iDeCoもNISAも始めた。でも、なんとなく物足りない——そう感じている方は少なくないと思います。もう一歩踏み込もうと調べると、必ず目に入るのが「中古アパート投資」です。利回りの高さと節税効果が、同時に語られる。ただ、その数字、じっくり確かめてみましたか?

「表面利回り8%」の広告を、私は一度そのまま信じかけた

少し恥ずかしい話をします。私が不動産投資を調べ始めた当初、地方の木造中古アパート(8室、価格2,800万円、表面利回り8.2%)を検討したことがあります。計算上は年間約230万円の収入。副収入としては十分に見えました。

ところが、購入前に管理会社へ確認すると、空室が3室あることが判明しました。さらに外壁の修繕が翌年必要で、見積もりは180万円。これを表面利回りの計算には一切含んでいませんでした。実質利回りを再計算すると、5%を下回る水準になっていました。「広告の数字は誰が、どんな前提で弾いたか」を確認していなかった自分のミスです。結果的にその物件は見送りましたが、もし購入していたら最初の2〜3年は修繕と空室対策で手残りがほぼゼロになっていた可能性があります。

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「表面」と「実質」、どちらの話をしているか聞き分けられますか?

中古アパートの収益計算で最初に押さえたいのが、「表面利回り」と「実質利回り」の差です。表面利回りは「年間満室想定家賃 ÷ 物件価格」で算出します。対して実質利回りは、管理費・固定資産税・修繕積立・空室損失・ローン利息などを差し引いた手残りで計算します。

築20年超の木造中古アパートで表面8%という物件は珍しくありません。ただ、築22年・8室・地方都市・ローン金利2.5%・空室率15%想定・修繕費年間50万円という条件でモデルケースを試算すると、実質利回りは4〜5%台に収まるケースが多いです。物件・エリア・金融機関によって結果は大きく異なるため、この数字はあくまで参考値として扱ってください。

減価償却による節税は本物だが、効果が続く期間は思ったより短い

中古アパート投資を語るとき、減価償却を活用した所得圧縮効果は確かに想定されます。年収550万円の会社員であれば、不動産所得の赤字(減価償却による帳簿上の損失)を給与所得と損益通算することで、所得税・住民税の負担が軽くなる可能性があります。

ただし気をつけたいのは、木造物件の法定耐用年数は22年で、中古物件の残存耐用年数は短く設定されるという点です。築15年の木造であれば残り7年。大きな節税効果が見込める期間は7年間だけということになります。8年目以降は償却が終わり、節税効果が薄れる一方で修繕コストは上がっていく——このタイムラインをあらかじめ試算に組み込んでおかないと、後半のキャッシュフローが想定外に悪化します。

融資期間が「残存耐用年数以内」になると、月々の返済がどう変わるか

金融機関が中古木造に融資する期間は、「残存耐用年数以内」とするケースが多いです。残存7年の物件なら融資期間も7年前後。返済期間が短い分、月々の返済額が膨らみ、キャッシュフローはかなり厳しくなります。たとえば2,000万円を金利2.5%・7年で借りた場合、月々の返済額は約26万円(モデルケース)。家賃収入との差し引きで手残りが出るかどうか、具体的な数字で確認することが不可欠です。

「売れるかどうか」を先に考えておかないと、出口で詰まる

不動産投資のリスクで見落とされがちなのが、「売れるかどうか」です。中古アパートは、売りたいタイミングで買い手が見つかるとは限りません。地方の築古物件は流動性が低く、相場より安値で手放さざるを得ないケースも起こります。「困ったら売ればいい」は通用しにくい資産クラスだということを、最初に認識しておく必要があります。

この点で私が比較軸として注目しているのが、トレーラーハウスを活用した収益物件です。木造2×4構造のトレーラーハウス(PACOが手がける仕様)は、土地に固定せず移動できる特性から、出口戦略の選択肢がアパートとは異なる形で持てる場合があります。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。中古アパートと並べて検討する際の参考として、頭の片隅に置いておく価値はあると思っています。

次の一歩は、自分の数字で試算してみること

中古アパート投資が「悪い投資」だとは思いません。ただ、表面利回りに引きずられたまま検討を進めると、私が経験したように「想定と違う」状況に陥りやすい。まずは気になる物件の実質利回りを自分で計算し、修繕・空室・融資コストを織り込んだ手残りを数字で確認してみてください。その作業自体が、投資判断の精度を上げる一番の近道です。

よくある質問

中古アパートは新築より利回りが高いのに、なぜリスクが大きいと言われるのですか?

表面利回りが高い分、修繕・空室・融資期間の短さといったコストやリスクが内包されているケースが多いためです。新築は初期コストが高い代わりに設備の劣化や空室リスクが当初は低めに抑えられる傾向があります。中古は取得価格が低い反面、「見えないコスト」を事前にどこまで洗い出せるかが収益を左右します。あくまで傾向であり、物件ごとに精査が必要です。

年収550万円の会社員でも、中古アパートで融資は通りますか?

年収水準だけでなく、物件の担保評価・勤務先・勤続年数・既存の借入状況などを総合的に審査されます。中古木造は融資期間が短くなりがちで返済比率が高くなるケースがあるため、複数の金融機関に相談することが一般的です。住宅ローンをまだ組んでいない場合、先に住宅ローンを組んだ後に投資用融資を検討するという順序を採る方もいます。個別の状況によって異なりますので、ファイナンシャルプランナーや金融機関への相談をおすすめします。

節税目的で中古アパートを買う場合、どのくらいの期間を見ておけばいいですか?

減価償却を活用した節税効果は、残存耐用年数の期間に集中します。木造中古(築15年前後)であれば残り7年程度が目安です。その後は帳簿上の損失が出なくなり、節税効果は薄れます。一方で修繕費は増加傾向にあるため、10年スパンのキャッシュフロー計画を最初に描いておくことが重要です。節税効果が終わる時期に「売却か継続か」の判断が必要になるという前提で計画を立てることをおすすめします。