区分マンションとアパート1棟をすでに動かしている方が次の一手を考えるとき、中古アパートの表面利回りはすぐ目に入ります。ただ、「手元にいくら残るか」を内訳まで分解すると、広告数字とは別の変数がいくつか浮かび上がります。今回はその数字を順番に確認します。
「表面10%」から手残りまで、何を引けば現実の数字になるか
中古アパートの広告に「表面利回り10%」と書いてある場合、そこから実質的な手取りまでには複数のステップがあります。まず管理費・修繕費・火災保険・固定資産税といった経費が年間賃料収入の15〜25%程度かかるのが一般的です。次に空室損失。築20年超の地方物件であれば稼働率80〜85%を前提に置くほうが保守的な見方といえます。
さらに金利。変動型で1.5〜2%台の融資を受けられるケースもありますが、借入比率が高ければ返済額が大きく、キャッシュフローを圧迫します。これらをまとめると、表面10%でも手残りキャッシュフローは物件価格の3〜4%台になることが珍しくありません。よくある失敗として、表面利回りだけで物件を比較し、空室損失と修繕費の両方を同時に想定しないまま購入してしまうケースがあります。この2つが重なると、試算上は黒字でも実際のキャッシュフローが赤字に転じる局面が生じます。
モデルケースで内訳を全部開いてみる
以下はあくまで架空の設定によるモデルケースです。実際の物件・融資条件によって大きく異なります。
前提条件
物件価格:5,000万円 / 築22年・木造・地方都市・8室 / 表面利回り:10.0%(年間賃料500万円)/ 融資:4,500万円・金利2.0%・30年・元利均等 / 自己資金:500万円
年間収支の試算
年間賃料収入500万円から、まず空室損失を引きます。稼働率85%と仮定すると実収入は425万円。そこから経費(管理費・修繕費・保険・固定資産税の合計を賃料収入の20%と仮定)85万円を引くと実質収入は340万円です。ここから年間ローン返済額が約199万円(元利均等・試算)となり、税引き前のキャッシュフローは約141万円になる計算です。
物件価格5,000万円に対して税引き前キャッシュフロー141万円で、利回りに換算すると約2.8%(試算)。表面10%とは印象がかなり変わります。加えて、築22年超の木造であれば外壁・屋根の大規模修繕が保有期間中に重なる可能性があり、その費用を別枠で積み立てておく必要があります。
出口を折り込むと数字はどう動くか
5年後に売却する場合、残債は約4,000万円(概算)。売却価格が取得価格の80%・4,000万円であれば売却益はほぼゼロ、75%なら売却損が出る試算です。中古アパートは売却時の出口価格が読みにくく、保有期間のキャッシュフローの積み上げと合算して判断する必要があります。規模拡大か分散かを検討するときに、この出口シナリオを複数持っておくかどうかで判断の精度が変わります。
同じ自己資金を別アセットに向けると、数字はどう変わるか
分散の選択肢として、PACO STAYという仕組みを一例として挙げます。木造2×4工法のトレーラーハウス(車両運搬具)を客室1棟単位で購入し、運営はすべて当社グループに委託する形です。1棟1,453万円〜(プロジェクトにより異なる)。旅館業の許可取得から清掃・リネン・予約管理まで、購入後の手離れが特徴です。
想定利回りは7.7〜14.6%(前提:稼働率35%・1泊32,000円の試算/保証なし)。分割払い(最長10年120回・審査あり)を利用すると自己資金0円から始められるケースもありますが、月々の支払いが月額送金額を上回る局面があるため、差額の持ち出しと税効果を合わせて確認する必要があります。「アパートと比べてどちらがよいか」ではなく、キャッシュフローの発生源と出口の性質が異なるアセットとして、数字を並べて比較検討する素材として参照してください。
規模拡大と分散、どちらが自分の数字に合うか
複数物件をすでに持っている方が次の一手を考えるとき、融資余力と実効税率のポジションが判断軸になることが多いです。融資枠がまだ使えるか、総合課税の実効税率が高いフェーズにいるか。中古アパートを追加するならレバレッジ効率を取りに行く選択ですが、管理の複雑度も増します。別アセットを加えるなら、手離れの度合いとキャッシュフローの発生タイミングを先に数字で確認するのが現実的な出発点です。
次の確認として取り組みやすいこと
今回のモデルケースはあくまで架空の試算です。実際の物件では立地・築年数・融資条件・修繕履歴によって数字は大きく変わります。手元にある選択肢について、経費・空室損失・出口価格のシナリオを楽観・中立・保守的の3パターンで試算してみる、というのが次の一歩として取り組みやすい作業です。税理士や金融機関のデータと合わせて検討してください。
よくある質問
中古アパートの「実質利回り」と「表面利回り」の差は、一般的にどのくらいですか?
物件や立地によって異なりますが、表面利回りから管理費・修繕費・空室損失などを差し引くと、実質利回りは表面利回りより3〜5ポイント程度低くなるケースが見られます。さらに金融機関への返済額を引いたキャッシュフローベースでは、物件価格に対して2〜4%台になることも珍しくありません。いずれも物件個別の条件による試算が必要です。
中古アパートとPACO STAYを「分散」として組み合わせることは可能ですか?
法的に組み合わせを制限するものはありませんが、それぞれキャッシュフローの発生構造・出口の性質・融資の有無が異なります。中古アパートはレバレッジを活かした賃貸収入、PACO STAYは宿泊料金に基づく月額送金(稼働率35%・1泊32,000円前提の試算)という形です。どちらが合うかは個人の税率・融資余力・管理への関与度によって変わるため、数字を並べて比較検討したうえで判断してください。
PACO STAYの分割払いで「自己資金0円」とありますが、費用は本当にかからないのですか?
分割払い(提携の信販・最長10年120回・審査あり)を利用する場合、購入時に用意する自己資金は0円になるケースがあります。ただし月々の支払額は月額送金額を上回るため、その差額は手出しとなります。節税効果(車両運搬具として法定耐用年数4年・定率法で減価償却)による税の減少分が差額を上回る設計ですが、これは課税所得が一定水準以上の方を前提にした試算であり、個人の税務状況によって結果は異なります。税理士への確認を推奨します。