区分2戸とアパート1棟を保有して、次は規模拡大か分散か——この判断をされている方ほど、「アパート追加が王道」という暗黙の前提に引っ張られていることがあります。数字に慎重な方だからこそ、今回は「中古アパート積み増し戦略」の常識を、少し違う角度から検証してみます。
「棟数が増えるほどリスクが薄まる」は、同じアセットを重ねる限り成立しない
不動産投資の世界では「棟数・戸数を増やすほどリスクが薄まる」という言説が広く流通しています。1戸しかない物件で空室が出れば収入はゼロになる——その論理自体は間違っていません。ただ、「同じアセットを同じ融資スキームで積み増す」場合に限って言えば、リスクが分散しているのではなく、相関性の高いリスクを束ねているだけというケースがあります。
築20年超の木造アパートを3棟保有している状況を想像してください。金利が1.5%上昇したとき、修繕費が同時に膨らんだとき、特定エリアで人口流出が加速したとき——3棟すべてが同じ方向に揺れます。これを「分散」と呼ぶのは、少し無理があります。
表面利回り9%の中古アパートが、試算を進めると実質4%台になるまでの過程
中古アパートを検討するとき、表面利回り8〜10%の物件に「割安感がある」と感じるのは自然な反応です。ただ、その数字の裏側にある前提を一枚ずつ剥がすと、実態はかなり違うことがあります。
築年数と修繕サイクルの掛け算を、試算に入れているか
築25年の木造アパート(モデルケース:8室・満室時月収36万円・表面利回り9%)を例にとります。屋根・外壁の大規模修繕が5〜7年以内に発生し、給排水設備の更新も視野に入れると、10年で500〜800万円規模の支出が想定されることがあります。この費用を年次換算してネット利回りに落とすと、表面9%が実質4〜5%台に収斂するケースは珍しくありません。
実は私自身、初めて中古アパートの収支シートを作ったとき、この修繕費の年次割りを完全に抜かしていました。融資返済後のCFがプラスに見えていたのに、修繕積立を加えた途端に月次がほぼトントンになった、という経験があります。「稟議は通っているけれど修繕費を省いている」投資家が思いのほか多いのは、この計算が少し手間だからだと思っています。
出口を「売却」と想定したとき、具体的に誰が買うかを描けているか
中古アパートの出口として売却を描く場合、その買い手を具体的にイメージする必要があります。築30年超・木造・地方立地となると、買い手は個人投資家に限られ、融資も厳しくなります。キャップレートが上昇方向に動けば、売却価格は取得時より下がる方向に傾きます。「利回りが高い物件ほど出口が見えにくい」——これは中古アパート特有の構造的な課題です。
別アセットで「相関しないリスク」を加える選択肢が、もっと検討されていい
アパートの追加ではなく別のアセットに目を向けることで、相関リスクを本当の意味で分散できる可能性があります。たとえばPACO INVESTが手がける木造2×4構造のトレーラーハウスは、固定資産税の課税対象外になるケースがあり、減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されます。PACO Stay(Airbnb等での宿泊事業)との組み合わせで、Airbnb評価4.8という運用実績が出ているモデルケースもあります。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により変動します。
もちろんトレーラーハウスにも独自のリスクがあります。Airbnb需要に依存する立地選定の難しさや、稼働率管理の手間など、アパートとは異質な論点が出てきます。「どちらが優れているか」という話ではなく、相関しにくいアセットを組み合わせること自体の価値を、一度フラットに評価してみてほしいと思っています。
次の一棟を決める前に、3パターンのストレステストをかけてみる
今保有している区分2戸・アパート1棟のキャッシュフローを、「金利が1.5%上昇したケース」「空室率30%が6ヶ月続いたケース」「大規模修繕が重なったケース」の3パターンでシミュレーションしてみてください。その結果を見た上で、「追加するとしたら、このリスクと同じ方向に振れるものか、違う方向に振れるものか」を問い直す。この一手間だけで、次の意思決定の質はかなり変わるはずです。
規模拡大が悪いわけではありません。ただ「中古アパートを積み増すことが安全への近道」という前提は、一度立ち止まって数字で検証する価値があると考えています。
よくある質問
中古アパートとトレーラーハウス、どちらが融資を引きやすいですか?
一概には言えませんが、中古アパート(特に築年数の浅いRC造)は金融機関の評価軸が確立されており、融資実績が多い傾向があります。トレーラーハウスは建物ではなく動産として扱われるケースがあるため融資スキームが異なり、金融機関によって対応が大きく変わります。どちらも個別案件の条件・収益性・担保評価次第ですので、複数の金融機関に当たって比較されることをお勧めします。
中古アパートの実質利回りを計算するとき、何を費用に含めるべきですか?
最低限含めておきたいのは、①管理費(賃料の5〜10%程度)、②修繕積立(月額1〜2万円×戸数を目安)、③空室損失(稼働率90%と80%の両パターン)、④固定資産税・火災保険、⑤ローン返済額です。さらに大規模修繕費を取得から10〜15年の期間で年次割りして加えると、より実態に近い数字が出やすくなります。あくまでモデルケースであり、物件ごとに大きく異なります。
アパートとトレーラーハウスを組み合わせる場合、税務上の扱いはどう違いますか?
アパートは法定耐用年数に基づく減価償却が一般的です。トレーラーハウスは動産として扱われるケースでは耐用年数が異なり、減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されることがあります。ただしこの点は税務上の判断が個別案件・税理士の見解により変わります。必ず担当税理士に確認の上で投資判断されることをお勧めします。