「固定資産税だけ払い続けるのも限界で……」と相談に来られる地主の方が、ここ数年で明らかに増えています。相続で引き継いだ郊外の土地を前に、アパート経営の利回りを調べ始めたものの、数字の意味がいまひとつ腑に落ちない——そんな状況、思い当たる方もいるのではないでしょうか。
「8棟16室、表面利回り8%」という提案書を受け取った55歳の田村さん(モデルケース)
相談を受けた55歳の田村さん(仮名)の事例をご紹介します。父親から引き継いだ郊外300坪ほどの土地をお持ちで、地代収入は月7万円。ただ固定資産税が年40万円近くかかり、「持っているだけで赤字」と感じていたそうです。
不動産会社に相談したところ、「8棟16室のアパートを建てれば表面利回り8%も狙えます」という提案を受けたとのこと。私も以前、賃貸仲介の営業をしていたので、この数字の出し方はすぐに分かりました。表面利回りとは年間家賃収入を物件取得費用で割った数字で、コストが一切引かれていない「満室・経費ゼロ」の前提で計算されています。当時の私も、この数字をそのままお客さんに伝えていた時期があり、後から恥ずかしくなった記憶があります。
「8%」と「手元に残るお金」がこれほど乖離する理由
田村さんのケースを一緒に試算しました(前提:建築費8,000万円、16室・月賃料5万5,000円、満室想定)。年間家賃収入は約1,056万円、表面利回りは約13.2%と出ます。ここから現実の数字に修正していきます。
まず空室率。郊外エリアでは15〜20%を見ておくのが現実的です。次に管理費(家賃の5〜8%)、修繕積立金(建築費の年0.3〜0.5%)、火災保険・固定資産税。建築ローンを組む場合は金利負担も加わります。これらを差し引いた実質利回りは、このモデルケースでは4〜5%台に落ち着く試算になりました。個人の融資条件や立地によって数字は大きく変わりますが、「8%」から半分近くになることは珍しくありません。
「土地代ゼロ」は確かに強みだが、6,000万円の機会コストを誰も教えてくれない
自己所有の土地であれば取得費用に土地代が加わらない分、計算上は有利に見えます。ただし「土地をそのまま売却した場合の機会コスト」という視点が、提案書にはまず載っていません。
仮に土地の時価が6,000万円だとすれば、その資金を別の運用に回したときのリターンと比較する必要があります。アパートを建てることで相続税評価額が下がる効果は確かに存在しますが、同時に「建物を建てることで土地の用途が長期間固定される」という撤退コストも現実として伴います。田村さんはこの話を聞いて、「そんな視点、誰も教えてくれなかった」とおっしゃっていました。
「30年間、土地を縛る投資」と「出口を持てる投資」、どちらを選ぶか
私自身がトレーラーハウスを2棟運用しているのも、「撤退できる」という感覚が判断の根拠の一つになっています。PACO INVESTのような木造2×4構造の形態であれば、土地を永続的に縛らずに資産活用できるケースがあります(立地・行政確認の状況によって異なります)。アパートと比べて構造がシンプルな分、Airbnb等の宿泊業態への転換も検討しやすく、用途の柔軟性という点で田村さんには響いていたようです。
もちろん、アパート経営自体が問題なわけではありません。需要のある立地、適切な賃料設定、出口戦略まで設計されていれば十分に機能する投資です。ただ「表面利回り8%」という数字だけを根拠に判断すると、10年後に「実質4%台だったのか」と気づくシナリオは十分ありえます。
提案書を受け取ったら、まず「実質利回りへの換算」をやり直す
アパート建築の提案書を受け取っているなら、最初にすべきことは実質利回りへの換算です。空室率・管理費・修繕費・ローン返済を差し引いた後に残るキャッシュフローが、固定資産税の支払いを上回るかどうか。そこを起点に判断すると、数字の見え方がかなり変わるはずです。
田村さんは最終的に、アパート建築の前にいくつかの選択肢を並べて比較検討することにされました。土地は逃げません。「今すぐ動かない」もまた一つの選択肢です。
よくある質問
表面利回りと実質利回りは、どれくらい差が出るものですか?
条件によって幅がありますが、郊外アパートのモデルケースでは表面利回り8〜13%前後でも、空室・管理費・修繕積立・ローン返済を加味した実質利回りが4〜5%台になるケースが多く見られます。立地・築年数・融資条件で大きく変わるため、あくまで参考値としてご覧ください。
相続した土地にアパートを建てると、相続税対策になりますか?
一般的に、アパートを建てることで土地の相続税評価額が下がる効果が想定されます。ただし建築コスト・ローン負担・キャッシュフローとのバランスを総合的に見ないと、節税効果だけを追いかけて手元資金が細るケースもあります。税理士や不動産専門家に複数の選択肢を試算してもらうことをお勧めします。
トレーラーハウス投資は、アパート経営と何が違いますか?
大きな違いの一つは「撤退のしやすさ」です。アパートは一度建てると土地の用途が長期間固定されますが、トレーラーハウスは構造上の移動・撤去が比較的容易なケースがあります(行政の確認が必要な場合があります)。Airbnb等の宿泊業態で運用するPACO Stayのような形態では、長期賃貸とは異なる収益構造を検討できる場合もあります。初期費用は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって上下します。