区分マンション2戸・アパート1棟と積み上げてきた方が次の一手を考えるとき、「同じアセットを増やす」のか「まったく別の構造を持ち込む」のか、判断が難しくなりますよね。利回りという数字だけ並べると一見揃って見えるのですが、リスクの性質も手間の種類も根本的に違います。今回は、アパート経営を軸に据えながら、複数の選択肢を並べて整理してみます。

「利回り8%」のアパートと「利回り4%」のREITは、同じ利回りの話をしていない

数字だけ並べると、アパートの表面利回り8%はREITの分配金利回り3〜4%より高く見えます。ただし、アパートの「8%」は空室・修繕・管理費・ローン返済を引く前の数字がほとんどです。実質利回りに換算すると、築古中古アパートで5〜6%台に落ちることは珍しくありません。

一方でREITは証券口座での売買が可能で、運用管理はプロに委託されています。流動性という点では比較にならないほど高く、10万円単位から参入できます。「どちらが優れているか」という問いより、「ロックアップできる資金の量と期間」がそもそも違う商品だ、という整理の方が実態に近いと思います。

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アパート経営の本当のコストは、空室率より「修繕のタイミングが読めないこと」にある

既にアパートを1棟お持ちなら実感されているかもしれませんが、10〜15年目の大規模修繕は金額も時期も想定しにくい支出です。外壁塗装・屋根・給排水設備をまとめると数百万円規模になることがあり、これをキャッシュフローに織り込めていないと収益計算が一気に崩れます。

私自身も取材を通じて痛感したのですが、「修繕積立を月5万円に設定していたのに、実際の工事見積もりが400万円を超えた」という話は一棟オーナーの間では決して珍しくありません。

モデルケースとして、築15年・木造2階建て・6室・満室家賃60万円/月のアパートを想定すると、年間家賃収入は720万円ですが、管理費・固都税・ローン返済・修繕積立を差し引くと手残りが年間100万円を切るケースも想定されます。個別の条件によって大きく変わる点はご留意ください。

株式・定期預金・現金保有と並べると、「流動性と収益性のトレードオフ」が浮かび上がる

各選択肢を比較軸で整理するとこうなります。

定期預金・現金保有

元本割れリスクはほぼなく、流動性は最高です。2025年時点での定期預金金利は概ね0.1〜0.4%程度で、インフレが続く局面では実質的な資産価値が目減りするリスクがあります。「次の投資機会を待つための待機資金」として機能させるのが現実的な使い方でしょう。

株式・インデックスファンド

長期では年率5〜7%程度のリターンが過去データとして示されているケースもありますが(将来を保証するものではありません)、短期の価格変動が大きく、精神的な負荷がかかります。不動産との相関が低い資産クラスとして、分散効果が期待されることがあります。

REIT

不動産の分散投資を流動性高く実現できる一方、金利上昇局面では価格が下落しやすい傾向があります。現物不動産のレバレッジ効果はなく、減価償却を使った所得圧縮もほぼ活用できません。

アパート経営(現物不動産)

融資を活用したレバレッジ、減価償却を活用した所得圧縮効果は他の選択肢にはない特徴です。ただしその分、流動性の低さ・管理負荷・修繕タイミングの不確実性を引き受ける必要があります。

「3棟目アパート」と「別アセット1本」、今のポートフォリオにはどちらが合うか

既にアパート1棟を持つ方が同じアセットを増やすメリットは、運営ノウハウの横展開と融資実績の蓄積です。ただし、既存のローン残高次第では次の融資審査が厳しくなるケースがあります。年収800万円のサラリーマンとして給与所得が属性評価を支えている今のうちに「どこまで融資を使い切るか」は、慎重に考えたいラインです。

一方で別アセットとして、トレーラーハウスを活用した宿泊投資という選択肢もあります。PACOが運用する木造2×4構造のトレーラーハウスは、Airbnbでの運用実績として評価4.8台が出ているケースもあります。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。減価償却期間が現物不動産と異なる点も、所得圧縮の文脈で検討対象になることがあります。

相談を受けた40代の方の事例(モデルケース)では、アパート1棟に加えてトレーラーハウス1台を組み合わせたポートフォリオを検討する中で、「アパートは長期の減価償却、トレーラーハウスは短期の償却で所得を圧縮する」という役割分担が、税理士との打ち合わせで浮かび上がったケースがありました。ただし税効果は個人の課税状況によって異なるため、必ず専門家に確認してください。

数字を並べた後、「10年後に何を残したいか」で選択肢は変わる

利回りという数字は比較の出発点にはなりますが、それだけで意思決定できる投資はほとんどありません。「10年後に現金化したいのか」「相続まで持ち続けるのか」「給与所得との合算で税率を下げたいのか」——この優先順位が決まると、選択肢は自然に絞られてきます。

次の小さな一歩として、既存1棟アパートの「現在の実質利回りと手残り」を改めて計算し直してみることをおすすめします。そこが現状のベースラインになり、新しい選択肢との比較が初めて意味を持ちます。

よくある質問

アパート経営の実質利回りはどう計算すればいいですか?

基本的には「(年間家賃収入 − 年間諸経費)÷ 物件購入価格(諸費用込み)× 100」で算出します。諸経費には管理委託費・固定資産税・都市計画税・火災保険・修繕費・ローン金利が含まれます。表面利回りとの乖離が大きいほど実態に近い数字になりますが、修繕費は予測が難しいため、余裕を持たせた数値で試算しておくことをおすすめします。

REITとアパート経営を両方持つ意味はありますか?

相関の低い資産を組み合わせるという分散の観点では、意味があるケースも想定されます。REITは流動性が高く換金しやすい一方、アパートはレバレッジと節税効果を活用しやすい。それぞれ異なる役割を担わせることで、ポートフォリオ全体のリスク特性が変わることがあります。ただし「両方持てばリスクが消える」ということにはならない点はご留意ください。

サラリーマン投資家として、これ以上融資を増やすリスクはありますか?

融資額が年収の何倍まで通るかは金融機関・物件種別・既存ローン残高によって異なります。既存ローンの返済比率(年間返済額÷年収)が高くなるにつれ、次の審査は厳しくなる傾向があります。給与所得がある間は属性評価が高い反面、定年後の返済計画も含めて総合的に判断することが重要です。具体的な数字はファイナンシャルプランナーや融資経験のある税理士に持ち込んで確認されることをおすすめします。