「次の物件を買い増すか、別のアセットを試すか、正直迷ってます」。既に不動産投資を数戸運用されている方から、こういう相談を受けることが時々あります。今回は、そのやり取りの中で宿泊施設投資の収益構造が話題になったケースを、ご本人の許可を得てモデルケースとして紹介します。

「表面利回り6〜7%台、融資引いて手残りを計算すると……」という壁

相談者のCさん(38歳・年収800万円台のサラリーマン、以下モデルケース)は、区分マンション2戸とアパート1棟を保有しており、数字の読み方はかなり鍛えられている方です。

「次の物件も探してはいるんですが、表面利回り6〜7%台で融資を引けたとして、手残りを計算すると思ったほど残らない。かといってリスクを取りすぎたくない」というのが最初の言葉でした。悩んでいるというより、すでに答えを半分出していて、それを検証したいという雰囲気でした。

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「月額固定」と「単価×稼働率」では、収益の振れ方がそもそも違う

話が進むうちに、Cさんが気にしていたのは利回りの水準そのものより、「収益の構造が違う」という点でした。住居系の賃貸は月額固定収入が基本。それに対して宿泊施設投資は、繁閑の差はあるものの、一泊単価×稼働率で収入が決まります。

たとえば、ある地方観光地でトレーラーハウスを1台運用した場合のモデルケースで試算すると——1泊2万5千円・月間稼働率55%・管理委託費15%という前提で——月間売上は約41万円、管理費を差し引いた粗利は34万円強という計算になります。あくまで仮定の数値であり、立地・シーズン・運営体制によって大きく異なります。

「これ、レジデンシャルと比べて何が違うんですか」とCさんに聞かれたので、正直に答えました。「繁閑リスクがある分、上にも下にも振れます。ただ、レバレッジのかけ方や減価償却の効き方が異なるので、ポートフォリオの中でどう位置づけるかによって評価が変わります」と。

耐用年数が短いと、年間の減価償却費はどう変わるか

Cさんが次に食いついたのが、減価償却の話でした。トレーラーハウスは木造であっても、一般の木造建物とは異なる耐用年数で処理されるケースがあります(詳細は税理士への確認が必要です)。耐用年数が短ければ、同じ初期投資額でも年間に計上できる減価償却費が大きくなり、所得圧縮効果が想定されます。

「年収800万円台だと所得税・住民税の実効税率は相応に高いはずなので、そこへの効き方は気になります」とCさん。帳簿上の損失をうまく活用できると、税引き後の手残りが変わってくることがあります。ただしこれは個人の税務状況次第であり、必ず税理士に確認すべき領域です。

余談ですが、私自身も初めてトレーラーハウス投資を検討したとき、この部分を自分で計算して税理士に持っていったら「計算の方向は合ってるけど細部は修正が必要」と言われました。自信があった部分ほど抜け漏れがある、という経験は今も役立っています。

「売れるんですか、これ」——入口より出口を先に見る人の問い

数字に厳しい方ほど、入口より出口を先に見ます。Cさんも「売れるんですか、これ」と最初に聞いてきました。トレーラーハウスは移設が可能という性格上、設置場所の契約が終了しても物体自体を動かすという選択肢があります。もちろん移設コストやリロケーション先の確保が必要であり、簡単ではありません。ただ、「土地ごと塩漬けになるリスク」とは少し性質が異なる点は伝えました。

初期投資の水準については、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いというのが私の認識です(モデルケース/物件の仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって変動します)。融資条件によって実質的な自己資金の拠出額も変わるため、「この数字が動く理由を先に把握してから動いてください」とCさんには伝えました。

PACOの場合、木造2×4構造の製品でAirbnb評価4.8台の運用実績(一部ケース)があることは参考情報としてお伝えしましたが、それも「あなたの物件がこうなる」という保証ではありません。

Cさんが出した結論は「まず1年、自分で数字を追う」だった

この相談の結末を正直に書くと、Cさんはまだ動いていません。「まず1年、自分で宿泊施設の数字を追ってみます。競合の稼働率を見て、自分なりに納得してから判断します」という答えでした。私はそれで十分だと思いました。

宿泊施設投資では、モデルケースとして想定利回り10〜20%という数字が示されることがあります。ただしこれは稼働率・単価・立地・運営コストがすべて噛み合ったときに出てくる数字であり、前提条件の積み上げです。その構造を自分で検証してから投資判断をするという姿勢は、むしろ正しいと感じています。

次の一歩は「追いかける数字を決める」こと

既存の不動産ポートフォリオを持っていて次の一手を考えている方にとって、宿泊施設投資は収益構造が異なるだけに、比較検討の視点も変える必要があります。利回りの数字よりも、その数字が何の前提で成立しているかを確認することが、判断の出発点になると思います。

まず自分が気になる地域の民泊稼働データをAirbnbやADRのレポートで確認してみる、あるいは実際に運用している人に話を聞いてみる——そういった小さなリサーチから始めるのが、遠回りなようで一番着実です。

よくある質問

宿泊施設投資の利回りは、どの数字を見ればいいですか?

表面利回りだけでなく、管理委託費・清掃費・プラットフォーム手数料・繁閑の稼働変動を織り込んだ実質利回りで見ることをお勧めします。モデルケースとして想定利回り10〜20%という数字が示されることがありますが、前提条件によって結果は大きく変わります。資料に記載された試算の「前提」を必ず確認してください。

レジデンシャル系の不動産とトレーラーハウス民泊を組み合わせると、リスク分散になりますか?

収益の動き方が異なるアセットを組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスク分散につながるケースがあります。住居系が景気変動に比較的強い半面、観光需要に連動する宿泊施設は繁閑の波が大きい。その両方を持つことで、どちらかが落ちたときの補完関係が生まれることがあります。ただしこれは一般論であり、個別の状況によります。

融資はどう考えればいいですか?

トレーラーハウスは不動産登記ができないケースが多く、融資の組み方は通常の不動産投資とは異なります。金融機関や商品によって対応が変わるため、事前に条件を確認することが不可欠です。融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートが想定されるケースもありますが、金利・返済期間・担保の設定内容を含めて慎重に確認することをお勧めします。