年収1,800万円、法人も個人も順調。でも税金が重くて、資産が現金と株に偏っている——そんな状況で「次は不動産か」と考え始めた経営者の方は少なくありません。ただ、比較軸がぼやけたまま物件を見始めると、判断の根拠が「なんとなく割安そう」になりがちです。今回は中古アパート投資を中心に、他の選択肢と並べて整理します。

余談ですが、私自身も以前「利回りが高い順に並べれば答えが出る」と思い込んでいた時期がありました。実際に試算してみると、税引き後のキャッシュフローで逆転するケースが出てきて、比較の入口を間違えていたと気づきました。その反省を踏まえて書いています。

「どれが得か」ではなく「自分の課題は何か」から入る

株式・投資信託・REIT・中古アパート・定期預金——これらを「利回り」だけで並べても、比較として機能しません。まず「今、解決したい課題は何か」を先に決める必要があります。

45歳の経営者であれば、課題は大きく3つに分かれることが多いです。①法人・個人の税負担を構造的に下げたい、②株式に偏った資産を分散させたい、③家賃収入のような実物キャッシュフローを将来にわたって確保したい。この3つが混在したまま選択肢を眺めると、どれも「帯に短し」に見えてしまいます。

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それぞれが「効く」場面と「効かない」場面

株式・投資信託

流動性が高く、少額から始められる点は強みです。ただし、年収1,800万円クラスの方にとって、配当所得や譲渡益は申告分離課税で約20%がかかります。所得の圧縮効果はほぼなく、法人税対策としては機能しにくい。資産分散の手段としては有効ですが、税務上の厚みは限定的です。

REIT(不動産投資信託)

不動産に間接的に投資できる手軽さがある一方、値動きは株式市場と連動しやすく、2020年3月や2022年の金利上昇局面では、J-REITの指数が数ヶ月で20〜30%下落した局面もありました。減価償却を直接活用できないため、個人の所得圧縮には使いにくい。「実物資産を持っている感覚」を求めている方には物足りない選択肢です。

定期預金・現金保有

元本が守られる点は確かです。ただし、2024年以降、国内でも物価上昇が続く中、現金だけを積み上げる戦略は「守り」というよりも「じわじわ実質価値が削られている」局面に入っている可能性があります。メガバンクの定期預金金利が年0.1〜0.2%程度である一方、2024年の消費者物価指数は前年比2%台で推移しており、実質利回りはマイナスになるケースも想定されます。

中古アパート投資

実物不動産の特徴は、減価償却を活用した所得圧縮効果が見込める点です。特に木造物件は耐用年数の残存期間次第で、初年度から数百万円単位の経費計上が想定されるケースもあります(物件・条件次第であり、税理士との確認が前提です)。相談を受けた50代の経営者の事例(モデルケース)では、課税所得が年間500万円程度圧縮されたケースもありましたが、物件スペックや融資条件により結果は大きく異なります。

ただし、空室リスク・修繕リスク・管理の手間は株式にはないコストです。「確実性を重視する」経営者にとって、管理の外注化や物件の選別眼が問われる点は、最初から織り込んでおく必要があります。

「向き不向き」を正直に言うと

中古アパート投資が向いているのは、現在の課税所得が高く減価償却の恩恵を受けやすい方、融資を活用できる属性があり、5〜10年単位で資産を育てる視点を持っている方です。逆に、短期で現金化したい、管理に一切関わりたくない、という方には合わない局面もあります。

「流動性・税務効果・管理コスト・インフレ耐性」の4軸で整理すると、中古アパートは「税務効果」と「インフレ耐性」では存在感を示す一方、「流動性」では株式に劣ります。どれが勝るかではなく、組み合わせをどう設計するか、という発想が実態に近いと思います。

次の一手として、やっておきたい小さな確認

中古アパートを選択肢のひとつとして検討するなら、最初に動くべきは物件探しではありません。①現在の所得構造と課税状況を税理士と確認する、②金融機関の融資条件(属性評価)を把握する、③管理を任せられる会社の候補をリストアップする——この3つを先に固めておくと、物件を見たときに「買えるかどうか」ではなく「買うべきかどうか」が判断できるようになります。

PACO INVESTが扱うトレーラーハウス型の投資商品(木造2×4構造)のような選択肢も含め、「実物資産×節税」の軸で比較する際は、同じフレームで並べてみてください。初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって異なりますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いです(モデルケースであり、個別条件により上下します)。

よくある質問

中古アパートと新築アパート、減価償却の観点ではどちらが有利ですか?

一概には言えませんが、耐用年数を超えた中古木造物件は残存耐用年数が短いため、短期間で多くの減価償却費を計上できるケースがあります。一方、新築は耐用年数が長い分、年間の減価償却額は小さくなりやすい。どちらが有利かは現在の所得水準や保有期間の想定によって変わるため、税理士と個別に試算することをお勧めします。

経営者が法人で中古アパートを取得するのと個人で取得するのはどう違いますか?

法人取得の場合、減価償却費や修繕費などを法人の損金に算入できる場合があります。ただし、法人所有にすると売却時の税率や手続きが異なるため、出口戦略も含めた設計が必要です。個人取得は融資が組みやすいケースもあり、どちらが適切かは資本構成・借入余力・将来の相続方針によって変わります。税理士・FPへの相談を先に進めることをお勧めします。

地方の中古アパートは都市部と比べてリスクが高いですか?

立地ごとに需給動向が大きく異なるため、「地方だからリスクが高い」とは言い切れません。地方都市でも大学・工場・病院などの需要の核があるエリアでは、安定した入居率が続くケースもあります。一方、人口減少が顕著なエリアでは空室リスクが顕在化しやすい。物件そのものより「その土地の需要の根拠は何か」を確認することが、立地判断の実質的な起点になります。