株式も投資信託も一通り持っている。でも税負担がずっと気になっている。不動産は実物資産として手ごたえがありそうだけど、どの選択肢が自分の状況に合うのか整理できていない——そういう相談を受ける機会が増えています。今回はアパート経営を軸に、主要な選択肢を「向き不向き」の視点で並べます。

「何のための投資か」が決まると、比較の軸がひとつに絞れる

利回りの数字だけを並べると、どうしても「高い方が良い」という結論に引っ張られます。ただ、年収1,800万円の経営者が不動産を検討する場合、目的は大きく3つに分かれるケースが多いと感じています。①法人税・所得税の圧縮、②経営リスクからの資産分散、③将来の安定キャッシュフロー確保——この3つのどれを優先するかで、最適な手段はまったく変わります。

「今すぐ税負担を減らしたい」が最優先であれば、流動性よりも減価償却の速度が重要になります。逆に「本業が傾いたときの備え」なら、現金化のしやすさが欠かせません。比較の前に目的を一行で書き出す——これが遠回りのようで一番早い出発点です。

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「表面8%」の外側にあるコスト構造を、一度自分で計算してみてほしい

アパート経営で語られる利回りは、多くの場合「表面利回り」です。年間賃料収入÷物件価格で計算されますが、管理費・修繕積立・固定資産税・空室損失・保険料は一切含まれていません。モデルケースとして試算すると、表面8%の物件でも実質利回りが4〜5%台に落ちることは珍しくなく、そこからローン返済を差し引くと手残りはさらに絞られます。

私自身、仲介営業をしていた時代に「表面8%と聞いて買ったのに、1年後の手残りが3%台だった」という相談を複数受けました。後から計算すると空室率5%・管理費賃料の5%・修繕積立月1万円を入れただけで、収支の見え方がかなり変わっていたのです。特に都市部の新築アパートは表面利回りが低くなりやすく、地方の中古物件は利回りが高く見えても空室リスクや修繕コストが膨らむ傾向があります。「8%」という数字だけで動く前に、実質と手残りの3層で確認することを勧めています。

株式・REIT・定期預金——それぞれ「向いている人」が違う

株式・投資信託

既に保有されているとのことで性質はご存知かと思いますが、流動性が高い反面、含み損のまま決算を迎えることもあります。節税という観点では損益通算などの活用はあるものの、所得圧縮の手段としては不動産の減価償却ほど即効性を持ちにくいケースが多いです。

REIT(不動産投資信託)

少額から不動産に分散投資できるため、「不動産の感覚を掴みたい」という入口としては有用です。ただし、減価償却による所得圧縮効果は個人に帰属しないため、税対策としての機能はほぼ見込めません。配当利回りは概ね3〜5%程度のケースが多く、リスク特性は株式に近い動きをします。

定期預金・現金保有

元本は守られますが、インフレ局面では実質価値の目減りが起きます。資産の一部として保有する意味はあるものの、税対策・資産成長の両方を同時に期待するには役割が限定的です。

「撤退できるかどうか」は、経営者ほど気にした方がいい判断軸だった

不動産は「入口の自由度」より「出口の設計」が難しいと感じています。アパートは一度取得すると、売却に半年〜1年以上かかることもあります。築年数・立地・ローン残債によっては売りたい時期に売れないリスクも現実にあります。

私が現在運用しているトレーラーハウスは、木造2×4構造で「建物として固定しない」設計のため、撤去・移設という選択肢が残ります。これが出口設計の柔軟性につながるケースがあります。PACO INVESTのような仕組みでは、初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース。物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、アパート1棟と比較して参入規模を抑えながら試せるという側面もあります。

「どれが正解か」より「何を組み合わせるか」で考えると出口が見えてくる

株式で流動性を確保しながら、不動産で所得圧縮と実物資産のバランスを取る——この組み合わせが、年収1,800万円クラスの経営者には合理的なケースが多いと感じています。アパート経営の利回りは「表面」「実質」「手残り」の3層で見ることが出発点で、そこが腑に落ちてから物件選びに入るのが、結果として近道になります。

まず取り組める一歩があるとすれば、手元にある物件情報の表面利回りから実質利回りを自分で計算してみることです。そこで生じる違和感が、次の判断をずっと楽にしてくれます。

よくある質問

アパート経営とトレーラーハウス投資、どちらが節税効果は高いですか?

どちらも減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されますが、仕組みが異なります。一般的にアパートは法定耐用年数に沿った減価償却となる一方、トレーラーハウスは構造や固定方法によって耐用年数の考え方が変わるケースがあります。税務上の扱いは物件の仕様や取得状況によって異なりますので、具体的な節税設計は税理士への確認をお勧めします。

不動産未経験の経営者が最初につまずきやすいのはどこですか?

仲介営業をしていた時代に最も多く見たのは、「表面利回りだけで購入を決めてしまった」ケースです。管理費・空室率・修繕費・金利変動を加味した実質収支を試算しないまま進むと、モデルケースの試算でも手残りが想定の半分以下になることがあります。入口の数字より「5年後の収支シミュレーション」を先に作る習慣が、経営者には特に向いていると思います。

法人で不動産を取得するのと個人で取得するのは、どちらが有利ですか?

一概には言えませんが、年収1,800万円程度の個人所得がある場合、個人で取得した不動産の減価償却損を給与所得と損益通算できるケースがあり、短期的な税負担の圧縮に機能することがあります。一方、法人取得は長期的な相続・事業承継の設計に向いているケースも多いです。どちらが有利かは資産全体の構成と目的によって変わりますので、顧問税理士との連携を前提に検討することをお勧めします。