アパート経営の利回りを語るとき、「表面利回り」と「実質利回り」の差は多くの投資家がすでに把握しています。ところが、3棟目を検討する段階になっても、試算が「入口の数字」で止まっているケースは珍しくありません。今回は、既に複数物件を持つ投資家が見落としやすいコスト構造を、具体的な数字で一度ばらして確認してみます。

「表面8%」を持ち帰ったとき、NOIまで落とすと何%になるか

不動産ポータルに掲載されるアパートの多くは、表面利回りで8〜10%前後の数字が並んでいます。ただ、表面利回りは「満室想定の年間賃料÷物件価格」に過ぎません。手元に残るキャッシュフローを出すには、そこからかなりの項目を引く必要があります。

以下の試算の前提をはっきり置きます。物件価格6,000万円・木造築15年・8室・月額賃料1室5万円・満室想定年間賃料480万円。表面利回りはちょうど8%です。あくまでモデルケースであり、実際の数字は物件・融資条件・立地によって大きく変わります。

コストを一つひとつ積み上げると、こうなる

まず空室損。木造築15年の場合、安定稼働でも年間稼働率90%前後を想定しておくのが現実的です。480万円×90%=432万円。次に管理費・PM報酬で賃料収入の5〜8%、ここでは6%として約26万円。固定資産税・都市計画税が年間約45万円(物件価格の0.75%を目安)。損害保険料が年間約8万円。この時点で約79万円が消えます。

さらに修繕積立。木造築15年なら、年間1室あたり5〜8万円を積んでおくのが安全圏です。8室で年間約48万円。経費合計は約127万円となり、NOI(純収益)は432万円-127万円=305万円。表面利回り8%に対して、NOI利回りは約5.1%まで下がります。約3ポイントの差です。

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融資を入れると、自己資金1,200万円に対して年間いくら残るか

自己資金1,200万円(20%)・借入4,800万円、金利2.0%・30年返済という前提でローン返済を試算すると、年間返済額は約213万円(元利均等・概算)。NOI305万円から返済213万円を引くと、税引き前キャッシュフローは約92万円。投下した自己資金1,200万円に対するCCR(自己資金回収率)は約7.7%になります。

表面8%から始まってCCR7.7%に着地する構造は、一見きれいに見えます。ただしこの数字には、大規模修繕リスクと出口時の売却損がまだ含まれていません。

築年数と出口シナリオが、利回り計算から抜け落ちていないか

木造アパートの法定耐用年数は22年です。築15年で購入した場合、残存耐用年数は7年。融資期間30年で組めたとしても、10年後に売却しようとすると、次の買い手が融資を引きにくくなります。売却価格の下落リスクが、運用期間中のキャッシュフローをどこかで飲み込む可能性があります。

私自身、アパート経営を始めた頃にこの「出口の細り」を甘く見ていました。入口の利回り計算だけを精緻にやって、売却時の価格下落シナリオを1本も作っていなかった。あるとき40代の相談者(モデルケース)から「10年後に売ろうとしたら買い手がつかない」という話を聞いて、自分の試算にも同じ穴があることに気づきました。利回りは入口と出口の両方で成立して初めて意味を持ちます。

アパートを積み増す前に「別アセット」が選択肢に入る理由

既にアパートを1棟持つ投資家が次の一手を考えるとき、同じアセットを積み増すことで融資余力や税務上の所得が圧迫される場合があります。そこで近年、検討されることが増えてきたのがトレーラーハウスのような構造物を使った宿泊型投資です。

PACO INVESTが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース)、仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。アパートとは減価償却の取り方やキャッシュフロー構造が異なるため、既存のアパート経営との組み合わせ方次第で、ポートフォリオ全体の税務・資金繰りに変化が生じるケースがあります。ただし想定通りに動かないリスクは当然あります。

数字を「積み上げた後」に見えてくる、次の判断軸

利回りの議論は、どこまで数字を積み上げるかで結論が変わります。表面利回りで止めるのか、NOIまで出すのか、CCRで見るのか、10年後の売却シナリオまで引いてIRRで評価するのか。アパート1棟・区分2戸を持っている段階で次の1棟を検討するなら、「入口8%」だけでなく「出口のシナリオを2〜3本」持って判断するのが現実的です。

まずは手元にある1棟のコスト構造を上記のフレームで分解してみてください。そこから見えてくる数字が、次の判断基準を自然と作ってくれます。

よくある質問

NOI利回りと表面利回りの差は、どのくらい開くのが一般的ですか?

物件の築年数・管理コスト・空室率によって異なりますが、木造中古アパートでは表面利回りからNOI利回りへの変換で1.5〜3ポイント程度下がるケースが多いです。上記のモデルケースでは8%→5.1%と約2.9ポイントの差になりました。あくまで一例であり、実際は物件条件によって大きく変わります。

築15年超の木造アパートは、融資が引きにくいと聞きますが本当ですか?

金融機関によって審査基準は異なりますが、木造の法定耐用年数(22年)を超えた物件、あるいは残存年数が短い物件は、融資期間の設定が厳しくなるケースがあります。融資期間が短くなると月次返済額が増え、キャッシュフローが圧迫される可能性があります。複数の金融機関に事前打診して比較することをお勧めします。

アパート経営とトレーラーハウス投資を組み合わせる際、税務上の注意点はありますか?

それぞれ資産区分・耐用年数・減価償却の取り扱いが異なります。組み合わせることで所得圧縮の効果が想定されるケースもありますが、個人の所得状況・保有構造によって効果は変わります。具体的な税務判断は必ず税理士にご相談ください。このブログの情報は投資勧誘や税務アドバイスを目的としたものではなく、情報提供を目的としています。