iDeCoもNISAも始めた。でも、老後2,000万円問題を考えると、それだけで足りるのかという不安は消えない——そんな相談が最近増えています。先日も、32歳の会社員の方(以下、Aさん。ご相談者の事例・モデルケースです)から、Airbnb運営について話を聞かせてほしいと連絡をいただきました。
「月5万円あれば十分」という出発点は、なぜ悪くないのか
Aさんの最初の言葉は「月5万円の副収入と、少しでも節税できれば十分です」でした。年収550万円、独身、住宅ローンなし。iDeCoの掛金は満額近く拠出しているが、所得控除はそれだけ。「もう少し税負担を減らしながら、手元の現金も増やせないか」というのが本音だったようです。
正直に言うと、私はこういう入口の方のほうが長続きする印象を持っています。「利回り最大化」を最初から狙うより、「自分の生活を壊さない範囲で動く」という姿勢のほうが、撤退判断も含めて冷静に動けるからです。
Airbnb運営の数字を、正直に並べてみた
Aさんの相談を受けて最初に確認したのは「何に泊まってもらうか」という器の問題でした。マンションの一室を使う方法もありますが、Aさんが関心を持っていたのはPACO INVESTのような木造2×4構造のトレーラーハウスを使った宿泊投資の形でした。
初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変動しますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(物件仕様や立地で変動するモデルケースです)。ここでは仮に1,200万円の物件として試算しました。地方観光地エリア、稼働率60%、1泊1万2,000円と設定した場合、月の宿泊売上は概算で21〜22万円前後。管理費・清掃費等を差し引くと、手残りは月12〜14万円程度になるケースが想定されます。
稼働率60%は根拠のない数字ではありません。Airbnbで評価4.8超を維持している物件では、観光需要のある立地で60%前後が見えてくることもある——ただし立地・季節・運営の質によって大きく変わります。Aさんには「稼働率40%でも赤字にならないか」を先に確認するよう伝えました。実はこれ、私自身が試算の初期に稼働率を楽観的に見すぎて、後から計算し直した経験があるので、特に強調するようにしています。
「税金が減ってキャッシュも残る」とはどういう仕組みか
Aさんが最も前のめりになったのは、ここでした。木造建物の減価償却は法定耐用年数が短く、取得初年度から数年は帳簿上の「赤字」が出やすい構造です。この帳簿上の損失を給与所得と損益通算することで課税所得が下がり、所得税・住民税の負担が軽くなる仕組みです。
誤解されやすいのですが、減価償却は「実際に現金が出ていくわけではない費用」です。帳簿では赤字でも、実際の手元キャッシュはプラスになっているというケースが生まれます。年収550万円・課税所得400万円前後の会社員であれば、所得税・住民税の合算税率はおよそ30%前後になるケースが多く、損益通算によって数十万円単位の節税効果が想定されるモデルケースもあります。ただし効果は個人の税率や所得状況によって異なるため、必ず税理士への確認を前提にお伝えしています。
一年後、Aさんが変えたのは「金額の目標」ではなかった
最初「月5万円でいい」と言っていたAさんが一年後に変えたのは、目標金額ではなく「なぜ投資するか」という軸でした。節税効果と副収入の両方が具体的に見えてきたとき、「老後資金はNISAに任せつつ、現役期の税負担を実物資産で削る」という自分なりの設計図が描けた、と話してくれました。
実際に物件を取得したわけではなく、今もまだ検討段階です。それでも「何となく不安だから投資したい」から「自分のお金の流れをどう設計するか」へ視点が移ったこと自体が、大きな変化だと思っています。
試算より先にやること——源泉徴収票を引っ張り出す
Aさんのような方にいつもお伝えするのは、「まず自分の課税所得を正確に把握する」ことです。源泉徴収票を引っ張り出して、課税所得がいくらか確認する。その一歩だけで、節税効果の試算がぐっと現実的になります。
その上でAirbnb運営の具体的な数字に触れたいなら、実際の運用物件の稼働実績や収支モデルを確認できる場を探すのが次のステップです。派手な利回りより、「40%稼働でどうなるか」を先に見せてくれるところを選ぶといいと思います。
よくある質問
会社員がAirbnb運営をすると、副業禁止規定に引っかかりますか?
会社の就業規則によって異なります。「不動産所得」として申告する形であれば副業禁止規定に抵触しないケースも多いですが、勤務先の規定を事前に確認することを強くお勧めします。確認なしで進めると後から問題になる場合があります。
トレーラーハウスは固定資産税の対象になりますか?
一般的に、トレーラーハウスは「随時かつ任意に移動できる状態」にある場合、土地への定着物とみなされないため固定資産税の対象外となるケースがあります。ただし設置状況や自治体の判断によって異なることもあるため、購入前に専門家への確認が必要です。
融資は使えますか?自己資金はどれくらい必要ですか?
融資の可否・条件は金融機関や申込者の属性によって大きく異なります。会社員として安定収入がある場合、融資が通りやすいケースも想定されますが、頭金の割合や金利条件は個別に確認が必要です。「融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートが可能な場合もある」という程度に理解しておき、具体的な数字は金融機関への事前相談で確かめることをお勧めします。