アパート1棟・区分2戸がある程度回り始めると、「もう1棟」「もう1戸」という同じ文法で拡大することへの違和感が出てくることがあります。数字は読める。融資も通りそう。でも、同じ手を繰り返すことへの疑問が拭えない——そんな相談が届いたとき、私自身も「これは単なる利回り比較の話じゃないな」と感じました。

「追加融資で1棟増やしても、リスクのかたちは変わらない」

知人のKさん(38歳・会社員、年収800万円)からの相談です。個人を特定できる情報は変更したモデルケースとして紹介します。

Kさんは区分マンション2戸とアパート1棟を保有しており、融資の打診をしたところ「もう1棟は通るかもしれない」という感触を得ていました。ただ、引っかかっていたのはそこではありませんでした。「追加融資で1棟増やしても、同じ収益構造が増えるだけで、リスクのかたちが変わるわけじゃないですよね」という言葉が印象的でした。

同じアセットを積み上げるリスクは言語化しにくいですが、確かにあると思っています。空室が増えたとき、金利が上がったとき、同じ構造で複数持っていると影響が一方向に重なりやすい。Kさんはそれを直感的に感じていたようです。私自身、かつて「分散できている」と思っていた複数の区分物件が、同じエリアの需要低下で一斉に稼働を落としたことがありました。アセットの種類ではなく、リスク構造が分散できているかどうか——Kさんの問いはそこを突いていました。

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「民泊は不安定」という印象は、2種類の不安が混ざっている

Kさんが次に挙げたのが「民泊投資」でした。同時に「稼働率が読みにくいんじゃないか」「法規制が変わったら終わりじゃないか」という懸念も持っていました。

実際に整理してみると、この不安は「短期的な需要変動」と「構造的な法リスク」の2種類に分けられます。前者はエリア選定と運営の質でコントロールできる部分が大きく、後者については住宅宿泊事業法(民泊新法)や旅館業法の枠内での運用を前提にすれば、ある程度予測できる範囲に収まるケースがあります。ただし法改正リスクがゼロでないことは、前提として正直に置く必要があります。この2種類を混同したまま「民泊は怖い」と結論づけるのは、少し早い判断かもしれません。

「利回り10〜20%」の数字より、その前提を分解する方が使える

Kさんに「想定利回り10〜20%(モデルケース)という数字を見たことがありますか?」と聞くと、「見たことはあるけど信じていない」と返ってきました。正直な感覚だと思います。ただ、その数字が出てくる構造は一度分解する価値があります。

たとえば「地方リゾートエリア、週末稼働メイン、1泊2万円×月12泊」という条件で試算すると、月間売上は24万円。そこから清掃費・OTA手数料(売上の15〜20%程度が目安)・管理費等を引いた手残りをもとに逆算すると、投資額との関係で利回りが出てきます。あくまでモデルケースであり、エリア・仕様・稼働率によって結果は大きく変わります。Kさんに見てもらったのは「利回り」の数字そのものではなく、「稼働率が5割を切ったら手残りはどうなるか」という感度の部分でした。

「撤退できるか」という問いが、意外と核心だった

Kさんが最終的に一番気にしたのは出口戦略でした。「区分や一棟と比べて、売れるのか?」という問いです。

ここは正直に伝えました。トレーラーハウス型の民泊投資(PACOが提供している木造2×4構造のものを含む)は、固定された建物と異なり、移設・撤去という選択肢があることが一つの特徴です。ただし「移設が容易だから流動性が高い」という単純な話ではなく、移設コスト・次の設置場所の確保・再稼働までの期間等を含めて考える必要があります。土地・建物を一体で売却するアパートとはリスクのかたちが違う——Kさんには「別の出口ロジック」として整理してもらいました。

初期投資については、仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって変動するため一概には言えませんが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(物件仕様や立地によって変動します)という目安をお伝えしました。Kさんにとっては「アパート1棟買い増しより小さいチケットで、リスク構造が違うアセットを持てる」という点が、分散の文脈でリアルに刺さったようでした。

「調べてから決める」が、たぶん正しいペースです

Kさんはこの相談の後、すぐには動きませんでした。「もう少し稼働データを見たい」「自分でAirbnbを一度使ってみる」という話をしていました。それが正しいペースだと思います。既存アセットを持っている方が新しいアセットを加えるときは、「なぜ今このアセットか」の言語化ができてから動いても、十分間に合います。

この記事が、その言語化の材料として使えれば幸いです。

よくある質問

既に不動産を複数持っている場合、民泊投資の資金調達はどう扱われますか?

トレーラーハウス型の民泊投資は、一般的な不動産担保融資とは異なるスキームが使われることがあります(動産扱い、事業性ローン等)。既存の不動産融資残高との合算で判断されるケースばかりではないため、融資余力という観点で「別の引き出し」として機能する場合があります。ただし金融機関や審査条件によって大きく異なるため、個別に確認することを推奨します。

民泊新法・旅館業法との関係は、どう整理すればよいですか?

運用形態(住宅宿泊事業法の届出民泊か、旅館業法の簡易宿所か)によって、年間営業日数の上限や設備基準が異なります。PACOのモデルでは旅館業法(簡易宿所)での運用を前提にするケースが多く、その場合は年間180日の上限が適用されないケースがあります。ただしエリアごとの条例・地域の規制状況は個別に確認する必要があります。

稼働率が読みにくいという不安は、どう考えればよいですか?

稼働率はエリアの需要特性(観光・自然・イベント等)と、OTA上の評価・口コミの蓄積によってある程度安定してくるケースがあります。Airbnb評価4.8台を維持している運用物件では稼働が安定している事例もありますが、立地や開業時期によって個人差は大きく出ます。「最初の3〜6ヶ月は稼働が読みにくい時期として資金計画に組み込む」という考え方が、現実的なアプローチとして使われています。