相続で受け継いだ土地を持て余している——そんな相談が、ここ数ヶ月で急に増えています。固定資産税は毎年かかる。売るのも惜しい。「アパートを建てれば節税になる」と聞いた。でも本当にそれがベストなのか。今回は「中古アパート投資」を含む5つの選択肢を、優劣ではなく向き不向きの視点で並べます。
「建てれば節税」は、収益が回り続けている前提の話
相続対策の文脈でアパート経営が語られるとき、「建てればとりあえず節税になる」という前提で話が進みがちです。確かに、借地借家法上の評価減や建物の固定資産評価による相続税圧縮効果は想定されます。ただしそれは、あくまで「収益が安定して回り続けている」場合の話です。
空室率が上がれば収益は減り、築年数が経つほどリフォーム費用はかさむ。「節税はできたが手残りがほぼゼロだった」というケースは珍しくありません。まずその現実だけは、冷静に頭に入れておいてください。
5つの選択肢を並べると、向き不向きが見えてくる
現金保有・定期預金:「問題の先送り」になっていないか
手元の安心感は最大ですが、遊休地の固定資産税はそのまま払い続けることになります。インフレ環境下では実質的な価値が目減りするリスクもある。土地を抱えている方にとっては、選択肢というより「先送り」に近い状態になりやすい点は意識しておく必要があります。
株式・REIT:遊休地そのものは何も変わらない
流動性が高く、少額から始められる点では扱いやすい資産です。ただし、遊休地を「活かす」という観点からは直接の解決になりません。相場の上下に連動するため、安定した収入を求める方には精神的な負担が大きくなるケースもあります。REITは不動産の間接運用ですが、自分の土地との接点はゼロです。
新築アパート建築:融資が通りにくく、出口も重い
自己保有地に建てるなら土地代ゼロで始められるため、収支が見えやすい側面があります。ただし建築コストが高く、銀行評価が「積算価格<建設費」になりやすい。融資が通りにくかったり、返済が重くなったりするケースもあります。売却時の評価が落ちやすい点も、長期で見ると無視できません。
中古アパート投資:表面利回りと実質利回りの乖離に注意
自己保有地ではなく「市場に出ている中古物件を買う」選択肢です。新築より価格が抑えられ、稼働中の物件なら入居実績を確認できます。ただし築古物件は修繕リスクが高く、表面利回り8%でも実質利回りが5%前後に落ち着くケースは珍しくありません。
以前、不動産会社に在籍していたころ、「利回りが高い」という理由だけで中古アパートを購入した方が、入居後1年以内に給排水の全面改修を迫られ、想定外の出費が300万円超になった事例を目の当たりにしました。購入前のインスペクション(建物調査)と修繕履歴の確認は、省略できない工程です。
トレーラーハウス等の活用:立地が合わなければ成立しない
郊外や観光地周辺の遊休地と相性がよいのが、トレーラーハウスを使った宿泊運用です。PACO INVESTが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース。物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)。Airbnb等での宿泊運用で稼働実績を積んでいる物件も出てきていますが、観光需要がある立地かどうかの見極めが最重要です。万能ではありません。
「何を使うか」より先に整理すべきこと
特に50代以降の地主の方に一番お伝えしたいのは、「手段より目的を先に決める」ということです。相続税の圧縮が目的なのか、毎月のキャッシュフローを得たいのか、将来の売却益を狙いたいのか。目的によって最適な手段はまったく変わります。
中古アパートが向いているのは、「需要のある地域に立地する物件を相場より安く取得できる目利き力がある」か、「信頼できる管理会社と連携できる」方です。その条件が揃わない場合は、他の手段を並べて再検討する価値があります。焦って動く必要はありません。
今すぐできる、たった2つの確認
まず手元の遊休地の「固定資産税評価額」と「路線価」を確認してください。それだけで、活用余地がある程度見えてきます。中古アパートを選ぶ場合は、「表面利回りではなく実質利回り(想定空室率・管理費・修繕積立を差し引いた後)」を軸に物件を見る習慣をつけることが出発点です。数字の読み方に慣れてから動いても、遅くはありません。
よくある質問
遊休地に中古アパートを「移設」することはできますか?
一般的な中古アパートは固定建築物のため、移設は現実的ではありません。自己保有地に建物を活用したい場合は、新築建設か、トレーラーハウスのような移動可能な構造物の活用が選択肢になります。それぞれ法規制や融資条件が異なりますので、専門家への確認をおすすめします。
中古アパート投資で相続税はどの程度圧縮されますか?
建物は固定資産税評価額、土地は貸家建付地として路線価の一定割合で評価されます。現金保有より評価額が圧縮されるケースが多いとされますが、具体的な数値は物件・立地・借入状況によって異なります。税理士や不動産専門家への個別相談をお勧めします。
地方の郊外エリアでも中古アパートに需要はありますか?
需要は立地と物件スペックに強く依存します。大学・工場・医療機関など「安定した居住需要の核」がある地域は比較的底堅いとされますが、人口減少が進むエリアでは空室リスクが高まる傾向があります。購入前に地元管理会社へ直接聞き取りを行い、賃貸需要の実態を確認することがリスク判断の基本です。