相続で受け継いだ土地は、固定資産税を払い続けるだけの「お荷物」になりがちです。「いっそアパートを建てて収益化を」と考える気持ちは、よくわかります。筆者自身も不動産会社勤務時代に何十件もそういった相談を受けてきました。ただ、正直に言います。うまくいかなかったケースを、それと同じくらい見ています。
管理会社のシミュレーションを丸ごと信じた、30代の自分への後悔
これは筆者自身の話です。30代後半で最初のアパート経営に踏み出したとき、管理会社から提示されたシミュレーションをほぼそのまま信じました。全室満室、家賃下落なし、修繕費は年間賃料の5%を積み立てておけば十分——そういう前提で組まれた試算です。
3年目に給湯器が2台同時に壊れ、外壁の一部に雨漏りが見つかりました。その年の修繕費だけで約120万円。さらに2部屋が半年以上空室になり、実質利回りは当初想定より2ポイント近く落ちました。派手な失敗ではありませんが、「想定が甘すぎた」と痛感しました。後から気づいたことですが、管理会社のシミュレーションには修繕の「重なり」というシナリオが存在しませんでした。設備の耐用年数が近い物件では、複数の故障が同じ年に集中するリスクは、むしろ当然として織り込んでおくべきでした。
郊外立地のアパートは、都市部に比べて家賃単価が低い分、空室や修繕の影響が収益に直接響きます。表面利回り7〜8%という数字が、実際の手残りに換算すると4%台になるケースは珍しくありません。相続地でゼロから建てる場合、建築費の償還が加わるため、さらに慎重な試算が必要です。
「建てれば借りてもらえる」は、もう通じない立地がある
2000年代と今とでは、地方・郊外の需給構造がかなり変わっています。人口減少が進む地域では、新築でも入居付けに3〜6ヶ月かかるケースがあります。特に相続地は「自分が持っている場所」という事情で選ばれることが多く、賃貸需要の実態確認が後回しになりがちです。
筆者が勤務していた不動産会社でも、「相続対策」として建てたアパートが5年後に空室率40%超になり、売却にも苦労しているというケースを複数見てきました。建築会社のシミュレーションはあくまで満室想定であることが多く、第三者的な需要調査を別途行うことが、今の時代は必要だと思っています。
節税効果は本物でも、30年後の「出口」まで計算していますか
アパートを建てることで相続税評価額を圧縮できるというのは事実です。減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されることも、制度上は確かにあります。ただ、30年後にそのアパートをどうするか——この「出口」まで含めて考えている方は、意外と少ないと感じます。
築30年を超えた木造アパートは、市場での売却が難しくなります。解体費用も発生します。節税効果を享受しながらも、将来の維持コスト・解体費・相続人への引き継ぎ問題まで視野に入れておかないと、節税のつもりが次の世代の負担になるというケースもあります。30年の収支を一枚のシートにまとめてみると、思いのほか手残りが少ないことに気づくことがあります。
「アパート一択」で考える前に、比較軸として知っておきたい選択肢
アパート以外にも、遊休地の活用方法は複数あります。たとえばトレーラーハウスを使った宿泊施設運営というアプローチも、近年選ばれるケースが増えています。PACOが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスは、仕様・立地・付帯工事によって異なりますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(物件仕様や立地条件により変動するモデルケースです)、固定建築物ではないため、将来的に用途変更や移設を検討しやすいという性質があります。
アパートと比較すると規模感は異なりますが、初期の建築確認・ローン・管理の構造がシンプルになりやすく、試験的に一棟から始めて様子を見るというアプローチが取りやすいこともあります。どちらが正解かは土地の条件や目的によりますが、「アパートしか考えていなかった」という方に、比較軸として知っておいてほしい選択肢です。
焦って動く前に、「10年後の姿」を紙に書くだけでいい
相続した土地を持て余しているとき、人は「早く動かなければ」と焦りがちです。ただ筆者の経験から言えば、焦って動いた判断のほとんどは後悔を伴いました。まずやることは一つ——10年後にその土地がどうなっていればよいか、相続人(お子さんやお孫さん)への引き継ぎも含めて、箇条書きでいいので紙に書いてみることです。
その「ゴールのイメージ」がはっきりしてから、アパートなのか、別の活用なのか、あるいは売却なのかを考える。その順番だけで、選択肢の見え方はかなり変わってきます。急いで業者に相談する前に、一度だけ自分の軸を整理してみてください。
よくある質問
相続地でアパートを建てる場合、相続税対策として本当に効果がありますか?
賃貸用建物と貸家建付地として評価されることで、更地のままよりも相続税評価額が下がる効果は制度上あります。ただし、評価圧縮の効果は土地の路線価・借地権割合・借家権割合などによって異なります。また、節税効果を享受した後の維持コストや出口(売却・解体・次世代への引き継ぎ)まで含めた30年収支で考えることを、税理士とともに確認されることをお勧めします。「節税のための建築」が目的化すると、収益性の見通しが甘くなるリスクがある点は注意が必要です。
郊外の土地でアパート経営をしても、入居者は集まりますか?
立地によります。最寄り駅からの距離、周辺の人口動態、競合物件の空室率などを事前に確認することが重要です。特に人口減少が進む地域では、新築アパートでも入居付けに時間がかかるケースがあります。管理会社のシミュレーションだけを判断材料にするのではなく、同エリアの賃貸情報サイトで実際の空室状況を自分で調べてみることも、一つの現実確認になります。
アパート以外に、郊外の遊休地を活用する方法はありますか?
駐車場・トランクルーム・太陽光発電・グランピング・トレーラーハウスを使った宿泊施設など、複数の選択肢があります。それぞれ初期投資の規模、収益性の特性、固定資産税への影響、出口の柔軟性が異なります。「アパートが一番確実」と思われがちですが、立地や土地の形状によっては他の活用方法の方が収益性・リスクのバランスが取りやすいケースもあります。複数の選択肢を比較してから判断することを、個人的にはお勧めしています。