iDeCoやNISAを一通り始めて、「もう一段踏み込みたい」と感じるタイミングは自然に来ます。節税と副収入を同時に狙えると聞けば、中古アパートに目が向くのも無理はありません。ただ、先日あらためて実感したのですが、「表面利回り8%」という数字だけで動くと、5年後に「思ったより残らなかった」という感想に行き着くケースが少なくありません。
「節税になると聞いたのですが」——Tさんの最初の一言
知人から紹介されたTさん(32歳・会社員・年収550万円・独身)からご相談をいただきました。以下はご相談内容をもとにしたモデルケースです。個人を特定できる情報は変更しています。
Tさんが気にしていたのは、都市近郊の築20年・木造アパート(4室)、価格2,800万円、表面利回り8%という物件でした。「節税になると聞いて調べ始めたのですが、実際の手残りはどのくらいになりますか」というのが最初の質問です。正直なところ、この質問に一言で答えられる人はいません。前提条件が多すぎるからです。私自身、以前に似たような物件を試算して「これなら行ける」と思い込み、空室率の見積もりが甘かったと気づいたのが購入直前だった、という経験があります。数字は丁寧に並べないと、都合よく読めてしまいます。
「表面8%」は、どこから削られていくのか
表面利回りとは、年間満室家賃収入÷購入価格で計算される数字です。Tさんの物件で言えば、2,800万円×8%=年間224万円、月換算で約18.7万円。数字だけ見ると悪くない印象です。
ただ、ここから実際の手残りを出すには複数の控除が積み重なります。空室率(築20年・地方近郊では10〜15%程度を見ておくのが現実的なケースが多い)、管理委託費(賃料の5〜8%程度)、固定資産税・都市計画税、火災保険料、修繕積立費。さらに融資を使えば返済額も乗ります。
モデルケースとして試算すると——2,800万円を金利2.0%・30年ローン(自己資金10%・280万円)で借りた場合、年間返済額はおおよそ185万円前後になることがあります(金融機関や審査状況により大きく異なります)。空室損・管理費・税金・修繕費を合算すると、年間キャッシュフローはプラスでも年10〜20万円程度に収まるケースも珍しくありません。「利回り8%」が手残り年15万円前後になることも、実際にあります。
節税効果は確かにある——ただし「2〜3年で終わる」という前提を外すと計算が狂う
Tさんが期待していた節税効果についても整理しました。木造アパートの法定耐用年数は22年です。築20年の物件なら残存耐用年数は2年。減価償却を使った所得圧縮は、モデルケースでは2〜4年程度で終わります。
「節税になる」という話は、この減価償却期間に限った話であることがほとんどです。期間が過ぎると節税効果はほぼ消え、キャッシュフローだけの勝負になります。Tさんには「節税期間が終わった後、この物件をどう運用するか、あるいはいつ売るか」という出口の絵を最初に描いておくことが重要ではないかとお伝えしました。節税を入口にするのは間違いではありませんが、その賞味期限を把握せずに動くと、税効果が切れた時点で初めて収支の厳しさに気づく、というパターンになりがちです。
「では、自分に合う投資ってあるんですか」——Tさんが次に聞いたこと
Tさんから出てきたのは「では、自分に合う不動産投資ってあるんでしょうか」という問いでした。年収550万円という条件では、融資の引き方や物件の選び方で結果がかなり変わります。中古アパートだけが正解ではないし、逆に中古アパートが最適なケースもある。
たとえば当サイトが紹介している木造2×4構造のトレーラーハウス投資(PACO INVEST)は、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケース(モデルケース/物件仕様や立地で変動)が多く、初期投資の規模・出口の柔軟性・減価償却の構造が中古アパートと異なります。比較検討の候補として挙げることはありますが、Tさんの状況に向いているかどうかは別の話です。住宅ローンの有無や手元資金の状況次第で変わりますし、「こちらのほうがいい」と一概には言えません。
気になる物件が出たら、まず「手残り計算」を先にやる
Tさんには最終的に、「表面利回りではなく、実質利回りと年間手残り額の試算を先に出してみましょう」とお伝えしました。融資条件・空室率・修繕費を入れてシミュレーションすると、「表面8%が手残り年15万円になる」という現実が数字として見えてきます。不動産投資ポータルの試算ツールでも、ある程度は体感できます。
節税が終わった後に物件がどう機能するかを最初に確認しておくかどうかで、5年後の感想はかなり変わることがあります。Tさんのように「数字を丁寧に見ようとしている段階」は、実はとても堅実な出発点だと感じました。
よくある質問
築20年の木造アパートでも、融資は通りやすいのでしょうか?
金融機関によって審査基準は異なりますが、築20年の木造物件(法定耐用年数22年)は残存耐用年数が短いため、融資期間や融資額に制約がつくケースがあります。自己資金を多めに求められることもあり、年収550万円帯では特に金融機関ごとに審査結果が大きく分かれる印象があります。事前に複数の金融機関へ打診することをお勧めします。
節税目的で始める場合、どれくらいの年収から効果が出やすいですか?
給与所得が高いほど所得税率が高く、減価償却を活用した所得圧縮効果が相対的に大きくなる傾向があります。ただし年収550万円帯でも、課税所得の状況や既存控除の利用状況によっては一定の効果が想定されるケースがあります。不動産会社の試算だけで判断せず、税理士への事前相談が確実です。
中古アパートとトレーラーハウス投資は、何が一番違いますか?
大きく異なるのは「物件を動かせるかどうか」と「減価償却の構造」です。中古アパートは土地・建物が固定されますが、トレーラーハウスは立地の変更や撤退に柔軟性があるとされるケースがあります。また減価償却期間の長さや計算方法も異なります。どちらが向いているかは、資金計画・目的・保有期間の想定によって変わりますので、個別の状況に合わせて検討することをお勧めします。