先日、知人の経営者Kさん(以下、ご相談者の事例・モデルケース)から連絡がありました。「法人税がえぐいんだよね。不動産で何か対策できないか」と。年商1.5億円、個人年収1,800万円クラスになると、税務の圧力は正直かなりきつい。その感覚は、不動産業界にいた自分にはよくわかります。

「節税になる」と聞いたとき、まず確認すべき"中身"がある

Kさんが最初に持ち込んできたのは、「中古アパート投資で節税できるって聞いた」という情報でした。確かに、減価償却を活用した所得圧縮効果はモデルケースによっては相応の規模になります。ただ、「節税」の中身が何を指しているかを先に整理しておく必要があります。

木造の中古物件は法定耐用年数が残り少ない、あるいはすでに超えているケースが多く、短期間に大きな減価償却費を計上できる場合があります。これが高所得者に「おいしい」と言われる理由です。ただし、これはあくまで「課税タイミングのズレ」であり、将来の売却時に譲渡益課税が発生する可能性がある点は切り離せません。

試算してみて初めて「8%」の薄まり方がわかった

Kさんと一緒に数字を並べてみました。前提は、築25年・木造・地方都市(人口20万人規模)・6室・表面利回り8%と広告に記載された物件のモデルケースです。

管理費・修繕積立・固定資産税・空室率(想定10%)・ローン返済を差し引くと、実質的なキャッシュフローは表面利回りの半分以下になるケースが珍しくありません。「8%って書いてあるのに、なんで手元に残らないんだ」——Kさんのこの一言は、自分が不動産勤務時代に何度も聞いてきたフレーズでした。

さらに、築25年超では大規模修繕の可能性も現実的です。屋根・外壁・給排水設備の交換は、ケースによって数百万円規模の出費になることがあります。Kさんはこのコストを購入前の試算に入れておらず、「聞いてなかったコストが多すぎる」と苦笑いしていました。

それでも中古アパートを選ぶ理由が、人によってはある

中古アパート投資がすべて不向きというわけではありません。新築より初期投資を抑えやすく、エリアによっては安定した入居需要が見込まれるケースもあります。問題は、「節税になるから買う」という入り口だと、出口戦略が後回しになりやすいことです。

Kさんのような年収・資産規模の方の場合、税制メリットだけを目的にすると、物件の収益性をざっくりとしか検証せずに進んでしまうリスクが高まる傾向があります。スピードを重視する経営者ほど、このパターンに入りやすい。自分自身も30代後半に最初のアパートを買うとき、税務の話に引っ張られすぎて立地の精査が甘く、入居率の回復に2年近くかかった経験があります。節税効果の計算より先に地図を広げるべきでした。

「10年後に売れるか」——この問いが、購入判断の分岐点になる

Kさんとの話で最終的に重要になったのは、「この物件、10年後に売れるか」という問いでした。節税効果は最初の数年に集中しやすく、その後は通常の賃貸経営になります。そのとき、需要が続く立地か、維持コストに見合う状態か——これを購入前に想定できているかどうかが、中古アパート投資の本質的な分岐点です。

Kさんは現在、特定の物件にはまだ踏み込んでいません。「焦って買う必要はない」という結論に至り、まず地域の賃貸需給データを自分で集めることから始めることにしました。スピードを重視するタイプほど、最初の一歩を丁寧に踏んだほうが結果的に速く進める、というのはよくあることです。

今日できる一歩——「実質利回り」を自分で計算してみる

中古アパート投資を検討している段階であれば、まず「実質利回り」の試算を自分でやってみることをおすすめします。表面利回りから管理費・空室率・修繕費・税コストを引いた数字が、実際の手元キャッシュに近い数字です。この計算を一度やると、「8%」という数字がどれだけ薄まるかが体感としてわかります。

なお、PACOが扱うトレーラーハウス型の投資は、アパートとは異なるアプローチ(木造2×4構造・Airbnb等の宿泊運用)です。ただ、「出口が描けるか」「実質的なキャッシュが残るか」という問いの立て方は共通しています。比較軸のひとつとして参考になれば、と思っています。

よくある質問

中古アパートの減価償却による節税効果は、どのくらい見込めますか?

物件の構造・築年数・購入価格の配分によって大きく異なります。耐用年数を超えた木造物件は取得価額の大部分を短期間で償却できるケースがありますが、それは課税の繰り延べであり、売却時に譲渡所得税として課税される可能性があります。モデルケースとして一定の効果が想定されることはありますが、個人の税務状況により結果は変わるため、税理士との事前シミュレーションは省略しないことをおすすめします。

年収1,800万円クラスでも、中古アパート投資で融資は通りやすいですか?

高所得・法人保有の実績がある方は、融資審査において有利に働くケースがあります。ただし、個人属性だけでなく物件の収益性・担保評価・他の借入状況によっても審査結果は変わります。「融資が通りやすい」という一般論だけで物件選定を進めると、条件が想定外になることもあるため、複数の金融機関に条件を確認するステップは省略しないことをおすすめします。

アパート投資とトレーラーハウス投資、どちらを先に検討すべきですか?

一概にどちらが先とは言えません。アパートは賃貸需要が安定したエリアで長期保有を前提にするケース、トレーラーハウスは宿泊・観光需要を活かした短期運用を組み合わせるケースが多く、目的・立地・キャッシュフローの描き方が異なります。PACOのトレーラーハウスは1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース・物件仕様・立地・付帯工事により上下します)、まず自分の投資目的を整理してから比較されることをおすすめします。