「不動産で節税できると聞いて、アパートを検討しているんだけど——正直、何を確認すればいいかわからないんだよね」。そう話しかけてきたのは、製造業を営む45歳の経営者Kさんでした(以下、ご相談者の事例・モデルケースとしてご紹介します)。株式や投資信託はすでに運用しているが、不動産は未経験。税理士からも「そろそろ不動産を検討してみては」と言われているとのことでした。
正直に言うと、私自身も最初にこの手の相談を受けたとき、「節税効果」の話から入りすぎて、キャッシュフローの話を後回しにしてしまったことがあります。Kさんの相談では、その反省を活かして最初から数字を並べることにしました。
「節税になる」という言葉の後ろに、何が紐づいているか
Kさんの年収は役員報酬ベースで約1,800万円。所得税・住民税の実効税率はざっくり50%近いレンジに入ってきます。減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されるのは事実で、それ自体は間違いではありません。ただ、「節税になる」という言葉の裏に何が紐づいているかは、慎重に確認する必要があります。
減価償却は実際の現金支出を伴わない経費です。帳簿上の損失で税負担を下げる効果が想定されますが、減価償却が終わった後——つまり5〜10年後——は、その効果が薄れます。そのタイミングで物件の収益性が落ちていたり、修繕費がかさんでいたりすると、「節税のために買った物件が、今度は税金と修繕のダブルパンチになる」というケースが実際にあります。
数字を並べたとき、Kさんの顔色が変わった理由
Kさんと一緒に簡単な試算をしてみました(前提:地方都市・築20年・木造・取得価格1億円・表面利回り8%・自己資金2,000万円・融資8,000万円・金利2%・20年返済の場合。あくまでモデルケースで、個人差・物件差があります)。
年間賃料収入は約800万円。そこからローン返済(元利合計)、管理費、固定資産税、火災保険、空室損(10%想定)などを差し引くと、手元に残るキャッシュは年間100〜150万円前後というシミュレーションになりました。一見悪くない数字ですが、問題はここからです。築20年超の木造は10〜15年以内に大規模修繕が必要になるケースが多く、外壁・屋根・設備交換を合わせると300〜500万円規模になることもあります。修繕積立がなければ、数年分のキャッシュフローが一度に消える年が出てくる可能性があります。
「思ったより手元に残らないな」——Kさんがそう漏らしたのはこのタイミングでした。
経営者が不動産を持つとき、見落としやすいリスクはどこか
Kさんのような経営者の方が不動産に向き合うとき、見落とされがちなのが「流動性」と「撤退コスト」です。株式は売りたいと思えば翌営業日には換金できますが、不動産はそう簡単にはいきません。特に収益性が落ちた地方の築古物件は、売りたいときに買い手がつかないリスクもあります。
一方で、「撤退コストが事前に読める」「移設・縮小が構造上可能」な商品を組み合わせることで、ポートフォリオ全体の柔軟性を保つという考え方もあります。この流れで、私はPACO INVESTが扱うトレーラーハウス型投資についても選択肢のひとつとして触れました。Airbnb評価4.8の運用実績を持つ物件もある一方、初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。あくまで「アパートと組み合わせる選択肢のひとつ」という文脈での話です。
「スピードと確実性」を同時に求めると、最初に何を確認すべきか
Kさんが重視しているのは「スピード」と「確実性」でした。ただ、不動産投資においてこの2つを同時に満たすのはなかなか難しい。スピードを優先すると情報が薄くなり、確実性を求めると時間がかかります。
Kさんには、「まず手元のキャッシュフローと修繕リスクを数字で把握した上で、5年後・10年後の出口まで描けるか確認してほしい」とお伝えしました。不動産は「買う判断」より「どう持ち続けるか」の方が難しいことが多い。会社の財務を読み解く力があるKさんだからこそ、物件の数字も自分で検証できる目線を持っていただきたかったのです。
「買わない」という結論が、次の一手を明確にした
Kさんとの相談は、「アパートを買う」という結論には至りませんでした。ただ、「何を確認すればいいかわかった」と言っていただけたのは、それなりに意味があったと思っています。具体的には、①減価償却期間が終わった後のキャッシュフロー試算、②修繕費の積立シミュレーション、③出口(売却・相続)の3点を、税理士と一緒に数字に落としてみることをお勧めしました。
アパート経営は決して悪い選択肢ではありません。ただ、「節税になる」という入口だけで動くと、5年後に選択肢が狭まってしまうケースがあります。次の一歩は、数字を手元に並べることから始めてみてください。
よくある質問
アパート経営の節税効果は、何年くらい続くものですか?
減価償却を活用した所得圧縮効果は、物件の構造・築年数・取得価格によって期間が異なります。木造の場合、法定耐用年数22年を基準に償却が計算されます。耐用年数を過ぎた築古物件は短期間で一気に計上できる反面、償却が終わればその効果はゼロになります。モデルケースとして、築20年の木造を取得した場合、残存耐用年数は2〜4年程度になるケースも多く、節税効果が続く期間は思ったより短いことがあります。必ず税理士と個別試算の上でご判断ください。
年収1,800万円の経営者が不動産融資を申し込む場合、審査で何が見られますか?
安定した法人収益・個人収入がある方は審査上有利に働くケースもありますが、法人の財務状況・個人の既存借入・物件の担保評価・金融機関の方針によって条件は大きく異なります。「通りやすい」とは一概に言えないため、複数の金融機関に打診しながら条件を比較することをお勧めします。特に法人と個人の借入が重なっている場合は、総与信枠の確認が先決です。
トレーラーハウス投資とアパート経営は、どう使い分ければよいですか?
流動性・初期投資規模・運用スタイルがそれぞれ異なるため、どちらが優れているとは言い切れません。アパートは土地建物という固定資産としての性格が強く、長期保有・相続対策に向くケースがあります。一方、トレーラーハウス型の投資は撤退・移設がある程度可能な構造のため、ポートフォリオの柔軟性を重視する方が組み合わせの選択肢として検討されるケースもあります。初期投資の規模感も異なるため(トレーラーハウスは1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジ・モデルケース)、どちらも事業収支の試算と出口シナリオの確認が先決です。