区分マンション2戸とアパート1棟を保有している方から、「次の一手をどう考えるべきか」という相談を受けることがあります。数字はきちんと読める。融資も通る。なのに、なぜか踏み出せない。その「なぜか」に、実はかなり大事なヒントが隠れていることが多いです。

「棟数を増やせば豊かになれる」という前提、一度疑ってみてください

以下は、知人の投資家仲間から紹介された方の事例(モデルケース)です。個人を特定できないよう内容を一部変えています。

Aさんは38歳・年収800万円のサラリーマン投資家。区分マンション2戸と、築17年の木造アパート1棟(8室)を保有しています。月々のキャッシュフローはトータルで手残り7〜8万円ほど。「少なくはないが、爆発的に増えてもいない」という感覚を持っていました。

次の選択肢は「同じような中古アパートをもう1棟買い増す」か「まったく別のアセットに分散する」かの2択。表面上は規模の拡大か分散かという話ですが、ヒアリングしていて私が気になったのは別のことでした。正直に言うと、私自身も数年前に似たような局面で「利回りの数字だけ見て動こうとして、出口の想定が甘かった」という経験があります。だからこそ、Aさんの「なぜか踏み出せない」という感覚を、単なる迷いとして流せなかったのです。

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築17年の木造アパートを「あと5年持ち続ける」と、何が変わるか

Aさんが保有するアパートは現在築17年。仮にあと5年保有すれば築22年になります。木造の法定耐用年数は22年ですので、その時点で融資評価が大きく変わるケースがあります。次の買い手がローンを組みにくくなる、つまり出口で「現金購入者しか買えない物件」になりやすい状況です。

「表面利回り8%台で見た目はいい物件なんですが」とAさんは話していました。ただ、空室率10〜15%・修繕積立込みで実質利回りを試算すると、手残りは表面の半分以下になるケースも珍しくありません。さらに出口での売却価格が融資の付きにくい状態で下がるなら、トータルリターンの計算はかなり慎重に行う必要があります。

「同じ築年数帯の木造」を積み重ねると、リスクが分散ではなく集中する

Aさんの保有物件はすべて「同じ築年数帯の木造」に集中していました。空室率の変動、修繕タイミング、金利上昇——これらのリスクが複数物件で同時に顕在化する可能性があります。棟数が増えるほど、一度の打撃が大きくなる構造でもあります。

「棟数が増える=リスクが分散される」とは必ずしも言い切れません。同じアセットクラスで固めることは、むしろリスクの集中になり得る。Aさんはそのことを頭では理解していたものの、「じゃあ具体的に何をどう変えればいいのか」が見えていないと話していました。

別アセットへの分散を検討するとき、利回り以外に確認すべき3つの問い

Aさんが興味を持ち始めたのが、木造2×4構造のトレーラーハウスを使った宿泊投資でした。Airbnb等を通じた短期貸しが収益の軸になるモデルで、運用事例によってはAirbnb評価4.8台の実績が出ているケースもあります。

ただし私が最初に確認したのは利回りの数字ではありませんでした。「今の融資枠がどのくらい残っているか」「このアセットの出口は誰が買い手になるか」「既存の税務スキームと噛み合うか」——この3点です。初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変動しますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース・物件仕様や立地で変動)、アパート1棟の買い増しと比較するうえで、投資額の性格自体が異なります。

Aさんにとって重要だったのは「利回りが高いか低いか」ではなく、「既存ポートフォリオの弱点を補う性質を持っているか」でした。出口が柔軟か、減価償却の活用で所得圧縮効果が想定されるか、現金フローの出方が既存物件と異なる時期に来るか——そういった視点での比較です。

「次に何を買うか」より先に、今持っているものの出口を棚卸しする

Aさんはこの相談のあと、すぐに動くのではなく、まず今の保有物件の出口シナリオを整理することにしました。アパートをいつ・どのような条件で売却するか、あるいは保有し続けるかの判断軸を明確にしてから、次のアセットを検討するという順番です。

これは慎重すぎる選択ではなく、数字に厳しい投資家らしい判断だと思います。規模の拡大も分散も、それぞれに合理性がある。ただし「何から何に対して分散しているのか」が曖昧なまま動くと、分散しているようで実はリスクが積み上がっているという状況も起こりえます。

もし今あなたが同じような局面にいるなら、最初の一歩は「次に何を買うか」ではなく「今持っているものの出口と融資余力を棚卸しすること」かもしれません。

よくある質問

アパートを保有しながら別アセットへ分散するとき、融資面で気をつけることはありますか?

既存物件のローン残債と評価額のバランスが、次の融資審査に影響するケースがあります。特に築年数が進んだ木造物件は担保評価が落ちやすく、融資枠を圧迫していることがあります。現在の金融機関との取引状況や、新たなアセットの融資スキームが既存と干渉しないかを事前に確認しておくことが重要です。ケースバイケースですので、金融機関や税理士への個別相談をお勧めします。

トレーラーハウス投資は、アパート経営と比べて出口戦略が読みやすいですか?

一概には言えませんが、「移動できる」という構造上の性質は、アパートにはない選択肢をもたらすことがあります。一方で売却時の市場の厚みや買い手候補の広がりはアパートと異なる面もあります。出口戦略は立地・運用形態・契約形態によって大きく変わりますので、事前のシミュレーションが欠かせません。

アパートでも減価償却は使えるはずですが、なぜ別アセットを検討する必要があるのですか?

アパートの減価償却は築年数が進むにつれて償却期間が短くなり、節税効果も逓減していきます。新たなアセットを加えることで、所得圧縮効果が想定されるタイミングをずらして確保できる場合があります。ただしこれは税務上の効果であり、個人の状況によって大きく異なります。具体的な試算は税理士との相談を前提にしてください。