区分マンション2戸とアパート1棟。ここまで積み上げてきた方が次に直面するのは、「同じ道を進むか、別のルートを探るか」という判断です。もう1棟積み増すのか、株式・REIT・トレーラーハウスといった別アセットで分散を図るのか。どちらが「正解」かではなく、それぞれ何が向いていて何が向いていないのかを整理しておきたいと思います。
「もう1棟」の融資審査、1棟目より厳しくなる理由
アパートを1棟保有している投資家が2棟目を買い増す際、融資の壁は想像以上に高くなることがあります。銀行の審査では既存の借入残高と返済比率が厳しく見られ、「前回と同じ条件で通ると思っていたら金利が上がっていた」「自己資金を追加で積むよう求められた」というケースは珍しくありません。
実際に相談を受けた40代の方の事例(モデルケース)では、1棟目の融資残高が6,000万円残っている状態で2棟目に挑んだところ、当初想定より0.3%高い金利を提示され、月次キャッシュフローが試算より約2万円薄くなったというケースがありました。中古アパートは築年数が進むほど融資年数が短くなり、手残りが圧縮される構造も避けにくいです。表面利回り8〜9%でも、ローン返済・管理費・修繕積立・空室損失を引いた実質手残りが3〜4%台に落ちることはモデルケースとして十分想定されます。この落差を事前に織り込めているかどうかで、買い増し判断は大きく変わります。
株式・REITと実物不動産、「流動性」と「レバレッジ」のどちらを優先するか
株式やREITの強みは流動性です。必要なときに売れる、小口で始められる、管理の手間がほぼない。この3点は実物不動産にはなかなか真似できません。一方でレバレッジが効かない分、年収800万円の投資家が持つ「信用力」を資産形成に活かしきれないという側面もあります。
REITは分配利回りが3〜5%程度(市況によって変動)のケースが多く、インカムゲインを狙う用途では一定の存在感があります。ただし実物不動産特有の減価償却を活用した所得圧縮効果は見込めません。税引き後の手残りで比較すると、高所得者ほど実物不動産が優位に働くケースがあります。ただしこれは個人の税務状況によって大きく異なるため、顧問税理士への確認が前提です。
現金を「待機」に回す判断は、局面によっては合理的です
「次が見えないなら現金で持つ」という選択は、消極的に見えて実は合理的な局面があります。不動産市況が高止まりしている時期は、無理に動くより次の良物件を拾うための資金を温存する判断が後々効いてくることもあります。
定期預金は現状0.3〜0.6%程度(金融機関・期間により異なります)と実質リターンはほぼ期待できません。ただ「焦って質の低い物件を買う」リスクを回避するコストとして考えると、一概に非効率とは言い切れません。私自身、以前に「待てなくて動いた」結果、修繕費が想定の1.5倍かかった物件を掴んだ経験があります。既に複数物件を保有している方なら、ポートフォリオ全体での現金比率の確保は特に意識しておく価値があります。
アパートの隣に置く選択肢として、トレーラーハウスはどう映るか
私自身がトレーラーハウスを2棟運用しているという立場で、できるだけ偏らずに書きます。中古アパートとの一番の違いは「動かせること」と「固定資産税の扱い」です。トレーラーハウスは道路運送車両法上の車両として扱われるケースが多く、固定資産税の課税対象にならない場合があります(設置状況や自治体の判断によって異なるため、必ず個別確認が必要です)。
PACOの木造2×4構造のトレーラーハウスは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。Airbnb等の短期宿泊で運用した場合の想定利回りは10〜20%とされるケースもありますが、立地・季節変動・稼働率によって大きく異なります。中古アパートのような長期安定賃貸とは性質が異なる投資であり、「どちらが良い」ではなく「今のポートフォリオに何を補完したいか」で評価すべきアセットです。
38歳の段階で何を「軸」にするか——出口から逆算する思考
数字に厳しい投資家ほど、出口を先に決めてから入口を選ぶ習慣があります。中古アパートの出口が「売却益」か「長期保有でのインカム蓄積」かによって、買うべき築年数・立地・構造は変わります。売却前提なら需要のある都市部、長期保有前提なら空室率の低い地方中核都市というように、目的から逆算する思考が判断を速くします。
今すぐ動かなくていいかもしれません。ただ、比較軸を整理しておくことで「いざ良い物件が出たとき」の判断速度は格段に上がります。規模拡大か分散かの二択ではなく、「今のポートフォリオに何が足りないか」を問い直すことが、次の一手を決める最短ルートだと考えています。
よくある質問
中古アパートの「表面利回り」と「実質利回り」の差はどう計算すればいいですか?
表面利回りは「年間賃料収入÷購入価格」で算出されますが、実質利回りは管理費・修繕費・固定資産税・空室損失・火災保険料などを差し引いた手残りベースで計算します。おおまかな目安として、表面利回りから2〜4%程度引いた水準が実質利回りになるケースが多いですが、物件の築年数・管理状態・立地によって大きく異なります。購入前には5〜10年分のキャッシュフロー試算を作成し、修繕費の積み上がりも必ず織り込むことをおすすめします。
既にアパートを1棟保有している場合、追加融資は通りにくくなりますか?
一概には言えませんが、既存の借入残高が大きい場合、返済比率(年間返済額÷年収)が基準を超えてしまい、追加融資が難しくなるケースはあります。一方で、既存物件の収益状況が良好で、確定申告書に安定したキャッシュフローが示されている場合は評価が上がることもあります。複数行に打診する、信用金庫や地銀など地域密着型の金融機関を開拓するといったアプローチが有効なケースもあります。
トレーラーハウス投資は中古アパートと組み合わせると何が変わりますか?
中古アパートが「長期・固定賃料・安定型」のアセットとすると、トレーラーハウスをAirbnb等の短期宿泊で運用した場合は「変動収益・稼働率依存・高単価狙い」という性質になります。両者を組み合わせることで、安定収益の土台の上に高収益を狙う構造を作れる可能性はありますが、短期宿泊運用には季節変動・清掃オペレーション・ゲスト対応といった管理コストも伴います。「手間をかけられるか」「立地に観光需要があるか」を慎重に確認した上での検討をおすすめします。