区分マンション2戸とアパート1棟を持つ段階まで来ると、次の一手の判断軸がぐっと変わってきます。「利回り何%か」という数字より、「その利回りがどんな前提で計算されているか」「出口でどう変わるか」の方が気になりはじめる。そういう時期に差し掛かった方を念頭に、アパート経営の利回りを他の選択肢と横並びで整理してみます。
表面利回りの数字は、何を隠しているか
アパート経営の表面利回りは、6〜10%台の物件が市場に多く出回っています。ただ、この数字が「手元に残るお金」を指しているかというと、話は全く別です。管理費・修繕費の実費・空室損・固定資産税・ローン金利——これらを差し引いた実質利回りが5%を切るケースも珍しくありません。
筆者自身、取材で複数のオーナーに話を聞いてきた中で印象的だったのは、「表面8%で買ったのに、3年後の実態は5%台だった」という声が想定以上に多かったことです。うち1件は空室率が想定の2倍近くになっていたケースでした。区分マンションを複数持つ方なら似たような経験をされているかもしれません。アパートも同じ構造で見ておく必要があります。
他のアセットと並べると、何が見えてくるか
定期預金・現金保有:「安全」に見えて購買力は目減りしていく
2025年現在の定期預金金利は0.1〜0.5%程度。インフレ局面では実質マイナスになるリスクがあります。手元流動性を確保する意味では合理的ですが、資産を「増やす」文脈では選択肢の主役にはなりにくい。
国内REIT(J-REIT):分配金が出ても含み損が拡大するケースも
分配金利回りは3〜5%前後が目安で、少額から始められ流動性も高い。ただし2024年以降の金利上昇局面では基準価額に下落圧力がかかりやすく、分配金を受け取りながら含み損が拡大するという状況も起きています。「不動産に関わりたいが管理はしたくない」方向けのポジションと言えます。
株式(インデックス・高配当):レバレッジと減価償却効果は使えない
長期インデックス投資の期待リターンは年4〜7%程度(過去データ基準)。高配当株で3〜4%の配当利回りを狙う戦略も根強い人気があります。流動性と分散の観点では不動産より優れていますが、ローンを使ったレバレッジ効果は小さく、税務上の「減価償却を活用した所得圧縮効果」は想定できません。
アパート経営(棟買い):出口の価格が読みにくいのが最大のリスク
融資を使ったレバレッジが効き、減価償却による所得圧縮効果が見込まれます。ただし購入時の仲介手数料・登記費用・修繕費などの諸経費が重く、出口(売却時)の価格が読みにくい。特に築古の木造アパートは買い手の融資が通りにくくなるため、売却価格が当初想定を大きく下回るケースがあります。
「撤退できる投資」という軸を、持っているか
アパートを1棟保有している方が見落としやすいのが「出口の非対称性」です。買うときは融資が下りても、売るときに同等の買い手が現れるかは別問題。築年数・立地・融資残高によっては、売るに売れない状態になることがあります。
この文脈でトレーラーハウスを使った投資が選択肢に入ることがあるのは、移設・撤収という概念があるからです。PACOが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスは、立地が合わなければ移設を検討できる設計になっています(ただし移設コスト・許認可の手続きは別途必要です)。アパートのような「建てたら動かせない」前提とは、リスクの性質が異なります。
初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。想定利回りもケースによって異なるため、単純な数字だけでアパートと優劣をつけるのは難しい。ただ「出口の選択肢が複数ある」という点は、比較軸の一つになり得ます。
分散か規模拡大か——問いの立て方を間違えると答えも変わる
アパートをもう1棟追加するのと、別アセットを1つ加えるのとでは、ポートフォリオが受けるリスクの種類が変わります。同じ不動産で規模を拡大すると、不動産市況・金利・人口動態の影響を一方向に受けやすくなる。一方で分散先の利回りが低ければ、全体のパフォーマンスが希薄化するケースもあります。
「次の一手」を決める前に、今のポートフォリオが何のリスクに対してどの程度の耐性を持っているかを確認することが、実は最初にやるべき作業です。利回りの比較はその次の話です。
次の一歩として、まず何を確かめるか
あれもこれも検討するより、今の保有物件の実質利回りと出口想定を一度試算し直すことをお勧めします。「現状の整理」なしに新しい投資先の数字を評価しても、比較の土台がぶれたままになりがちです。
その上で、「次の物件がアパートでなくてもいい理由」と「アパートでなければいけない理由」を並べてみると、選択肢の見え方が変わることがあります。判断を急がない方が結果的に早く動けることが多い——これは複数のオーナー取材を通じて繰り返し聞いてきた言葉でもあります。
よくある質問
アパート経営の実質利回りはどう計算すればいいですか?
基本的には「(年間賃料収入 ― 年間経費)÷ 物件取得総額 × 100」で計算します。年間経費には管理費・修繕費・固定資産税・火災保険料・ローン金利(またはローン返済額)を含めるのが実態に近い計算です。表面利回りとの差が2〜3ポイント以上ある場合は、その差の内訳を確認することを推奨します。個別物件の状況によって数値は異なります。
トレーラーハウス投資はアパートと比べて融資が通りにくいですか?
一般的に、金融機関がトレーラーハウスを担保評価する基準はアパート(建物・土地)と異なるため、融資条件はケースバイケースになりやすい傾向があります。自己資金の割合・法人か個人かの属性・金融機関との取引状況によって条件は大きく変わります。事前に複数の金融機関へ相談することが実務上は有効です。
既存のアパートを持ちながら別アセットに分散するとき、税務上の注意点はありますか?
アパートとトレーラーハウスでは減価償却の耐用年数が異なり、所得への影響の出方が変わることがあります。また、複数の不動産所得がある場合、損益通算のルールや青色申告の活用方法も変わるケースがあります。具体的な税務判断は必ず税理士へご確認ください。ここで示した内容は一般的な情報提供であり、個別の税務アドバイスではありません。