相続で土地を受け継いだはいいけれど、毎年の固定資産税だけが出ていく。「何かしなければ」と思いつつ、「アパート経営って実際どうなの?」という疑問を抱えたまま年月が経っている——55歳前後でそういう方はとても多いのが現実です。今回は感想論を抜きにして、数字の中身から一緒に考えます。

「表面利回り8%」は、手元に何円残ることを意味しているのか

中古アパートの広告では「表面利回り8%」という数字をよく目にします。ただこれは、年間家賃収入÷物件購入価格で計算した粗い数字です。実際の運用では、そこから管理費・修繕積立・固定資産税・火災保険・ローン返済が引かれていきます。

諸経費として家賃収入の25〜35%を差し引いたものが「実質的な手残り」に近いと言われることがあります。表面8%でも、実質は5〜6%程度に落ち着くケースが多いと想定されます。この差を最初に把握しておくかどうかで、判断の精度がかなり変わります。

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前提を明示したモデルケース——試算の内側を一緒に開けてみる

あくまでモデルケースとして、以下の条件で試算します。個人の状況により数字は大きく異なりますので、参考値としてご覧ください。

前提条件

・物件:築20年・木造アパート・8戸(郊外・地方都市近郊)
・建物コスト:4,000万円(土地は相続済みのため建物のみ、リフォーム込み)
・想定満室家賃:月6万円×8戸=月48万円(年間576万円)
・入居率想定:85%(年間家賃収入≒489万円)
・融資:3,500万円借入・金利2.0%・返済期間20年
・年間返済額:約214万円

年間収支の内訳

家賃収入489万円から費用を引いていきます。
・管理委託費(家賃収入の5%):約24万円
・修繕費・維持費(築年数を考慮):約40万円
・固定資産税(建物分):約18万円
・火災保険等:約6万円
合計経費:約88万円

手残り計算:489万円(収入)-88万円(経費)-214万円(返済)=約187万円。月換算で約15万円のキャッシュフローになります(モデルケース)。

ただし、入居率が75%に落ちれば年間家賃収入は約432万円になり、キャッシュフローは一気に圧縮されます。大規模修繕が重なった年は収支がマイナスに転じる可能性もあります。「数字の幅」を持って見ることが重要です。

余談ですが、私が最初にこの種の試算を自分で組んだとき、減価償却の計上を丸ごと忘れていて手残りを大幅に過少評価していました。数字は必ず税理士と突き合わせてください。

土地が手元にある人だけが使える、融資上の条件とは

今回のモデルケースで「建物のみ4,000万円」と設定したのは理由があります。土地を相続で持っている方は、土地取得コストがゼロです。通常の中古アパート購入では土地代も含めた価格で融資を組みますが、相続地主の方は建物・リフォームだけに投資できるため、初期コストを大きく抑えられるケースがあります。

15年の不動産仲介経験を振り返っても、「地主さんが一番融資を引きやすい」と感じる場面は多くありました。土地が担保になるため金融機関からの信頼度が高く、これは自己資金で土地から買い始める投資家にはない条件です。

固定資産税と相続税の「二重の重さ」——建物を建てると数字はどう動くか

遊休地に建物を建てると、固定資産税の評価が変わります。小規模住宅用地として課税標準が更地の6分の1になる特例があるため、毎年の固定資産税が軽減されるケースがあります。また、アパートが建っている土地は相続税評価額の計算でも貸家建付地として減額されることがあります。

ただし、これらは「土地活用が自動的に節税になる」という話ではありません。建物の建築コスト・ローン返済・経費を差し引いた上でのプラスかどうかを、税理士と事前に試算することを強くお勧めします。

「土地があるからアパート」と決める前に確認したい、もう一つの選択肢

中古アパートが合う立地と、別の活用が合う立地は違います。たとえばPACO INVESTが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いものの、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。Airbnb等を活用した宿泊運用(PACO Stayの想定利回りはモデルケースで10〜20%、ケースによって異なります)という選択肢もあり、自然環境や観光資源に近い郊外の土地では収益性が出やすいケースも想定されます。

立地特性・固定費の重さ・相続人の管理能力を合わせて考え、選択肢を比較したうえで決断する——それが55歳という年齢での土地活用に求められる姿勢ではないでしょうか。

まず「自分の土地の数字」を手元に置いてみる

今日の試算はあくまでモデルケースです。大事なのは「郊外の自分の土地で同じ計算をしたら、どうなるか」を専門家と一緒に確認することです。まず固定資産税の金額と、建物建築の概算見積もりを1社から取ってみる——その小さな一歩が、何年も止まっていた判断を動かすきっかけになります。焦って決める必要はなく、数字を手元に置いてからじっくり考えれば十分です。

よくある質問

相続した土地にアパートを建てれば、固定資産税は必ず下がりますか?

必ず下がるとは言えません。住宅用地の特例により更地より評価が下がるケースが多い一方、建物を建てることで建物分の固定資産税が新たに発生します。差し引きで軽減されるかは、土地の面積・評価額・建物規模によって異なります。市区町村の窓口や税理士に事前に確認することをお勧めします。

築20年の中古アパートを購入する場合、最初に確認すべきリスクは何ですか?

主に三点です。①大規模修繕の履歴と今後の予定(屋根・外壁・給排水の状態)、②入居率の実績と周辺の賃貸需要、③融資条件(築年数が古いと融資期間が短くなり月々返済が増えるケースがあります)。この三点を確認せずに表面利回りだけで判断すると、購入後に想定外の出費が発生するケースがあります。

トレーラーハウス投資とアパート経営は、どう使い分けて考えればいいですか?

立地と土地の性格によって向き不向きが変わります。駅近・住宅密集地では賃貸需要が安定しているためアパートが向くケースがあります。一方、自然環境や観光資源に近い郊外の土地では、Airbnb等を活用した宿泊運用のほうが収益性が出やすいケースも想定されます。まず「自分の土地がどういう立地か」を整理することが、判断の出発点になります。