アパート経営の数字を武器に着実に物件を増やしてきた方ほど、ある段階で「次の一手」に詰まることがあります。先日、まさにその壁にぶつかっているBさん(38歳・サラリーマン、モデルケース)から相談を受けました。正直に言うと、話を聞きながら「自分も同じ問いを後回しにしていたな」と気づかされた場面がありました。同じように立ち止まっている方の参考になればと思い、書き留めておきます。

「計算が合うなら買う」という判断軸が、ある日ぐらついた

Bさんは年収800万円台のサラリーマンで、区分マンション2戸と表面利回り約9%の木造アパート1棟を保有しています。返済は安定しており、属性的には次の融資を引ける状況でした。相談の入り口は「3棟目もアパートでいいですよね?」という確認でしたが、話すうちにBさん自身がどこかで答えに自信を持てていないことが伝わってきました。

Bさんが最初に出してきたのは、既存アパートのキャッシュフロー計算書でした。表面利回り9%に対し、空室損・管理費・修繕積立・固定資産税を差し引くと実質利回りは6%台。「わかって買いました」とBさんは言いましたが、残債と物件価値のスプレッドを並べた瞬間、表情が少し変わりました。数字に強い人ほど、「計算が合えば動く」という習慣がついています。ただその習慣が、「どんなポートフォリオを目指すか」という問いを後回しにさせていたのかもしれません。

「今の利回り」ではなく「10年後の出口」から逆算すると何が見えるか

木造アパートの法定耐用年数は22年です。築15年の物件を購入した場合、残存耐用年数は7年。融資期間が圧縮され、月々の返済額が重くなることでキャッシュフローが薄くなるのは計算上避けにくい構造です。Bさんが検討していたのも「表面利回り10%超・築15年」という物件で、一見すると数字は整っています。ただ「7年後の売却時にどんな買い手がいるか」「入居率90%以上を維持できる立地か」を丁寧に詰めると、答えはグレーなままでした。

モデルケースとして試算すると、前提を「満室賃料300万円・諸費用率28%・残債2,000万円・売却益はほぼゼロ」と置いた場合、10年間の手残りは累計600〜700万円程度になるケースも想定されます。悪い数字ではありませんが、「同じ資本で別の選択肢を取ったらどうか」という比較の軸が出てきたとき、Bさんは「もう少し考えたい」と言いました。

同じ資本量で、アセットを分散するという発想はどこから来たか

Bさんが関心を持ち始めていたのが、木造2×4構造のトレーラーハウスを使った投資でした。初期費用は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変動するため一概には言えませんが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いようです(モデルケース。個別条件により上下します)。

Bさんが特に引っかかったのは「固定資産税の対象になりにくい」という点と、「移設・撤退という選択肢が残ること」でした。既存のアパートは一度建てたら基本的に動かせません。土地ごと売るか、取り壊すかが主な出口です。トレーラーハウスは移設という第三の選択肢が加わる点が構造的に異なります。Airbnb等での短期運用では想定利回り10〜20%(モデルケース)と試算されるケースもありますが、立地や稼働管理の体制によって結果は大きく変わる点は、念押しさせてもらいました。

「分散」は逃げではなく、同じ商品を積み重ねるリスクへの自覚だった

Bさんは相談の終わりに、「3棟目のアパートを急いで買う理由がなくなった」と話してくれました。今のアパートを手放す気はないが、同じ形を増やし続けることへのモヤモヤが言語化できた、と。規模の拡大とアセット分散は対立しません。ただ「同じ商品を積み重ねるリスク」を意識せずに買い続けることへの自覚が薄かった——それが今回の相談で一番クリアになったことでした。

次の一手を急がないことが、最良の判断になることもある

今回Bさんと話して気づいたのは、検討の順番の問題でした。「計算が合うか」より先に「どんなポートフォリオを目指すか」を置くだけで、同じ物件の見え方がかなり変わります。アパート経営の利回りを正しく読む力は、次のアセット選択にも確実に活きます。比較の軸だけ丁寧に持っておくことが、焦らずに次の一歩を踏み出すための土台になるはずです。

よくある質問

アパートの表面利回りと実質利回り、どのくらい差が出るのが一般的ですか?

物件や立地によって異なりますが、空室損・管理費・修繕費・固定資産税などを差し引くと、表面利回りから2〜3ポイント程度下がるケースが多く見られます。「表面利回り9%なら実質6〜7%で最初の計算をする」という目安を持っておくと、想定外のギャップが生まれにくくなります。あくまでモデルケースの目安としてご参考ください。

既にアパートを保有している場合、別アセットへの融資は通りやすいですか?

既存ローンの残債状況や金融機関との取引実績によって大きく変わります。既存物件のキャッシュフローが安定しており、年収に対する返済比率に余裕がある場合は審査の土台として評価されやすい傾向がありますが、金融機関ごとに判断基準が異なります。個別に確認することをお勧めします。

トレーラーハウス投資の出口戦略は、アパートとどう違いますか?

アパートは売却か取り壊しが主な出口です。トレーラーハウスは移設・転用という選択肢が加わる点が構造的に異なります。ただし移設にはコストが発生し、移設先の確保も必要になります。「撤退できる可能性がある」という程度の認識にとどめ、過信は禁物です。具体的な出口設計は、導入前に事業者と詳しく確認することをお勧めします。