アパート経営の利回りをある程度積み上げてきたのに、「次の一手」になると急に判断が鈍る。そういう相談が最近とくに増えています。数字に強い人ほど、出口が読みにくい案件には慎重になる。今回は実際にいただいたご相談(モデルケース)を軸に、この「迷いの正体」を整理してみます。
「うまくいっているのに、なぜか怖い」——その感覚は、むしろ正しい
相談をくださったのは、区分マンション2戸とアパート1棟を保有する38歳の会社員の方(年収800万円台・以下モデルケース)です。アパートの表面利回りはおよそ9.8%で、数字だけ見れば堅調なポートフォリオです。
ただ、口にしたのは「もう1棟買い増すか、別の資産クラスに分散するか、6ヶ月ずっと決められないんですよ」という言葉でした。話を聞きながら、「この迷い方は異常ではなく、むしろ情報が正確に揃っていないサインだ」と感じました。※以下はご相談内容をもとにしたモデルケースであり、個人を特定するものではありません。
表面利回り8.5%の物件、実質に直すと何%になるか
検討されていた新規アパートの表面利回りは約8.5%。一見すると悪くない数字ですが、実質利回りを試算すると話が変わってきます。
前提条件(モデルケース):築15年木造・満室想定賃料120万円/年・諸費用(管理費・修繕積立・固定資産税・空室損)を年間賃料の20%と仮定した場合、実質利回りはおよそ6.2%前後になります。表面との差が2ポイント以上開くのは、築古木造では珍しくありません。
さらに気になったのが出口戦略です。「10年後に売れる価格が読めない」という懸念でした。木造アパートの法定耐用年数は22年のため、築15年物件の残存年数は7年。融資が付きにくい状態になる可能性があり、次の買い手にとっての条件が厳しくなるリスクを指摘したところ、「それ、どの不動産会社にも言われなかったんですよね」と少し驚いた様子でした。
正直に言うと、私自身も初めてアパートを検討したとき、残存耐用年数と融資期間の関係を後から調べて「これ先に確認すべきだった」と気づいた経験があります。入口の利回りに目が行くと、出口の条件を後回しにしてしまいがちです。
「同じアセットで深掘り」か「別アセットで分散」か——判断軸の置き方
どちらが正解かは、個人の融資余力・税務ポジション・保有期間の想定によって変わります。ただ、このモデルケースでお伝えしたのは「今のポートフォリオに欠けている性質を補う視点で選ぶほうが、再現性が高い」ということです。
既存の3物件は、いずれも長期賃貸を前提とした安定収入型でした。そこで「短期運用が可能で、かつ出口設計の柔軟性が異なるアセット」を並べてみると、リスク分散の輪郭が見えやすくなります。たとえば木造2×4構造のトレーラーハウス投資(PACO INVESTが手がける物件)は、建物を移動・撤去できる性質上、出口設計が通常の不動産とは根本的に異なります。弊社案件ではAirbnb等での運用でゲスト評価4.8台を維持しているケースもあり、「これ、アパートと全然違う判断軸なんですね」という反応が返ってきました。
「撤退できる選択肢」を一つ持つと、他の判断も変わる
トレーラーハウス型物件の初期投資は、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。想定利回りも10〜20%と幅があり(モデルケース)、立地や運用形態によって大きく異なります。「まず数字の前提条件を確認してから」というのが最初にお伝えすることです。
ポートフォリオ全体で「出口が作りにくいもの」と「出口の選択肢があるもの」の比率を意識するだけで、個々の物件への判断の重さが変わります。撤退できる選択肢があるという状態は、数字には現れませんが、投資判断のノイズを減らす効果があると感じています。
次に動く前に、今持っている物件の「出口」を書き出してみる
規模拡大を急ぐ必要はありません。このモデルケースでの最後のアドバイスは「次の物件を決める前に、今持っている3つの出口を紙に書き出してみてください」でした。
アパート経営の利回りは、入口の数字だけでなく出口での実現可能性とセットで評価するのが本来の姿です。迷いが続いているなら、それはまだ比較できる状態が整っていないサインかもしれません。次の小さな一歩は「比較できる状態を作ること」から始めてみてください。
よくある質問
アパートの実質利回りはどうやって計算すればいいですか?
基本的な計算式は「(年間賃料収入-諸経費)÷ 物件取得総額 × 100」です。諸経費には管理費・修繕費・固定資産税・保険料・空室損失の想定などが含まれます。表面利回りとの差が2〜3ポイント以上開くケースも珍しくないため、必ず実質ベースで試算することをお勧めします。数字はあくまでモデルケースで、個別の物件状況により大きく異なります。
築古アパートは融資が付きにくいと聞きますが、実際どうですか?
木造建物の法定耐用年数は22年で、残存年数が短くなるほど金融機関の評価が下がり、融資期間の短縮や融資自体が難しくなるケースがあります。ただし、金融機関の方針や物件の収益性・担保評価によっても条件は異なるため、一律に「付かない」とは言えません。購入前に複数の金融機関へ打診し、融資条件を比較しておくのが現実的な対処法です。
アパート経営と並行して別アセットを持つなら、何を基準に選べばいいですか?
「既存ポートフォリオに欠けている性質を補えるか」が一つの基準になります。長期賃貸アパートを複数保有している場合、出口設計の柔軟性・運用期間の長短・税務上の処理が異なるアセットを加えることで、リスク分散の輪郭がはっきりしやすくなることがあります。ただし投資判断は個人の財務状況・税務ポジションに依存するため、専門家への相談と組み合わせて検討されることをお勧めします。