「節税になるって聞いたけど、実際いくら変わるの?」という問いに、ちゃんと答えてくれる人が意外と少ない。株や投資信託と違い、アパート経営の損益構造は少し特殊です。今回は45歳・年収1,800万円という設定で、実際の数字を分解しながら考えてみます。

「節税になる」の正体は、お金が出ていかない経費だった

アパート経営で語られる節税の多くは、減価償却を活用した所得圧縮効果のことを指しています。建物は時間とともに価値が減るという会計上の処理を、経費として計上できる仕組みです。実際にお金が出ていかないのに、帳簿上は赤字になる——これが「キャッシュが残るのに税金が減る」という状態の正体です。

ただし、これは一時的な効果です。減価償却できる期間が終われば所得は元に戻りますし、売却時には「減価償却分だけ取得価格が下がった」とみなされ、譲渡所得が増えます。入口の節税だけ見て、出口で驚くパターンは実際に多い。筆者自身も最初に関わったアパートの試算で、この出口課税の計算を甘く見ており、後から税理士に「それ、売るとき全部戻ってきますよ」と指摘されました。

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前提を揃えた試算で、何が見えてくるか

あくまでモデルケースとして、以下の前提で試算します。個人差・地域差・融資条件によって数字は大きく変わりますので、参考値としてご覧ください。

前提条件(モデルケース)

・物件:木造アパート(8室)、築5年以内、購入価格8,000万円(土地2,500万円/建物5,500万円)
・融資:6,500万円、金利1.8%、期間30年
・自己資金:1,500万円
・満室想定月収:60万円(1室7.5万円×8室)
・稼働率:90%(実績ベースの仮定)
・木造の減価償却耐用年数:22年

年間収支のモデル(同・モデルケース)

・年間家賃収入(稼働率90%):648万円
・ローン返済(元利合計概算):約284万円
・管理費・修繕積立・固定資産税等:約100万円
・減価償却費(建物5,500万円÷22年):約250万円
・帳簿上の損益:648万円 − 100万円 − 250万円 − 支払利息≒ 約▲30万円の赤字

帳簿上は赤字ですが、キャッシュフローベースでは年間約264万円のプラス(返済後)になるという構造です。この「帳簿赤字×キャッシュプラス」の状態が、給与所得や事業所得と損益通算できる可能性を生みます。年収1,800万円の方であれば所得税・住民税の合算税率が45%前後の水準に達するケースがあり、所得圧縮の効果は試算上、相応に出やすいと想定されます。ただしこれはあくまで試算であり、実際の効果は必ず税理士に確認してください。

10年後の出口まで数字を伸ばすと、景色が変わる

10年後に売却を検討する場合、最大の変数になるのが「残債と売却価格のギャップ」です。購入価格8,000万円のアパートが、10年後にいくらで売れるか。築15年木造アパートの流通価格は立地・管理状態・金利環境に大きく左右されますが、仮に6,500万円での売却を想定すると、残債は概算で4,500万円前後、売却益は約2,000万円となります(モデルケース)。

ここで注意が必要なのは、10年間の減価償却によって帳簿上の建物価値が大きく下がっているため、譲渡所得の計算では取得費が圧縮されるという点です。「節税で取り戻した分が、売却時にまとめて課税される」という逆転現象が起きるケースもあります。入口の数字だけを追わず、出口まで一本の線で試算する習慣が、判断の精度を守ってくれます。

「事業」として見たとき、経営者が見落としがちなコストとは

年商規模の大きい経営者が不動産投資を始めるとき、見落とされがちなのが「本業との時間コスト配分」です。アパート経営は賃借人対応・修繕判断・融資管理など、放置できない管理業務が発生します。管理会社に委託すれば手間は減りますが、委託費が収支を圧迫します。仲介の仕事をしていた頃、経営者オーナーが一番消耗していたのは入退去が集中する2〜3月でした。ある40代の社長は「確定申告と退去立会いが重なって、2月は本業の会議に3回遅刻した」と話していました。

一方、トレーラーハウス型の投資(PACOが手がける木造2×4構造のモデルが該当します)は、Airbnb等での短期運用を前提としているため、稼働管理はデジタルツールとの相性が良く、ハンズオフな運用に向けやすいという特徴があります。ケースによって異なりますが、管理形態の選択肢として比較してみる価値はあると考えています。

数字を出発点に、次の小さな一歩を

今回の試算はあくまでモデルケースです。融資条件・立地・管理費率・税務上の扱いが変われば、数字はがらりと変わります。まず手元の試算に「出口まで10年の線」を引いてみること——それだけで、検討の精度はかなり上がるはずです。不動産に触れたことのない経営者こそ、最初に「自分の数字」を持つことから始めてみてください。

よくある質問

節税効果は購入した年から使えるのですか?

減価償却費は購入後すぐに計上できるため、初年度から帳簿上の赤字が発生し、他の所得と損益通算できるケースがあります。ただし、確定申告の方法・法人か個人かの違い・保有形態によって効果は異なります。必ず税理士への確認を前提にご判断ください。

自己資金はどのくらい用意すれば現実的ですか?

物件価格の1〜2割程度を目安に言われることが多いですが、属性・融資先・物件種別によって大きく変わります。「自己資金ゼロ」の案件も存在しますが、返済余力や修繕リスクへの備えを考えると、手元資金を厚めに保つほうが経営の安定につながるケースが多いと想定されます。

アパート経営とトレーラーハウス投資は、どう使い分けるのですか?

アパート経営は長期賃貸を基本とし、安定収入が見込める反面、空室リスクや修繕費が継続的に発生します。トレーラーハウス型投資はAirbnb等の短期運用との相性が良く、単価を高めやすいケースがある一方、稼働管理や集客に工夫が必要です。どちらが合うかは、運用にかけられる時間・資金規模・目的(節税重視か収益重視か)によって変わりますので、一概に優劣はつけにくいと感じています。