区分マンション2戸、アパート1棟。着実に積み上げてきた実績があるからこそ、「次も同じ路線で」と考えるのは自然な流れです。ただ、私自身が相談を受けてきた経験の中で、「規模を拡大したのに手元のキャッシュが苦しくなった」という40代の方の事例(モデルケース)を複数見てきました。共通していたのは、「分散しているつもりが、実はリスクが一方向に積み上がっていた」という点です。今回はその視点から、次の一手を選ぶ前に整理しておきたいことを書きます。

同じ船を2隻持っても、嵐には2倍さらされる

中古アパートには確かに筋のいい面があります。新築より取得コストが低い分、表面利回りが高く出やすく、既存入居者がいれば即収益化できる。融資もある程度の実績があれば通りやすくなる局面があります。

ただ、すでにアパートを1棟保有していれば、金利上昇・賃貸需要の変化・修繕費の集中というリスクはすでに抱えています。もう1棟追加するのは、そのリスクをもう一層積むことでもある。「規模が拡大すること」と「ポートフォリオが強くなること」は同義ではありません。私が最初にアパートを2棟目に検討したとき、「利回りが高いから」という理由だけで動きかけて、既存物件との修繕時期が重なるリスクを見落としていたことに後から気づきました。その経験から、まず相関リスクを確認する習慣がつきました。

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「分散」と呼べるかどうかは、何の軸で比べるかで変わる

他の選択肢と比較するとき、どの軸で見るかによって評価がまるで変わります。

株式・ETF:換金しやすいが、自分のオペレーションが収益に直結しない

インデックス投資やETFは少額から分散でき、換金もしやすい。ただし、空室対策や管理改善で数字を動かすというスキルが活かせません。賃貸経営で培ってきた「手を動かして収益を改善する」感覚に慣れた方には、物足りなく感じるケースがあります。

REIT:手軽だが、減価償却による所得圧縮は使えない

REITは不動産への間接投資として手軽ですが、減価償却を活用した所得圧縮効果は見込めません。年収800万円のサラリーマン投資家であれば、直接保有の不動産で減価償却費を計上し、給与所得と損益通算することで税引き後のキャッシュフローが変わるケースがあります(個人の状況によって異なるため、税理士への確認が必要です)。REITにはこの仕組みが使えない点は、実務上の差として無視しにくいところです。

定期預金・現金保有:安全だが、インフレ局面での実質価値の目減りをどう評価するか

緊急の修繕や空室への備えとして一定のキャッシュリザーブは必要です。ただし、2024年以降の物価上昇局面では、現金を積み上げておくこと自体が実質的なリスクになりうる側面もあります。全額を現金で持ち続ける合理性は、以前より説明しにくくなっています。

別アセット(例:トレーラーハウス投資):取得・撤退コストの構造がアパートと根本的に異なる

アパートとは構造的に異なる選択肢として、近年問い合わせが増えているのがトレーラーハウスを活用した投資です。PACOが手がけるような木造2×4構造のトレーラーハウスは、Airbnb等の宿泊プラットフォームとの相性が良く、観光地やアウトドア需要のある立地での運用事例も出てきています。取得コストは1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。アパートとの最大の違いは、撤去・移設が可能という出口の柔軟性です。ただし宿泊需要に左右される事業リスクがあり、立地選定の精度が収益に直結するため、向き不向きがある選択肢です。

中古アパートが「正解」になるのは、どんな条件が揃っているときか

公平に言えば、中古アパート投資には今でも合理性のある場面があります。融資評価の高い物件を取得できる局面にある方、管理の仕組みが整っている方、地元市場の需給を読める方には、引き続き有力な選択肢です。指値交渉ができ、修繕コストの見通しが立てられるなら、実績ある運用者がさらに積み上げることは理にかなっています。

一方で、資産の大部分がすでに「賃貸住宅×国内×融資レバレッジ」に集中しているなら、同じアセットをもう1棟足しても分散効果は限定的です。「利回りが高い」だけでなく、「今の自分のポートフォリオとの相関がどうか」という視点が、次のフェーズでは問われます。

今すぐ動かなくていい。ただ、この4軸で現状を図示してみてほしい

アセットクラス・地域・需要ドライバー(居住用か宿泊用か)・出口の取りやすさ——この4軸で自分の資産を整理すると、どのリスクに集中しているかが見えやすくなります。モデルケースとして、アパート2棟・区分2戸を持つ方が同じ整理をしたところ、「賃貸住宅×首都圏近郊×長期居住需要」への集中度が想定より高かったことに気づき、次の検討軸が変わった、という話を聞いたことがあります。中古アパートがその整理の結果として選ばれるなら、それは筋の通った判断です。ただ、「慣れているから」という理由だけで選ぶのと、前提を確認した上で選ぶのとでは、数年後の判断の質が変わります。

よくある質問

中古アパートとトレーラーハウス投資では、融資のつきやすさはどう違いますか?

中古アパートは土地・建物を担保に取れるため、金融機関の審査枠組みが整っているケースが多いです。一方、トレーラーハウスは動産扱いになることが多く、担保評価の考え方が異なるため、融資条件は金融機関や案件によって大きく変わります。「融資が使えないから検討外」と早々に判断する前に、トレーラーハウス案件の実績がある金融機関や担当者に早めに打診することが現実的な確認方法です。

既にアパートを1棟持っている場合、追加融資は通りにくくなりますか?

保有物件数が増えると、既存ローンの返済負担や空室リスクの総量を厳しく見る金融機関が増える傾向があります。ただし、既存物件のキャッシュフローが安定していること、自己資本比率が一定水準にあることを示せれば、追加融資が通るケースもあります。現状の財務状況を整理した上で、複数の金融機関に打診することが現実的な第一歩です。「1行に断られた=無理」ではなく、機関によって評価基準が異なる点は頭に置いておくと良いと思います。

中古アパートの「出口」として、売却以外にどんな選択肢がありますか?

売却以外では、建物を解体して土地として売る、更地にして駐車場や宿泊施設等に転換する、法人へ売却して相続対策に活用するといった選択肢が考えられます。どの出口が現実的かは立地・築年数・市場環境によって異なります。「10年後にどう手放すか」を複数シナリオで想定してから取得判断をするのと、後から考えるのとでは、物件選定の基準自体が変わってきます。投資前の段階から出口を複数描いておくことをおすすめします。