iDeCoもNISAも始めた。でも、もう一段何かできないか——そう感じている方は少なくないと思います。先日、32歳の会社員(以下Bさん。相談を受けた実際の方をもとにしたモデルケースです)から「アパートの利回りって、そのまま信じていいんですか?」と聞かれました。その問いへの答えをまとめたのが今回の記事です。

Bさんが最初に見た数字は「表面利回り9.2%」だった

Bさんが目を付けていたのは、都市近郊の中古木造アパート。築18年・全6室・価格4,500万円、満室時の年間賃料収入は約414万円。414÷4,500≒9.2%——計算自体は正しいです。「これだけあれば節税にもなるし、副収入にもなりますよね」と話していました。

そこで私が投げかけたのが「手残りを試算してみましたか?」という問いです。表面利回りは「満室かつ経費ゼロ」という前提の数字。現実の運用ではそこから複数の支出が引かれていきます。

「9.2%」から実際に何が引かれていくのか

まず空室リスク。築18年の木造アパートで入居率を90〜95%と想定すると、年間賃料収入はすでに372〜393万円の範囲に落ちます(立地・管理状況によって大きく変わります)。

次に管理委託料。賃料収入の5〜10%が相場で、年間18〜40万円程度。加えて修繕積立・原状回復費、固定資産税、火災保険。築年数が進んだ物件では大規模修繕の積立も視野に入れる必要があります。

融資を使う場合、ここにローン返済が乗ります。モデルケースとして、4,500万円のうち4,000万円を金利1.8%・30年返済で借りると、年間返済額は約173万円。諸経費込みで試算すると、手残りが年間80〜120万円台に落ち着くケースも想定されます。表面9.2%が、手元に残る利回りでは2〜3%台になることもある、というわけです。

正直に言うと、私自身も最初にアパートの数字を見たとき、管理委託料と修繕積立を同時に引いた後のキャッシュフローを一度計算し忘れ、「あれ、思ったより薄い」と気づいたことがあります。広告の利回りが目に入ると、つい引き算より先に掛け算をしてしまうものです。

Bさんが「節税」に期待しすぎていた部分

Bさんがもう一つ期待していたのが、減価償却を使った所得圧縮です。木造建物の法定耐用年数は新築で22年。課税所得を圧縮する効果は確かに検討に値します。

ただし、築18年の木造は残存耐用年数が短く、償却期間も限られます。また、減価償却は帳簿上の経費であり、売却時には「譲渡所得」として課税されるケースがあります。節税を目的に据えるなら、出口戦略まで含めて税理士と確認しておくことを私は強くお勧めしています。「節税になる」という入口の話だけで動くと、売却時に想定外の税負担が発生することがあります。

Bさんとの話で出てきた別の選択肢

会話の流れで、私が運用しているトレーラーハウス投資についても少し触れました。現在2棟をAirbnb等の宿泊プラットフォームで稼働させています。PACO INVESTの場合、1棟あたりの初期投資は概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、アパートより小さい単位から入れる点が一つの特徴です。

もちろんこちらも、立地・稼働率・運営体制によって手残りは変わります。「どちらが優れている」という話ではなく、自分の資金規模・リスク許容度・時間コストと照らし合わせる作業が先、というのが私の考えです。

「手残り」から逆算する習慣が、検討の質を変える

Bさんへのアドバイスはシンプルでした。「次に広告を見たとき、表面利回りの隣に空室率・管理費・修繕費・返済額を書き込んでみてください」。この一手間だけで、数字の見え方がまったく変わります。

Bさんはその後、税理士への相談予約を入れたと教えてくれました。焦って物件を押さえるより、一度立ち止まって試算する時間のほうが、後から振り返ると価値があることが多いです。まずそこからで、十分だと思います。

よくある質問

アパート経営の利回りは何%あれば現実的ですか?

表面利回りだけで判断するのは難しく、空室・管理費・修繕費・税金を差し引いた実質利回りで見ることが重要です。実質利回りと融資金利の差(イールドギャップ)が2〜3%以上確保できるかどうかを確認軸にする投資家は多いですが、あくまでモデルケースの考え方であり、個人の状況によって異なります。

32歳・年収550万円でアパート融資は通りますか?

一概には言えませんが、勤務先の安定性・勤続年数・自己資金の有無・既存の借入状況が審査の主な要素になります。自己資金を抑えてのスタートが可能なケースもある一方、フルローンに近いほど月々のキャッシュフローが薄くなりやすいため、シミュレーションは複数パターン用意しておくことをお勧めします。

節税目的でアパートを持つのはありですか?

減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されるのは事実です。ただし、耐用年数・売却時の課税・青色申告の要件など、節税の恩恵を最大化するには税務面の整理が不可欠です。投資判断の前に税理士へ相談することで、入口と出口の期待値のズレを小さくできることがあります。