相続で引き継いだ土地が、固定資産税の重さだけを運んでくる——そんな状況で「何か建てなければ」と感じている地主の方は少なくないはずです。中古アパート投資はその選択肢のひとつですが、数字の読み方を一つ間違えると、手元に残るお金が想定を大きく下回るケースがあります。今回は試算を軸に、その構造を整理してみます。
「利回り8%」の物件で、自己資金1,000万円に対して年31万円しか残らないケースがある
不動産ポータルサイトに並ぶ「利回り8%」という数字は、ほぼ例外なく表面利回りです。計算式は「年間満室想定賃料 ÷ 物件価格」であり、コストは一切引かれていません。
以下はモデルケースです(架空の設定)。実際の物件・個人の属性・地域によって大きく異なります。
前提条件(モデルケース・すべて架空の試算)
・物件:築20年・木造アパート8戸、購入価格4,000万円
・表面利回り:8%(年間満室賃料320万円)
・空室率:15%(郊外物件の一般的な想定値として設定)
・諸経費(管理費・固定資産税・保険料・修繕積立):年間60万円
・融資:自己資金1,000万円、借入3,000万円、金利2.0%・期間20年
「8%」が「3.1%」に縮む仕組み
実際の年間収入は「320万円 × 85%=272万円」。ここから諸経費60万円を引くと、実質収益は212万円です。さらに借入の年間返済額(元利合計)はおよそ181万円。差し引き手残りは「212万円 − 181万円=31万円」となります。自己資金1,000万円に対する実質利回りは約3.1%——表面利回りの4割以下という計算です。
よくある失敗として、この試算に大規模修繕のコストを織り込んでいないケースがあります。築20年を超えた建物では、屋根・外壁・給排水設備の修繕費用が1棟あたり500万〜1,000万円規模に達することがあり、これが加わると実質的な収支はさらに厳しくなる局面があります。
土地を「持ち込む」と数字は変わるが、楽観視は禁物
相続した遊休地がある場合、土地の購入費がゼロになるため、同じ建物でも利回りの計算は変わってきます。ただし、土地の機会コスト(売却すれば得られたはずの資金の運用益)や、建物の老朽化リスクは同様に存在します。「土地があるから得」という単純な話にはならない点に注意が必要です。
特に郊外の遊休地で中古アパートを運営する場合、空室率は都市部より高めに想定しておくほうが現実的です。上のモデルケースの空室率15%を25%に置き換えると、年間収入は240万円に下がり、手残りはほぼゼロになります。立地と需要の見極めは、数字の前提として最も重要な変数です。
「動かせない」資産を持つことのリスクを先に知っておく
中古アパートは不動産です。一度建てると、移動も撤退もほぼできません。需要が消えた立地でも、建物が残る限り固定費は発生し続けます。相続対策として土地の評価額を下げる効果はあるものの、収益が出なければキャッシュフローがマイナスになる局面もあります。
比較の視点として、PACO STAYのような仕組みも存在します。木造2×4工法のトレーラーハウス(車両運搬具)を客室として1棟単位で購入し、運営はすべて当社グループに委託する形です。1棟1,453万円〜(プロジェクトにより異なる)、想定利回りは7.7〜14.6%(前提:稼働率35%・1泊32,000円の試算。保証なし)。動産扱いのため撤退・売却がアパートより柔軟という構造上の違いがありますが、こちらも試算は試算であり、実際の稼働率は変動します。
「相続対策」を軸にするなら、三つの目的のうちどれを優先するかを先に決める
相続税の評価額引き下げ、固定資産税の圧縮、収益の確保——この三つを同時に満たす手段は多くありません。中古アパート投資は評価額引き下げには一定の効果が見込まれますが、収益性とのトレードオフが生じるケースがあります。目的の優先順位をどこに置くかによって、選ぶべき手段は変わります。
試算を「自分の数字」で作り直すことが、最初の一歩になる
今回示したのはあくまでモデルケースです。実際の物件・融資条件・地域の需要・税率によって、手残りの数字は大きく異なります。まず手元にある土地の固定資産税額、想定できる賃料水準、自己資金の規模を確認し、試算の前提条件を「自分の数字」に置き換えてみることが次の一歩になります。具体的な数字が揃い始めた段階で、税理士や土地活用の専門家に相談することも一つの進め方です。
よくある質問
郊外の土地で中古アパートを運営する場合、空室率はどの程度を想定すればよいですか?
地域・築年数・設備水準によって異なるため一概には言えませんが、郊外立地では都市部より空室率が高くなる傾向があります。試算の段階では、楽観的な数字(空室率10%以下)ではなく、やや厳しめの水準(20〜30%)でもキャッシュフローが成立するかを確認しておくことが、リスクの把握につながります。
相続税対策として中古アパートを建てると、評価額はどのくらい下がりますか?
土地は「貸家建付地」として評価減(借地権割合・借家権割合等に応じた計算)が適用され、建物は「固定資産税評価額 × 借家権割合(一般的に30%)」で評価されます。ただし評価減の具体的な効果は土地の路線価・面積・地域等により異なります。相続税の試算は税理士に個別に確認することをご検討ください。
PACO STAYは相続税対策にも使えますか?
PACO-TRAILERは車両運搬具(動産)として扱われるため、不動産とは評価の仕組みが異なります。動産は一般的に時価評価となりますが、相続税対策としての効果・具体的な評価額については税理士への確認が必要です。目的に合った手段かどうかを専門家とともに検討されることをご案内しています。