iDeCoもNISAも動かした。でも、「もう一段」が見えない——そんな相談を30代の方からよく受けます。アパート経営という言葉は知っているけれど、何から調べればいいのか分からない。今回はそういった素朴な疑問に、できるだけ正直に答えていきます。

「結局いくらあれば始められるの?」——数字を出してくれる人が少なすぎる問題

最初に聞かれるのは、やはり初期費用の話です。新築木造アパートを1棟建てる場合、土地を持っていない状態から始めると、土地代・建築費・諸経費を合わせて数千万円規模になることがほとんどです。首都圏の利便性の高いエリアなら1億円を超えることも珍しくありません。

「自己資金がなくても始められる」という話を耳にしたことがあるかもしれませんが、正確には「融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートも可能なケースがある」という話です。金融機関の審査は年収・勤続年数・保有資産などを総合的に見ます。年収550万円・会社員・住宅ローンなし、という属性は評価されやすい傾向がありますが、フルローンが通るかどうかは個別の審査次第で、一概には言えません。

「節税になる」の裏側には、必ず「いつまで?」という問いがある

アパート経営と節税がセットで語られるのは、主に減価償却の仕組みがあるからです。建物部分は耐用年数に応じて毎年費用計上できるため、帳簿上の赤字が出やすくなります。この帳簿上の赤字を給与所得と損益通算することで、課税所得を圧縮する効果が想定されます。

ただし、実際にキャッシュが動いていないのに所得が減るという構造には注意が必要です。減価償却が終わった後の税負担や、売却時の税率変化なども含めて長期で見る必要があります。「節税になる」という言葉の裏側には必ず「いつまで」「どの程度」という条件がついてきます。以前、税理士との事前確認を省いたまま話を進めてしまい、売却時の課税で想定外の出費が生じた相談者の事例を目の当たりにしてから、私はこのステップを絶対に省略しないよう伝えています。

「表面利回り10%超」に興奮した翌日、実質利回りを計算して黙り込んだ話

空室リスクは立地と物件のクオリティによって、かなり差が出ます。最寄駅から徒歩10分以内・単身者需要のある大学や工場が近い、といった条件が揃っているエリアでは、空室率が比較的安定しているケースも見られます。一方、人口減少が続く地方の幹線道路沿いに建てたアパートで、入居率60%台が続いているという話も実際に聞きます。

私が不動産会社にいたころ、「表面利回り10%超」という物件を紹介されて思わず前のめりになったことがあります。ところが実際の入居率を確認すると60〜70%台で、実質利回りは6%台に落ちていた——そういうケースが一度や二度ではありませんでした。利回りの数字は「満室前提」で計算されていることが多いので、その前提を必ず確認するようにしてください。

アパートを建てるほどの資金はない、でも現物資産は持ちたい——という人が増えている

この質問、最近かなり増えています。そういう方が選択肢として注目しているのが、トレーラーハウスを使った投資です。私自身も現在2棟を運用しており、運用フェーズではAirbnbなどの宿泊プラットフォームを活用しています。

PACO INVESTが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスの場合、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース)、物件の仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。アパートとの大きな違いは、建築確認不要・固定資産になりにくいケースがある点と、立地を変えることができる点です。ただしホテル運営特有の稼働管理や季節変動への対応は必要なので、「アパートより楽」とは言えません。あくまで一つの選択肢として、頭の片隅に置いておいてもらえれば十分です。

最初の一歩は「自分の数字を把握すること」だけでいい

アパート経営は、「関心を持つ」「情報収集する」「税理士と試算する」「融資可能性を確認する」というステップをきちんと踏んだ人ほど、後悔が少ない印象があります。最初の一歩は、自分の年収・資産・税率の現状を数字で把握することです。そこから始めると、検討すべき選択肢が自然に絞れてきます。

焦って動く必要はありません。ただ、何もしないまま3年経つと「あのとき調べておけばよかった」という後悔のほうが多い気もしています。今月中にやることは、自分の数字を把握することだけ。それだけで十分なスタートになります。

よくある質問

年収550万円の会社員でも、アパートローンを組めますか?

年収550万円・会社員という属性は金融機関からの評価が比較的安定しているとされますが、借入可能額や金利条件は勤続年数・自己資金の有無・既存ローンの状況などによって大きく異なります。まずはメガバンクではなく、地方銀行や信用金庫に相談してみると、条件の全体像が見えやすくなることがあります。

アパート経営で得た収入は、確定申告が必要ですか?

不動産所得が年間20万円を超える場合、給与所得者でも確定申告が必要です。損益通算による所得圧縮効果を得るためにも、申告は欠かせません。税理士費用を「コスト」と見るか「投資」と見るかで最終的な手取りが変わってくるケースもあるため、早い段階から専門家と関係を作っておくことをお勧めします。

iDeCoやNISAと、アパート経営は並行して続けられますか?

制度上は並行して運用できます。ただし、アパート経営を始めると月々のキャッシュフロー管理が複雑になるため、iDeCoへの拠出額やNISAの積立設定が生活資金を圧迫しないかどうかを事前に確認しておくことが重要です。流動性の低い現物不動産と、換金性の高い金融資産をバランスよく持つ発想は、長期的なリスク管理として有効なケースも想定されます。