区分マンション2戸、アパート1棟。ここまで積み上げてきた方が次の一手を迷うとき、たいていの場合「利回りの読み方」が判断軸の中心にあります。先日、ご相談を受けた38歳・年収800万円のサラリーマン投資家Bさん(モデルケース)の言葉が印象に残っています。「表面利回りには慣れてきたけど、実質で計算しなおすたびに、なんか違和感が残るんですよ」。この一言は、同じ段階にいる多くの方が感じていることではないかと思います。

「表面8.2%」が手元で5.3%になるまでに、何が起きていたか

Bさんが保有するアパートは、購入時の表面利回りが8.2%でした。ところが1年運営してみると、管理委託費・固定資産税・火災保険・修繕積立の合計が想定より重く、実質利回りは5.3%前後に落ち着いたといいます。この乖離自体は珍しいことではありません。ただBさんが気にしていたのは数字そのものではなく、「この5.3%が10年後も続く保証はどこにあるのか」という問いでした。

アパート経営における利回りは、空室率・賃料下落・修繕コストの三つが連動して変動します。築10年以内なら修繕は軽微でも、15年を超えると外壁・屋根・設備交換が重なりやすい。Bさんの1棟目はすでに築9年。2棟目を検討する前に、手元の物件の将来コストを再試算しておく必要があると感じました。

▶ 数字で確認したい方へ
あなたの条件で、月いくらが想定されるか
無料で試算してみませんか?
無料シミュレーションを受け取る →
30秒入力 · 完全無料 · しつこい営業なし

規模拡大か、アセット分散か——判断を分けるのは「出口」の視点だった

Bさんが悩んでいたのは「同じアパートをもう1棟」か「別のアセットに振ってリスクを分散」するかでした。こういった相談を受けるとき、私がいつも投げかけるのは「5年後に売りたいとき、どちらが売れると思いますか?」という問いです。アパートは立地と築年数で流動性が大きく変わります。同じ利回りでも、駅徒歩15分・築15年の木造と、駅徒歩5分・築5年のRCでは、出口の選択肢がまったく異なります。

Bさんが候補に挙げた2棟目のアパートは、想定表面利回り9.1%。ただし築13年・木造・地方都市の駅から徒歩18分という条件でした。利回りは高く見えますが、10年後の売却を前提に置いたとき、買い手がどれだけいるかを冷静に考える必要があります。「高利回りで入って、出口で詰まる」というパターンは、数字に厳しい投資家ほど意外と踏み込んでしまうケースがあります。

「撤退できる投資」という軸が、なぜBさんに刺さったのか

アセット分散の選択肢として、私自身も運用しているトレーラーハウス投資の話をBさんにしました。万人向けの選択肢ではないことは先に申し上げておきます。ただ「撤退できる投資」という性質が、既存アパートのリスクを補完する構造として、合う人には合うと感じています。

トレーラーハウスは移動可能な構造物のため、法的には「建物」ではなく「車両」として扱われるケースがあります(自治体・設置条件により異なります)。これにより固定資産税の扱いや土地の使い方に柔軟性が生まれることがあります。弊社PACOが手がける木造2×4構造のモデルでは、Airbnbでの宿泊運用(PACO Stay)と組み合わせているケースもあり、稼働状況によっては想定利回り10〜20%という試算が出ることもあります(モデルケース。個別の立地・稼働率・運営体制により大きく変わります)。初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下しますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いです(モデルケース)。

Bさんの反応は「撤退できる、というのは確かに今まで考えてなかった軸ですね」でした。アパートは一度建てると、少なくとも数十年は土地と構造物が紐づいてしまいます。その重さを意識しはじめた投資家には、撤退可能性という視点が新鮮に映ることがあるようです。

Bさんがその日、何も決めなかった理由

結局Bさんは、その日は何も決めませんでした。2棟目のアパートは保留にして、まず手元の1棟を10年シナリオで再試算することにしたそうです。修繕費を保守的に見積もり、空室率を現状より2ポイント高めに置いたとき、キャッシュフローがどう変わるかを確認するためです。地味な作業ですが、次の一手を正しく選ぶための土台になります。

実は私自身、不動産仲介の現場にいた頃、表面利回りだけを見て物件を提案してしまったことがあります。後から「実質で計算したら思ってたより薄かった」と言われたときの気まずさは今でも覚えています。だからこそ、Bさんのように「違和感を放置しない」姿勢は、長期投資家として正しいと感じています。

次の小さな一歩として

アパート経営の利回りに違和感があるなら、まず手元物件の「実質利回り10年シミュレーション」をやり直してみることをお勧めします。修繕費・空室率・金利変動を少し保守的に置くだけで、次の投資判断の質が変わります。規模拡大か分散かの答えは、手元の数字を整理してからでも遅くはないはずです。

よくある質問

アパートの実質利回りと表面利回りは、一般的にどのくらい差が出ますか?

物件の条件や管理体制によりますが、表面利回りから2〜3ポイント程度下がるケースが多いと言われています。管理委託費・固定資産税・火災保険・修繕費を年間コストとして積み上げると、表面8%が実質5〜6%台になることは珍しくありません。あくまで目安であり、個別物件の条件によって大きく異なります。

既存のアパートに加えて別アセットに分散するとき、どんな観点が必要ですか?

「出口(売却・撤退)の柔軟性」と「キャッシュフローの性質の違い」が主な観点になります。アパートは長期保有前提になりやすいため、流動性の高いアセットや撤退可能な構造のものと組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスク特性が変わるケースがあります。ただし、どのアセットにも固有のリスクがあるため、個別に試算・検討することが重要です。

トレーラーハウス投資はアパート経営と比べて何が違うのですか?

大きな違いのひとつは「撤退可能性」です。トレーラーハウスは移動可能な構造物のため、用途変更や撤退の際の選択肢が、建物を建てた場合と異なるケースがあります(自治体・設置条件によって扱いは異なります)。一方で、宿泊施設としての運用には稼働管理やプラットフォーム対応が必要であり、アパート経営とは異なるオペレーション負荷があります。どちらが向いているかは、投資目的・保有状況・手間のかけられる度合いによって変わります。