区分マンション2戸とアパート1棟。ここまで来ると、次の手が見えにくくなりますよね。「さらに同じアセットで規模を拡大するのか、それとも別の何かを持つべきか」——アパート経営をある程度経験した投資家ほど、この問いで足が止まる場面を何度か見てきました。先日、ちょうどそういう局面にいる方から相談を受け、改めて考えさせられました。
「次のアパートを買うべきか」という問いの、本当の意味
相談者の事例(モデルケース)として紹介します。Kさん、38歳、年収800万円のサラリーマン。区分マンション2戸とアパート1棟をすでに保有していて、「次の1手」を考えているとのことでした。話を聞くと、Kさんが本当に悩んでいたのは「何を買うか」ではなく、「今の構成に何が足りないか」でした。
「アパートをもう1棟増やすのは、リスクをむしろ集中させる気がして」とKさんは言いました。融資残高がすでに一定額に積み上がっている中で、同じ不動産カテゴリに追加投資をすることへの引っかかり。数字に強い人ほど、こういう感覚的な違和感を大事にする印象があります。
アパートのキャッシュフローが「読みにくくなる」のは、築何年ごろか
Kさんのアパートは築14年の木造、表面利回り8%。購入当時は「まあ悪くない」と思っていたそうですが、最近になって修繕費の積み上がりが気になり始めていました。木造アパートの法定耐用年数は22年ですから、残り8年のうちにキャッシュフローの見通しをどれだけ立てられるか、というフェーズに入っています。
実質利回りを試算し直すと——空室率10%、管理費5%、修繕積立月2万円、固定資産税年25万円を前提としたモデルケースでは——手元に残る実質利回りは5〜6%台になることも珍しくありません。表面8%という数字が「読みにくい現実」を包んでいた、というわけです。
「撤退できる」という選択肢が、ポートフォリオを強くする理由
Kさんが興味を持ち始めたのが、不動産でありながら動かせるアセット、いわゆるトレーラーハウスを使った投資でした。私自身も2棟を運用していますので、正直なところをお伝えしました。「固定資産税の対象外になりうる」「立地が合わなければ移動できる」という特性は、従来の不動産投資にはない出口の柔軟性です。
ただ、正直に言うと私も最初の1棟目では立地選定を甘く見ていて、稼働率が想定の半分以下だった時期がありました。「宿泊需要がある立地かどうか」の見極めは、数字よりも現地の肌感覚が問われる部分で、ここを軽視すると利回りの計算が根本から崩れます。
PACOが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により変動します)、Airbnb等での宿泊運用(PACO Stay)との組み合わせで想定利回り10〜20%というモデルケースも存在します。ただし立地・稼働率・季節変動によってケースごとに大きく異なります。数字を聞いて飛びつくより、まず自分のポートフォリオのどの「弱さ」を補いたいのかを整理する方が先だと、Kさんにも伝えました。
分散の目的は「リスクを減らす」ではなく「キャッシュフローの予測精度を上げる」こと
Kさんとの会話で気づいたのは、「分散」という言葉をリスク回避の文脈で使う人が多い一方、実際にやるべきことは「キャッシュフローの予測精度を上げること」だということです。修繕費が読みにくいアパートと、需要の見えにくい観光地のトレーラーハウスを組み合わせても、「読みにくさ」が二重になるだけです。
Kさんの場合、まず既存のアパートのキャッシュフロー実績を月単位で整理し、修繕タイミングのシミュレーションを作ることが先決という結論になりました。その上で、手元に残る余力から「次の1手」の規模感を決める。地味な話ですが、これが一番現実的な順番だと思っています。
次の小さな一歩として
もし今、「アパートをもう1棟」と「別アセットで分散」の間で迷っているなら、まずやってほしいのは既存ポートフォリオの実質CF(キャッシュフロー)を1枚の表にまとめることです。管理費・修繕費・税金・ローン返済後の手残りを並べる。それを見ると、「次に何が必要か」が少し見えてきます。Kさんも「やってみると案外、自分の現在地がはっきりした」と言っていました。
PACO Blogでは、アパート経営からトレーラーハウス投資まで、情報提供の立場でお届けしています。特定の商品を勧めるためではなく、「自分の次の手を考えるための素材」として活用していただければと思っています。
よくある質問
アパート1棟保有中ですが、融資余力はどうやって確認すればいいですか?
金融機関ごとに評価基準が異なりますが、一般的には「年収倍率」「既存ローンの残高と担保価値のバランス」「返済比率(年間返済額÷年収)」が目安になります。返済比率が40〜45%を超えると融資審査が厳しくなるケースが多いとされていますが、属性や金融機関の方針によって大きく異なります。まずは取引のある金融機関に現状を相談してみることをおすすめします(投資勧誘ではなく情報提供としてお伝えしています)。
トレーラーハウス投資はアパートと比べて、どんな点が異なりますか?
大きく異なるのは「移動・撤退の可能性」と「宿泊需要への依存度」です。アパートは賃貸需要があれば比較的安定しやすい一方、修繕コストや売却時の流動性が課題になりやすい。トレーラーハウスはAirbnb等の宿泊運用を前提とするケースが多く、観光需要・立地・季節変動の影響を強く受けます。どちらが優れているというより、「自分のポートフォリオの何を補いたいか」で判断するのが適切だと考えています。
既存のアパートを持ちながら、別アセットを追加するときの注意点は?
最も気をつけたいのは「融資余力と手元流動性を食いつぶさないこと」です。既存アパートで急な修繕が発生したとき、新規投資の初期費用との重なりがキャッシュを圧迫するリスクがあります。また、複数アセットを持つと管理の手間・時間コストも増えます。「規模の拡大」と「管理の複雑化」はセットで考える必要があります——私自身、2棟目を追加した直後に既存物件の給湯器交換が重なり、一時的にキャッシュが想定より30万円近く飛んだ経験があります。規模を広げる前に、手元の緩衝材を確認しておくことをおすすめします。