区分マンションやアパートを持ちながら次の一手を探している方ほど、民泊投資の利回り数字を「額面通りには受け取れない」と感じているのではないでしょうか。広告に並ぶ数字の根拠が見えなければ、判断のしようがない。今回は前提条件をできる限り明示したうえで、民泊投資の収支を内側から分解します。
「利回り」の前に、何を比較軸にするか
既に区分やアパートを持っている方が新しいアセットを評価するとき、基準は自然と「今持っているものより手取りが増えるか」になります。ただ、民泊投資をアパートと同じ土俵で比べるには注意が必要です。収益の構造がそもそも違うからです。
アパートは「月額賃料×入居率」というシンプルな式で動きます。一方、民泊は「宿泊単価×稼働日数」に清掃費・プラットフォーム手数料・運営委託費が上乗せされる。表面利回りが高く見えても、コストを引いた実質利回りで比較しないと意味がありません。
前提をそろえた試算で、内訳まで見てみる
以下はあくまでモデルケースです。立地・運営形態・季節変動によって大きく異なります。数字を鵜呑みにするのではなく、「構造を読む」ための素材として使ってください。
前提条件
・初期投資:1,200万円(物件購入+付帯工事込み。仕様・サイズ・立地により上下します)
・宿泊単価:15,000円/泊
・稼働率:70%(365日のうち約256日稼働)
・運営形態:Airbnb等プラットフォーム活用、委託運営
年間収支の内訳
年間宿泊売上:15,000円 × 256日 = 約384万円
ここから主なコストを引いていきます。プラットフォーム手数料(売上の約3%)で約11.5万円、清掃費(1回4,000円×256回)で約102万円、運営委託費(売上の15%想定)で約57.6万円、消耗品・光熱費・保険等で約20万円。合計コストは概ね191万円前後です。
差し引いた営業利益は約193万円。初期投資1,200万円に対する実質利回りは約16.1%(モデルケース)です。ただしこれは税引き前・ローン返済前の数字です。融資を使う場合は返済額を差し引いた手取りキャッシュフローで評価してください。
稼働率が10%ずれると、利回りはどう動くか
稼働率が60%に落ちると(約219日稼働)、売上は約328万円に下がります。コストも多少連動して下がりますが、委託費・保険等の固定的な支出は残るため、実質利回りは11〜12%台に落ちるシナリオが想定されます。稼働率は立地と運営クオリティに直結するため、数字を見るときは「最低ラインのシナリオ」も必ず試算しておくことをお勧めします。
減価償却を抜きにすると、比較の土台がずれる
民泊投資でよく見落とされるのが、木造建物の短期減価償却による所得圧縮効果です。木造の法定耐用年数は22年ですが、建物割合が高い構造であれば、減価償却費が毎年の課税所得を相当程度押し下げる計算になります。年収800万円のサラリーマン投資家であれば、この効果は無視できないケースがあります。
ただし、効果の大きさは個人の税務状況や建物構造によって異なります。「節税になる」と断定できる話ではなく、税理士との事前確認が必須です。余談ですが、筆者自身も最初の試算で減価償却の計上タイミングを誤り、1年目の確定申告で慌てた経験があります。「どの年度から計上できるか」は、購入前に専門家へ確認しておくべき論点です。
出口を考えると、アパートとの「差」が浮かび上がる
数字に厳しい方ほど気にするのが出口です。民泊投資、特にトレーラーハウスのような移動・撤去が可能な物件は、建物を別の場所に移設するか売却するかという選択肢が生まれます。土地に固定された建物と比べると、出口の柔軟性が異なる点は評価の一因になりえます。
一方で、民泊物件としての売却市場はアパートほど流動性が高くない、という現実もあります。「この物件を誰に・いくらで売れるか」を入口で想定しておくことが、安全な投資判断につながります。利回りの高さより撤退シナリオの明確さの方が、長期的には重要です。
次の一歩として、試算に「最悪ケース」を入れてみる
今回示したのはあくまでモデルケースです。同じ構造の試算を、自分の想定立地・想定単価・想定稼働率で作り直してみることが、次の小さな一歩になります。特に稼働率40〜50%のシナリオも一度試算してみてください。それでもキャッシュフローが耐えられるなら、投資の土台として検討する価値があります。
なお、PACOが扱う木造2×4構造のトレーラーハウス型物件は、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。数字の詳細や個別シミュレーションについては、お問い合わせページからご相談ください。
よくある質問
稼働率70%は現実的な数字ですか?
立地・物件クオリティ・運営体制によって大きく変わります。都市近郊や観光地近くでAirbnb評価が高い物件(PACOの運用実績では評価4.8台のケースもあります)であれば到達するシナリオが想定される一方、人口が少ない地域や競合が多い立地では60%を下回ることもあります。70%を「達成できて当然の数字」とは考えず、60%・50%のシナリオも並べて評価することをお勧めします。
融資を使う場合、手取りキャッシュフローはどう変わりますか?
融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートも可能なケースがありますが、その分ローン返済が毎月発生します。仮に1,200万円の投資で金利2.5%・15年返済の融資を組んだ場合、年間返済額は概ね95〜100万円程度になります(条件により変動)。先ほどの試算の営業利益193万円からこれを引くと、手取りキャッシュフローは90万円台になる計算です(モデルケース)。融資を使う場合は必ずこの計算を先に確認してください。
アパートと民泊投資の利回りを単純に比較することはできますか?
表面利回りの数字だけを並べることは可能ですが、コスト構造・流動性・管理負担・税務上の扱いがそれぞれ異なるため、単純比較は判断を歪める可能性があります。アパートは安定した賃料収入が強みで、民泊は単価と稼働率次第で利回りの振れ幅が大きい。どちらが優れているかではなく、「自分のポートフォリオに今何が足りないか」という文脈で評価するのが、複数物件を持つ方にとっての現実的なアプローチです。