「新築は割高だから中古のほうが賢い」。不動産投資の入門書を開けば、まずこの一文に出会います。年収1,800万円で法人税対策を真剣に考えているなら、情報収集の初期段階でこのフレーズを目にしたことがあるはずです。ただ、この"常識"をそのまま鵜呑みにして動いた方が、出口で思わぬ現実に直面するケースは業界でも多く報告されています。

「安く買った」優位性が、売却時に消えることがある

中古アパートの表面利回りが高く見える理由のひとつは、シンプルに物件価格が低いからです。しかし、ここで見落とされがちなのが「売却時の担保評価」です。

築20年超の木造アパートは、金融機関の担保評価がほぼゼロになるケースがあります。購入時に融資を引けた物件でも、いざ売却しようとしたとき、次の買い手が融資を受けられずキャッシュ購入者にしか売れない状況が起こりえます。「安く買った」という入口の優位性が、出口では逆転してしまうわけです。

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表面利回り8%を実態に近づけると、手元に残る数字はこう変わる

モデルケース(架空の設定)として「首都圏郊外・築25年・木造・8室・満室家賃収入月40万円・取得価格6,000万円」で考えてみます。表面利回りは確かに8%です。

ただし、空室率を15%(郊外物件では珍しくない水準)と見込むと実収入は月34万円に落ちます。管理費・修繕積立・固定資産税・火災保険を合算すると月7〜9万円程度の支出が重なることがあります。さらに築古物件では給湯器交換や外壁補修などの突発費用が加わるケースも少なくなく、実質利回りは5%台まで落ちることが想定されます。これはあくまでモデルケースであり、実際の数値は物件ごとに異なります。

なお、築古物件の収支シミュレーションを組む際、修繕費の見積もりを年間収入の10%で置いてしまうケースがよく見られますが、税理士や専門家からは「15〜20%で見るのが現実的」と指摘されることが多いようです。入口の数字は"甘く"なりやすいという点は、意識しておく価値があります。

減価償却の節税効果は本物——ただし「償却が終わった後」を試算しているか

中古アパートの現実的な活用法のひとつが、減価償却を使った所得圧縮です。耐用年数が短い築古木造は償却スピードが速いため、取得初年度から数年は帳簿上の損失を大きく計上できるケースがあります。年収1,800万円で法人と個人を組み合わせた税対策を考えているなら、この効果は一定の意味を持ちます。

注意が必要なのは、償却が終わった後です。キャッシュフローはプラスなのに帳簿上の利益が急増し、税負担が跳ね上がる「償却後のV字課税」が発生することがあります。「何年後にどうなるか」を税理士と事前に試算しておかないと、5年後に想定外の納税額を突きつけられるというケースは珍しくありません。

「売れない」リスクを確認せずに動くと、資産分散が機能しなくなる

株式や投資信託であれば、判断を誤ったときにポジションを縮小できます。不動産はそうではありません。特に築古・郊外・小規模アパートは流動性が著しく低くなるケースがあります。

資産分散を目的に不動産を検討しているなら、「買い手がつくエリアか」「融資がつく物件か」という出口の視点は、入口の利回りと同等かそれ以上に重要です。売りにくい物件を売りやすい物件と同じように語る業者トークには、特に注意が必要です。

では、中古アパートは「やめたほうがいい」のか

そういうことではありません。「エリアの需給」「残存耐用年数と償却計画」「売却時の想定価格」の3点を事前に整理できていれば、資産防衛の一手として機能するケースはあります。

比較軸のひとつとして、木造2×4構造のトレーラーハウスを活用した投資手法も近年注目されています。1台あたりの取得費用は概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース・架空の前提)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。「中古アパートと何が違うのか」を考える比較軸として、頭の片隅に置く程度で構いません。

今すぐできる、判断精度を上げる一手

手元にある物件資料の表面利回りを、実質利回りに近づける試算を一度やってみてください。空室率10〜20%、管理費・修繕費を年間収入の15〜20%と置いたとき、手残りがどう変わるか。その数字が許容できる水準かどうかを確認するだけで、業者の説明を聞くときの解像度が変わります。

不動産投資は情報の非対称性が大きい分野です。「この物件でなければならない理由」が自分の言葉で説明できるようになってから動くほうが、スピードより確実性を重視する経営者の判断軸に合っていると思います。

よくある質問

属性が高い経営者でも、中古アパートの融資は通りにくいですか?

個人属性が高くても、物件の担保評価が低ければ融資条件は厳しくなります。築古木造は金融機関によって評価の差が大きく、フルローンが通るケースはまず多くありません。自己資金の投下額と節税効果のバランスを、金融機関の選定と並行して確認することが現実的です。

法人で中古アパートを購入する場合、個人との主な違いは何ですか?

損益通算の範囲や融資スキームが変わるため、「法人のほうが必ず有利」とは言えません。減価償却と役員報酬の組み合わせで税圧縮効果が想定されるケースがある一方、法人に不動産を持たせることで資産管理が複雑になる場合もあります。税理士・融資担当と三者で試算することをお勧めします。

トレーラーハウス投資と中古アパートは、どう使い分ければいいですか?

流動性と収益構造が異なります。中古アパートは継続的な家賃収入が見込まれる一方、出口の流動性リスクがあります。トレーラーハウスは移動・撤退できる物理的な特性から撤退コストが相対的に読みやすいケースがありますが、宿泊需要や立地への依存度が高い側面もあります。どちらが優れているというより、資産全体のバランスと自分の税務状況に何が合うかが、判断の核心になります。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入や投資を勧誘するものではありません。 記載の数値はモデルケースであり、立地・融資条件・運用方針・税制改正等によって結果は異なります。 投資判断はご自身の責任において行ってください。
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