区分マンション2戸とアパート1棟。数字をきちんと管理してきた投資家ほど、次の一手を前に「本当にこれでいいのか」と立ち止まることがあります。規模を広げる方向性は正しいのか。それとも別のアセットで分散すべきか。先日、まさにその岐路に立っていた相談者とのやり取りが、自分自身の考え方を整理する機会にもなりました。
「表面利回り8%の物件を見つけた」——そこから話が始まった
知人のCさん(38歳・年収800万円のサラリーマン・相談者の事例/モデルケース)から「利回り8%の中古アパートを見つけたんですが、どう思いますか」と連絡がありました。築15年・木造・地方都市の駅徒歩12分、価格帯は5,000万円台。一見、悪い数字ではありません。
ただ、Cさん自身も「なんとなく引っかかりがある」とおっしゃっていました。既存アパートの管理経験があるぶん、表面利回りだけでは判断できないことを肌で知っている。その感覚は正しい、と私も思いました。
「10年後に売れる物件か」を先に問うと、手残りの計算が変わる
Cさんと一緒に試算を整理してみました。満室想定・空室率10%・管理費5%・修繕積立ランニング1%・固定資産税・ローン金利1.8%(35年)で試算すると、手残りキャッシュフローは年間100〜130万円ほどのレンジ(モデルケース)。表面8%から実質3〜4%台への圧縮です。これ自体はCさんも既存物件で経験済みなので、驚きはありませんでした。
問題は「出口」です。築15年の木造を今買うということは、10年後には築25年になる。地方都市の駅徒歩12分という立地で、そのとき買い手がどれだけいるか。融資が付くかどうか。Cさんは「売れない物件を持ち続けることのリスクを、これまであまり正面から考えてこなかった」とおっしゃっていました。
実はこの点、私自身も以前は「買う時点の利回り」ばかり見ていて、出口の融資付き可否を後回しにしがちでした。地方木造の売却を検討したとき、想定より買い手の母数が少なくて焦った経験があります。Cさんの「引っかかり」は、その感覚と重なるものでした。
「分散」という選択肢が、急に現実感を持ち始めた
Cさんはもともと「同じアセットで積み上げる」派でした。慣れているから、管理の勘所がわかっているから、という理由です。ただ今回の相談を通じて、既存2棟と同じリスク構造の物件をもう1棟加えることへの疑問を口にするようになりました。「木造・地方・築古」というリスク因子が、ポートフォリオ内で重複していく問題です。
そこで別アセットとして、木造2×4構造のトレーラーハウス投資という選択肢を紹介しました(PACO INVESTの事例)。1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース・物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、アパートとは異なり移設・撤去がある程度可能な構造のため、出口の選択肢が変わってくる側面があります。もちろん立地選定や運用方法など別の検討事項もあるので、「こちらが優れている」という話ではありません。ただCさんには「出口の設計が違う」という点が刺さったようでした。
同じ資金規模でも、「リスクが重なる拡大」と「リスクが分散する拡大」は別物
投資規模を広げること自体は悪いことではありません。ただ、同じアセット・同じ構造・同じ出口リスクを積み上げていくことと、一部を別の性質のアセットに振り向けることは、帳簿上の数字が似ていても意味が違います。Cさんは最終的に「今回の中古アパートは見送り、来年の融資枠を温存してから改めて比較する」という結論を出されました。焦って動かなかった判断は、数字に厳しい人らしい結論だと感じました。
「次の一手」を決める前に確認したい3点
Cさんとの対話を通じて浮かび上がったのは、以下の問いです。①10年後の出口(売却・融資・買い手の母数)をどこまでシミュレーションしているか。②既存ポートフォリオとリスク因子が重複していないか。③今の融資枠を「この物件に使い切っていいか」。規模拡大の前にこの3点を整理するだけで、判断の精度が変わります。
「見送る」という結論も、立派な意思決定です
Cさんのケースで印象に残ったのは、「いい物件を見つけた」という興奮よりも「でも何かが引っかかる」という直感を手放さなかったことです。不動産投資は決断が早いほど良いわけではなく、むしろ「見送る判断」が長期的なポートフォリオを守るケースも少なくありません。次の一手を考えている方は、まず「10年後の売り先」を荒くでも描いてみることをお勧めします。
既存アパートとは異なるアセット構造に関心が出てきた場合は、PACO INVESTの事例や収支構造もあわせてご覧いただくと、比較の参考になるかもしれません。
よくある質問
既存アパートがある場合、追加融資の審査はどう変わりますか?
既存物件の収支状況や金融機関との関係性によって大きく異なります。既存ローンの残債・賃料収入・年収・自己資金のバランスが総合的に審査され、「投資実績がある」ことがプラスに働くケースがある一方、既存物件の空室率や修繕状況がマイナス評価になることもあります。金融機関ごとに基準が異なるため、複数行への打診が有効なケースがあります。
中古アパートの出口を考えるとき、何を基準にすればいいですか?
主な観点は「売却時の想定価格」「その時点で融資が付く買い手がいるか」「土地値がどこまで担保になるか」の3点です。特に地方の木造物件は、築年数が進むと積算評価が落ち、融資が付きにくくなる傾向があります。購入時に「10〜15年後に誰に・いくらで売れるか」を荒くでも試算しておくと判断の精度が上がります。ただしあくまで試算であり、市場環境により実際の結果は異なります。
トレーラーハウス投資は、アパートと何が構造的に違うのですか?
大きな違いのひとつは「動かせる構造」である点です。PACO INVESTの木造2×4構造のトレーラーハウスは、一定条件下で移設・撤去が想定されるため、アパートとは異なる出口の選択肢が生まれるケースがあります。ただし立地選定・運用方法・融資条件などアパートとは別の検討事項もあり、どちらが優れているという話ではなく、ポートフォリオ内での「性質の違い」として理解されることをお勧めします。収支構造の詳細はモデルケースごとに異なりますので、個別にご確認ください。