「節税はしたい。でも流動性は手放したくない。不動産は重いし、株は怖い」——この板挟みを抱えたまま動けない経営者に、私は何人も会ってきました。先日、まさにその状態で連絡をくれた知人の話を書きます。結論から言えば、彼が動いたのは「いい投資を見つけたから」ではありませんでした。

年商1.5億円でも「個人資産が会社と同じリスクを追っている」という怖さ

以下は相談を受けた40代経営者の事例(モデルケース)です。Aさん、45歳。製造業の中小企業を経営し、年商は1.5億円ほど。個人年収は1,800万円で、株式と投資信託はすでに保有している。それでも「会社が傾いたとき、個人の資産も同じ方向に動く気がして怖い」と言っていました。

不動産投資は検討したことがあるが、区分マンションは利回りが低く、アパートは管理が重い。「調べるほど選べなくなる」という状態でした。私が不動産会社にいた15年前も、高所得層の相談でいちばん多かったのがこのパターンです。選択肢が増えるほど、判断が止まる。

「民泊って自分で布団を畳むやつですよね」——そのイメージが話の起点だった

Aさんが最初にAirbnb運営の話を聞いたとき、「趣味っぽい」と思ったそうです。民泊=自分でチェックアウト対応してクレームに追われる、というイメージ。正直、私も最初に民泊運営の仕組みを調べたとき、「これを経営者が本業の傍らでやるのは無理だ」と思い込んでいました。それが早計だったと気づいたのは、運営委託モデルの実態を見てからです。

PACOのような形態では、木造2×4構造のトレーラーハウスを宿泊施設として活用し、予約管理・清掃・ゲスト対応を専門業者がカバーする仕組みが組まれているケースがあります。特定の運営実績としてAirbnb評価4.8という数字を聞くことがありますが、これは地域・立地・運営質によって変わります。「自分でやる民泊」と「仕組みに乗る民泊」は、構造が別物だと考えたほうがいいです。

減価償却の話をした瞬間、Aさんの表情が変わった

Aさんが反応したのは利回りの数字ではなく、税の話でした。トレーラーハウスは一般的に動産扱いとなり得るケースがあり、耐用年数が短い償却が適用される場合があります。税理士との確認が前提ですが、モデルケースとして「年間の減価償却費が取得額の20〜30%程度になるケース」があると聞いたとき、Aさんは「株や投信では動かせない税の話だ」と感じた様子でした。

私はその場で「必ず節税になる」とは言いませんでした。税制は個人の状況と顧問税理士の判断によるので、断言は無責任です。「可能性がある領域として、自分の数字で検証する価値があるかどうかを税理士に聞いてみる」——それだけを伝えました。

「損切りできない資産は怖い」——撤退設計がある投資は経営者に刺さりやすい

Aさんがもう一つ気にしていたのは出口でした。建物型の不動産は処分に時間とコストがかかる。トレーラーハウスは構造上、移設・撤去が比較的容易なケースがあります。「すぐ動かせる」ではなく「動かせる設計になっている」という程度のニュアンスですが、アパートと比べたときの相対的な柔軟性は存在します。

移設にもコストはかかります。ただ、経営判断が速い人ほど「出口のない資産」を嫌う傾向があります。「損切りができない資産は持ちたくない」という感覚は、経営者として自然だと思います。

Aさんが動いたのは「何に投資するか」という問いを捨てたとき

Aさんが検討を進めたのは、利回りに納得したからではありませんでした。「何に投資するか」という問いが「自分の資産をどう設計するか」に変わったとき、Airbnb運営という選択肢が急に具体的になったと言っていました。

初期投資の規模感として、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いとされていますが(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。Aさんにとっては「この金額で何を手に入れるか」——キャッシュフロー・節税余地・撤退設計の三つがそろっているかどうかが判断軸でした。

最初のアクションは、顧問税理士に減価償却の試算を依頼すること、それだけです。投資判断より先に「自分の数字で検証する」という小さな一手から始めた点が、私には好印象でした。

よくある質問

不動産の経験がゼロでも、Airbnb運営に参入できますか?

運営管理を外部委託する仕組みを活用すれば、不動産未経験でも参入できるケースがあります。ただし立地選定・許認可・管理会社の選び方など、事前に確認すべき点は複数あります。「仕組みがあるから大丈夫」と安易に考えず、個別の条件をひとつずつ確認することをお勧めします。

法人名義での取得は可能ですか?節税効果はどう変わりますか?

法人名義での取得が可能なケースはありますが、融資条件や税務処理の設計は法人の状況によって大きく異なります。「法人で買えば節税になる」という単純な話ではなく、顧問税理士・金融機関との事前相談を経た個別設計が必要な領域です。

稼働率が想定を下回ったとき、どう備えておけばいいですか?

Airbnb運営は稼働率が収益を直接左右します。立地・季節・競合環境によって変動するため、想定利回りを「最大値」ではなく「中央値〜保守値」で試算しておくことが重要です。前提条件を複数パターン用意し、最悪シナリオでもキャッシュフローが回るかどうかを確認してから判断する——それが経営者らしいアプローチだと思います。