構造の品質と稼働率の維持がセットで成立してはじめて、試算の前提が現実に近づきます。

自分の数字に置き換えることが、最初の実務的な一歩

今回の試算はモデルケースです。初期投資額・客室単価・稼働率のどれかひとつが変わるだけで、実質利回りは数ポイント変動します。スプレッドシートで粗い試算を作るだけでも、「自分が何を知らないか」が具体的に見えてきます。数字が揃ってから専門家に相談する方が、会話の質が上がります。前提条件を整理してから動く方が、経営判断のリズムとも合っているはずです。

よくある質問

稼働率60%というのは現実的な数字ですか?

立地・季節・運営体制によって大きく異なります。観光需要のある地方エリアでは繁忙期に80%超を記録するケースがある一方、閑散期には30〜40%台に落ちることもあります。年間平均60%は試算上の中間値として使われることが多いですが、検討するエリアの需要データを自分で確認することが先決です。あくまでモデルケースとしてご理解ください。

法人保有と個人保有、どちらが有利ですか?

一概にどちらとは言えません。法人保有は法人税率の適用や経費計上の柔軟性がある一方、個人保有は減価償却による所得圧縮を個人の高い税率に当てやすい側面があります。年収・法人の利益水準・既存の資産構成によって最適解が変わるため、税理士との事前シミュレーションが欠かせません。

運営を外部委託した場合、コストはどれくらいになりますか?

管理委託費は一般的に売上の10〜20%程度が目安として語られますが、サービス内容(清掃込み・予約対応のみ等)によって幅があります。今回の試算では管理費を売上の10%で計上していますが、清掃費を別途計上しているため、実質的な委託コストは売上の約28%相当になっています。完全ハンズオフを求める場合は、委託契約前にコスト構造を詳細に確認することをおすすめします。