相続で受け継いだ郊外の土地。固定資産税の請求書が届くたびに「何かしなければ」という焦りが募る——そういう状況の方から相談を受けることが増えています。ただ、焦って動いた結果が10年後の後悔につながるのも、この業界では珍しくありません。私自身、以前の取材で「ハウスメーカーの提案をそのまま信じてアパートを建てたが、5年後に周辺の工場が閉鎖して空室率が40%を超えた」という50代オーナーの話を聞いてから、「とりあえずアパート」という言葉に敏感になりました。まずは選択肢を冷静に並べてみましょう。

「とりあえずアパート」がはまる立地と、はまらない立地がある

遊休地の活用策としてアパート経営が真っ先に浮かぶのは自然なことです。土地を持っているなら建物だけの投資で済む、相続税評価額を下げられる可能性がある——こうした理由から、ハウスメーカーの営業担当が真っ先に提案してくる選択肢でもあります。

ただ、見ておきたい数字があります。国土交通省の調査では、地方圏の賃貸住宅空室率は都市部を10〜15ポイント程度上回る地域も存在します(モデルケースとして参照。実際の数値はエリアにより異なります)。「周辺の賃貸需要が5年後も維持されるか」を確認せずに建ててしまうと、融資の返済だけが残るケースも想定されます。「土地活用=アパート」という等式は、立地によって成立しません。

株・REIT・定期預金と何が根本的に違うのか

投資の選択肢を整理すると、大きく「土地を使う系」と「金融資産系」に分かれます。株式やREITは流動性が高く少額から分散できる一方、相続した土地そのものの活用にはなりません。定期預金は元本保全の安心感がありますが、インフレへの耐性は限定的です。

相続対策という観点では、金融資産はそのままの評価額で相続税の対象になります。一方、土地に賃貸建物を建てると「貸家建付地」として評価が下がり、建物も「貸家」として評価減が適用されるケースがあります。ただし、節税効果の大きさは相続財産の構成や相続人の状況によって変わりますので、税理士への確認は必須です。

アパートと「小規模な宿泊施設」では、何が変わるのか

近年、トレーラーハウスを使ったAirbnb運用という選択肢が、地方の遊休地オーナーから注目されるようになっています。木造2×4構造で建てられたトレーラーハウスは固定資産としての扱いが建物と異なるケースがあり、減価償却の期間や評価の仕方がアパートと変わることがあります(詳細は税理士・行政書士に要確認)。

アパートは「長期入居者から月額賃料を得る」モデルです。宿泊施設は「短期滞在者から1泊単価を得る」モデルで、1泊あたりの単価設計次第では面積あたりの売上がアパートより高くなるケースも想定されます。ただし「その立地に旅行・観光の需要があるか」が大前提で、郊外でも自然環境を売りにできるエリアでは成立するケースが見られます。

費用感の目安(あくまでモデルケースです)

PACO INVESTのトレーラーハウスの場合、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いです。ただし物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下しますので、この数字をそのまま判断材料にするのは避けてください。アパートは郊外で4〜6世帯規模だと5,000万〜1億円超になるケースも多く、融資の組み方が大きく変わってきます。

「表面利回り」だけ見ていると、出口で詰む

アパート経営の判断で見落とされがちなのが出口戦略です。建物が古くなったとき、売却できるか、取り壊し費用はいくらか——ここまで含めてトータルで考えないと、表面利回りの数字だけが一人歩きします。郊外の木造アパートは築20年を超えると売却が難しくなるケースがあり、解体費用は4〜6世帯規模で200万〜400万円程度が想定されます(モデルケース。仕様・規模で変動)。

一方、トレーラーハウスは移動・撤去が比較的柔軟な構造であるため、「うまくいかなければ別の使い方に転換する」という選択肢を残しやすい面があります。もちろん撤去にもコストはかかりますし、市況次第の部分はありますが、「撤退できる状態を保つ」という発想は、特に初めて土地活用に踏み出す方には重要な視点だと思います。

「賃貸需要」と「観光需要」を別々に調べることが、最初の一歩

選択肢の優劣を一言で語ることはできません。アパートが向いている立地と、宿泊施設が向いている立地は違いますし、金融資産との組み合わせが合理的な局面もあります。

現実的な最初の一歩は、「その土地の賃貸需要」と「観光・宿泊需要」を別々に調べることです。市区町村の空室率データや近隣のAirbnb稼働状況は、専門家に頼まなくても入口くらいは自分で確認できます。判断は、その次でいいと思います。

よくある質問

郊外の土地でアパート経営は成り立ちますか?

立地によります。周辺に安定した賃貸需要(工場・大学・病院など)がある場合は成立しやすいですが、人口減少が進むエリアでは空室リスクが高まりやすい傾向があります。「今の需要」だけでなく「10年後の需要」を地域の人口動態とあわせて確認することをお勧めします。

相続税対策として、アパートとトレーラーハウスはどちらが効果的ですか?

税務的な効果は、それぞれの資産の評価方法や相続財産の構成によって変わります。一般にアパートは貸家建付地評価による減額効果が明確に制度化されている一方、トレーラーハウスは構造・設置状況によって評価の扱いが異なるケースがあります。いずれも必ず相続専門の税理士に確認してください。

融資を使わずに土地活用はできますか?

自己資金の範囲で動ける選択肢は存在します。小規模な施設を1棟だけ設置するケースや、駐車場・資材置き場として貸し出す方法は初期投資を抑えやすい傾向があります。融資を使う場合は返済計画と空室・稼働率の想定に十分な余裕を持たせることが重要です。